EVは本当に経済的? 車体価格がとても高額ですが、補助金だけで大丈夫なのでしょうか?

経済性を比較

EV(画像:Pexels)

EV(画像:Pexels)

 ホンダは2024年10月10日に、初めての軽四輪電気自動車(EV)「N-VAN e:」を発売した。この車は、「N-VAN」のガソリン車を基にしており、商用需要を狙っている。特に、宅配会社が進める脱炭素に向けたEVの需要が期待されている。

 ホンダの電動化戦略では、EVと燃料電池車(FCV)の販売比率を2030年までに40%、2040年までに100%にすることを目指している。N-VAN e:はこの戦略のなかで非常に重要な位置を占めるが、EVが本当に

「最適な解決策」

なのか疑問に思う人も多いだろう。

 そこで、本稿ではホンダのN-VANをEVとガソリン車で比較し、どちらに経済的なメリットがあるのかを検証し、改めてEVの選択肢について考えてみたい。

車体価格差は「119万円」

ホンダ「N-VAN e:」(画像:ホンダ)

ホンダ「N-VAN e:」(画像:ホンダ)

 今回のコスト検証では、ホンダのウェブサイトに記載されたN-VANの

・車体価格
・補助金
・初期費用
・燃費

をLグレード(FF)で比較した。

 まず、車体価格については、EV(L4)が269万9400円で、ガソリン車(FF/CVT)は151万300円となっており、価格差は約119万円に達する。

 次に、N-VAN e:に支給される補助金は、自家用(CEV補助金)で55万円、事業用(LEVO補助金)で100万円である。さらに、東京都などの地方自治体から独自の補助金が上乗せされるが、将来的にこれらの補助金が減額されたり廃止されたりするリスクがあるため注意が必要だ。

 ガソリン車には補助金は支給されないが、N-VANガソリン車はエコカー減税の環境基準を満たしており、重量税(5000円)が75%軽減される(自家用の場合は環境性能割が1%上乗せされる)。一方で、N-VAN e:の重量税は免税で、登録翌年度の自動車税も75%軽減され、合計で8700円の優遇が受けられる(環境性能割は非課税)。

 N-VAN e:を購入する際に気になるのはEV充電設備の初期費用だ。自宅や企業などの敷地内に充電設備を設置する場合、ホンダはコンセント型やケーブル充電付き、V2H機器などのさまざまな充電設備を提供している。満充電までの時間が約4.5時間となるケーブル充電(出力6kW)の設置費用は、工事費込みで33万円からとなっている。

5年の節約額「35万円」

EVとガソリン車の比較(画像:ホンダのウェブサイトに掲載された情報に基づいて筆者作成)

EVとガソリン車の比較(画像:ホンダのウェブサイトに掲載された情報に基づいて筆者作成)

 燃料費についても考える。N-VAN e:は1回の充電で走行できる距離(WLTCモード)が245Kmで、ガソリン車のカタログ燃費(WLTCモード)は19.2Km/Lである。245Kmを走行するために必要なガソリンは12.76リッターで、全国平均のガソリン価格175円/Lで計算すると、ガソリン代は2233円になる。

 一方、N-VAN e:のケーブル充電による満充電時間は4.5時間(出力6kW)で、電力量に換算すると27kWになる。ホンダのウェブサイトによると、ENEOSでんきプランの電気料金は、ベーシックタイムで約956円、深夜料金では約752円となっている(基本料金は10A/1kVAあたり約312円)。

 外出先で充電が必要な場合、ホンダカーズが全国で提供している充電サービス「e-Mobility Power」を利用できる。普通充電(出力6kW)の場合、満充電までの時間は約4.5時間、急速充電(出力50kW)では約30分だ。利用料金は、普通充電で約1040円、急速充電では約825円となるが、月会費は普通充電で1540円、急速・普通併用の場合は4180円が必要となる。

 仮に1か月の走行距離を980Kmとすると、ガソリン代は8932円に対し、敷地内での充電では3008円(深夜料金)となり、かなりのコスト削減が見込まれる。1年で約7万円、5年で約35万円の節約になる。特に、宅配業などのビジネスユースでEVを長期間使用すれば、総費用を抑えられ、経済的なメリットが大きくなる。また、ガソリンスタンドが近くにない場所では、利便性も向上する。

 メンテナンス費用について一般的にEVはガソリン車よりも車重が重いため、タイヤの摩耗が早いといわれている。しかし、EVはオイル交換が不要で、車検費用を抑えられる可能性がある。EVの自動車保険は、車体価格が高いために車両保険料が高くなることがあるが、EV割引などによって保険料を低く抑えられる可能性もある。

 また、バッテリー交換が高額になる懸念もあるが、ホンダは8年間または走行距離16万kmまで、バッテリーの電池容量(蓄電能力)の70%を保証しているので、あまり心配しなくてもよさそうだ。

技術革新で変わるEVの未来

2024年9月26日発表。主要11か国と北欧3か国の合計販売台数と電気自動車(BEV/PHV/FCV)およびHVシェアの推移(画像:マークラインズ)

2024年9月26日発表。主要11か国と北欧3か国の合計販売台数と電気自動車(BEV/PHV/FCV)およびHVシェアの推移(画像:マークラインズ)

 試算の結果、EVを5年間使用した場合、ガソリン車との価格差は約16万円(事業用)に縮小した。ただし、この経済的なメリットはEV補助金によって成立している。EVの車体価格がガソリン車と同じ水準になり、補助金に頼らずとも経済的なメリットが得られる状況を早急に整える必要がある。

 次に、EVのメリットとデメリットについて触れておきたい。メリットには、環境への配慮、低いランニングコスト、静粛性などがある。一方、デメリットとしては、航続距離や充電インフラの制約、高額な初期費用、バッテリーの寿命や劣化が挙げられる。

 特に環境への配慮においては、EVが今後エネルギー効率を高め、カーボンニュートラル社会の実現に寄与するという環境ビジョンに共感することで、EVを選択することによる経済的なメリット以上の価値を見いだすことができるだろう。

 今後の技術革新や充電インフラの整備によって、EVの利便性や経済性がさらに向上することを期待したい。

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