ハイブリッド車って本当に経済的なのか? 高額なバッテリー交換もあるのに? 環境に良いのは十分理解していますが

販売台数「5割突破」

自動車(画像:写真AC)

自動車(画像:写真AC)

 自動車関連業者による業界団体、日本自動車会議所によると、2023年度(2023年4月~2024年3月)のハイブリッド車(HV)の販売台数は191万8382台となり、国内乗用車販売における比率が初めて5割を超えた。

 世界初の「量産ハイブリッド自動車」として初代トヨタ・プリウスが1997(平成9)年に発売されてから26年がたち、HVは軽四輪乗用車と並ぶ国民車となった。

 環境問題や経済性の観点から、今後もHVの普及が進むと考えられる。しかし、ハイブリッド車は本当に経済的なのだろうか、高額なバッテリー交換があるのに疑問を感じる人もいる。環境によいことは十分に理解しているが、コスト面が気になる読者もいるだろう。この記事では、改めてハイブリッド車について考えてみる。

今更聞けないハイブリッド車の仕組み

高騰するガソリン代のイメージ(画像:写真AC)

高騰するガソリン代のイメージ(画像:写真AC)

 英語の「Hybrid(ハイブリッド)」は

「雑種」

を意味し、異なる要素が混ざり合っていることを指す。HVは、ふたつ以上の動力源を持つ自動車で、内燃機関(エンジン)と電動機(モーター)を動力源にして、二次電池などのバッテリーを備えている。

 走行条件に応じて、

・エンジンだけ使用
・モーターだけ使用
・エンジンとモーターを同時使用

の三つの走行パターンがあり、これによってガソリン車よりも燃費がよく、電気自動車(EV)よりも充電の手間がかからないというメリットがある。特に長距離走行時には、エンジンが補助的に働くため、燃料切れの心配が少なくなるのが強みだ。

 HVは、発電と駆動の方法によって

・シリーズ(直列)方式
・パラレル(並行)方式
・スプリット方式

の三つに大別される。シリーズ方式は、日産のe-POWERが代表的で、エンジンを使って発電し、その電気でモーターを駆動して走行する。

 一方、パラレル方式は、エンジンとモーターの複数の動力源を同時に使用して走行する。この方式では、エンジンは低回転時には十分なパワーを得られず、停車時はアイドリングをするなどエネルギー効率が悪い。しかし、モーターは起動時に大きなトルクを発生するため、エンジンが苦手な発進や急加速の際にモーターを活用するのがマイルドハイブリッドと呼ばれる。

 また、HVの代表格であるトヨタ・プリウスはスプリット方式を採用している。これは、エンジンによる発電でモーターを駆動するシリーズ方式と、エンジンとモーターを同時に出力するパラレル方式を兼ね備えており、ストロングハイブリッドとも呼ばれている。

HVとガソリン車の比較

ガソリン車との比較(画像:トヨタのウェブサイトに掲載された情報に基づいて筆者作成)

ガソリン車との比較(画像:トヨタのウェブサイトに掲載された情報に基づいて筆者作成)

 ガソリン車とHVを比較して、経済的なメリットはどちらにあるかを「トヨタ・カローラ・Xグレード(2WD)」で見てみる。

 まず、車両価格について。HVの価格は241万8600円で、ガソリン車の202万8600円よりも39万円高い。これはバッテリーやハイブリッドシステムなどのコストが影響しており、一般的にはガソリン車と数十万円ほどの価格差がある。

 次に、HVにはエコカー減税が適用され、自動車重量税が免税または軽減される特例がある。これは現行制度で2025年4月末までの新規登録車に適用される。プラグインハイブリッド車やEVには自動車税の優遇措置があるが、HVは対象外だ。トヨタ・カローラの自動車重量税は全額免税となり、購入時には3年分で2万2500円が減税される。

 燃費効率についても見てみよう。トヨタ・カローラのカタログ燃費(WLTCモード)によると、

・ガソリン車:19.4km/L
・HV:30.2km/L

で、1L当たり約11kmの燃費差がある。全国平均のガソリン価格175円/Lで試算すると、年間で2万km走行した場合、HVは

「約6万4000円」

の燃料費を節約できる。仮に5年後にHVを手放した場合、エコカー減税と燃料費の合計で

「約34万円」

の節約となり、ガソリン車との差額である39万円に近くなる。

 ランニングコストについても考慮が必要だ。特に高額なメンテナンス費用がかかるのは

「バッテリー交換」

で、動力源となるモーターの駆動用バッテリーと、ハイブリッドシステムに電源を供給する補機バッテリーの2種類がある。これらの寿命は3年から5年、またはそれ以上で、交換費用は駆動用バッテリーが20万円~、補機バッテリーが3万円程度だ。

 標準的なガソリン車のバッテリー交換費用は1万円程度なので、メンテナンス費用の差は大きくなる。なお、バッテリーにはメーカー保証があり、3年から5年、または走行距離で最長10万kmの保証がある。通常のメンテナンスや一般的な故障頻度は、ガソリン車と大きな違いはない。

 最後に、リセールバリュー(再販価値)についても見ておきたい。HVは中古車市場でも高い評価を受けており、ガソリン車に比べてリセールバリューが高い傾向がある。HVの中古車価格は新車価格のガソリン車との差額以上のリセールバリューを持っているため、税制優遇や燃料費の節約を考慮すると、HVには経済的なメリットがあると考えられる。

長距離走行の燃料節約

ガソリン代と節約のイメージ(画像:写真AC)

ガソリン代と節約のイメージ(画像:写真AC)

 HVユーザーは、長距離を走行するほど燃料費の節約効果を実感しているようだ。また、短距離の市街地走行が多い場合にも、燃費性能のよさが明確なメリットとして現れている。特に都市部の短距離走行では、走行時にモーターが主体となり、エンジンをほとんど使用しないため、CO2排出量を抑えることができる。

 一般的に、HVのCO2排出量はガソリン車よりも

「約30%」

少ないとされている。エコ意識の高まりとともに、経済性だけでなく環境への影響を考慮する層も増えており、そのバランスが重要視されている。

 一方で、HVに搭載されているバッテリーの生産や廃棄がもたらす環境負荷も無視できない。リサイクル技術の向上や適切な処理方法の確立が求められている。

 トヨタ・プリウスの累計販売台数は、2022年11月時点で505万台に達している。一方、トヨタが販売したHVの累計販売台数は、2022年3月時点で2000万台を超えている。

 約四半世紀の間に急速に普及したHVは、経済的・環境的な観点から多くのメリットを提供している。初期費用はガソリン車よりも高くなるが、燃料費の節約やリセールバリューを考慮すれば、長期的には経済的な選択肢となる可能性がある。

 また、CO2排出量の削減に寄与する点でも環境への貢献度が高く、これが購入動機の一因になっている。個々のニーズやライフスタイルに応じて、HVは今後も欠かせない選択肢となるだろう。

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