「テスラ復活」の米国報道は本当か? サイバートラック大貢献も株価下落、米EV市場は今後どうなる
専門家「テスラ復活」と指摘
『Forbes JAPAN』は2024年10月16日、「米国におけるEV販売の最新調査、2024年3Qは「テスラが復活」」という記事を配信した。この記事を書いたのは、自動車業界の専門家であり、北米最大のプロフェッショナル・メディア団体であるモーター・プレス・ギルドの会長も務めたマイケル・ハーレー氏だ。
記事は、自動車業界の分析会社『コックス・オートモーティブ』のリポートを基にしている。このリポートによると、2024年7月から9月の第3四半期において、テスラは1万6692台のサイバートラックを納車した。これに対し、米国の電気トラック市場で売り上げ第2位のフォード・ライトニングは同期間に7162台を販売した。また、米国で3番目に多く売れた電気自動車(EV)であるサイバートラックの貢献により、前年同期比で6.6%の増加が見られたことから、
「テスラの復活」
が強調された。
サイバートラックはSFの世界のような独創的なデザインのステンレススチール製の車で、2024年に納車が開始された。テスラは2024年上半期に前年比で売り上げが落ち込んでいたため、3Qで前年比がプラスに転じた点は、たしかに復活といえる。
同社は2024年3Q、46万9796台を生産し、46万2890台を納車した(うち、モデル3とモデルYの生産台数は44万3668台、納車台数は43万9975台)。
激化する販売競争
一方で、この納車台数の発表により株価が
「3.7%下落」
したと報じるニュース専門放送局『CNBC』の記事もある(2024年10月2日付)。
ファクトセット・ストリートアカウントのまとめによると、アナリストらは46万3310台とより多くの台数を予想していた。LSEG (ロンドン証券取引所グループ)では46万9828台、トロイ・テスライクという名の独立系研究者は、47万2000台の納車を予想していたからである。
もうひとつ気になるのが、マーケットシェアの大幅な低下である。『コックス・オートモーティブ』のリポートにもグラフがあるが、自動車メディア『CarEdge』は、
「テスラは依然として主導的な地位を維持している」
としながらも、
「2024年3Qでは、テスラの米国におけるマーケットシェアは、48.2%」
「2022年1Q初には、75%」
であったことに言及している(2024年10月15日付)。競争激化により仕方ない面はあるが、数字で見るとインパクトがある。
在庫過剰も影響? EV「買い時説」
テスラに限らず、EV全体はどうなっているのか。
『コックス・オートモーティブ』のリポートによれば、自動車調査会社『ケリー・ブルー・ブック』の調査で、米国においてEVは、2024年3Qに販売台数とマーケットシェアの両方で過去最高を記録したことが分かった。
推定34万6309台EVが販売された。これは2Qから5%増加したことになる。EV販売シェアは8.9%に達し、2023年3Qの7.8%から増加した。
コックス・オートモーティブのインダストリー・インサイト部門ディレクターであるステファニー・バルデス・ストリーティー氏は、
「成長を後押ししているのはインセンティブや割引です。より手頃なEVが市場に投入され、インフラが改善されれば、今後数年間でさらに普及が進むと予想されます」
と話している(2024年10月11日付)。
政府のサポートにより初期費用をおさえられるリース契約が42.7%に利用され、業界平均の22.2%を大きく上回る。EVのインセンティブは業界平均の7.3%をはるかに上回る12.0%である。リポートは、
「EVの10%のシェアは十分に手の届くところにある」
と締めくくられている。
一方で、『MARKETPLACE』は、この状況がいつまでも続かないとしている(2024年10月15日付)。
数年前に米国の自動車業界は、EV生産についてアグレッシブな生産目標を設定していたものの、消費者の需要はそこまで届かなかった。これは現在、ディーラーが過剰に在庫を抱えていることを意味する。
現在は値下げによってEVが売れているが、それは永遠に続くわけではない。自動車メーカーがEV生産を縮小しているため、1年か2年後は在庫状況の変化から取引状況が違うかもしれない。
ほかのメディアでも、EVは
「今が買い時」
だという声が散見される。それらの影響もあり、2024年4QはEVがよく売れることだろう。
米国通勤事情とハイブリッド車
米国でより売れているのが、ハイブリッド車(HV)である。
例えば、2024年1月には、ゼネラル・モーターズは、これまでほとんど製造していなかったプラグインハイブリッド車(PHV)に取り組んでいくことを発表しているが、自動車メーカーらはEVからHVに重点を移している。
米国では、通勤距離が長いため、ガソリンエンジンが重宝される。HVは、本体価格がEVより安く、どこで充電するかという問題を気にしなくて済む。
2024年2QのHVのシェアは21.9%だった。2024年3Qの数字は現時点(2024年10月18日)で発表されていないようだが、
「年末が近づくにつれ、EVとPHEVが急速に普及していることは明らか」
と『ELECTRIFY NEWS』は言及している(2024年10月2日付)。
10/22 14:11
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