運転中の“ながらスマホ”は「サイコパス」だった? ドイツの大学研究で判明、しかも英国2000人調査では「EV利用者」にも似た指摘が!

運転中スマホ使用者のリスク

運転中のスマートフォン使用イメージ(画像:写真AC)

運転中のスマートフォン使用イメージ(画像:写真AC)

 他人のクルマに乗ることは、極端にいえば、自分の命をそのドライバーに預けることである。だから、危険なドライバーである兆候があれば、できるだけ早く気づきたい。

 最近の研究では、

「運転中にスマートフォンを頻繁に気にするドライバー」

は、大きな問題を抱えている可能性が高いと報告されている。必ずしも交通事故につながるわけではないが、交通違反はさまざまなトラブルの原因になる。

 たとえ自分が運転していなくても、交通違反を起こしたクルマに同乗していれば、トラブルに巻き込まれるリスクが高まる。

 家族や親しい友人が運転するクルマであれば、安心して乗れるだろうが、そうでない場合、問題を起こしそうなドライバーを見分ける指標はあるのだろうか。

サイコパスと運転行動の相関性

サイコパスのイメージ(画像:写真AC)

サイコパスのイメージ(画像:写真AC)

 ドイツのレーゲンスブルク大学の研究チームが2023年4月に学術誌「PLOS ONE」で発表した研究によると、

・サイコパスの特徴
・運転中のスマートフォン使用

には、有意な相関関係があることがわかった。サイコパスとは

「反社会的な行動や共感の欠如、自己中心的な性格が特徴の人」

を指す。つまり、運転中にスマートフォンを頻繁に気にするドライバーは、サイコパスの傾向があり、交通違反を犯しやすい可能性があるという。

 この調査には、989人のドイツ人ドライバーが参加した。彼らは、

・交通違反で罰金を受けた回数
・運転中のスマートフォン使用の頻度
・1回のスマートフォン利用時間(スクリーンタイム)

など、自動車の使用と運転行動に関する質問について答えた。また、マキャベリズム、ナルシシズム、サイコパシーの三つの性格特性(ダークトライアド)を測定するテストも実施された。

 マキャベリズムとは、過度に操作的で抜け目なく打算的に行動したり思考したりし、ずる賢く“腹黒い”傾向がある。

 ナルシシズムとは、自己誇大性、権利意識、優位性の認識、他者への優越感、独自性の感覚などを特徴としており、自己の利益を重視する傾向がある。

 サイコパシーとは、衝動的でスリルを求める行動に出る傾向が高く、他者に対する共感性のレベルが低い。

 調査の結果、参加者の

「61%」

が運転中に時折スマートフォンを使用していることが明らかになった。そして、ダークトライアドのスコアが高いほど、運転中にスマートフォンを使う頻度が増えることがわかった。

スマホ依存が示す5.7倍のリスク

論文『Surfing in the streets: How problematic smartphone use, fear of missing out, and antisocial personality traits are linked to driving behavior(路上でのサーフィン:問題あるスマートフォンの使用、見逃すことへの恐れ、反社会的な性格特性が、運転行動とどのように関連しているか)』(画像:PLOS ONE)

論文『Surfing in the streets: How problematic smartphone use, fear of missing out, and antisocial personality traits are linked to driving behavior(路上でのサーフィン:問題あるスマートフォンの使用、見逃すことへの恐れ、反社会的な性格特性が、運転行動とどのように関連しているか)』(画像:PLOS ONE)

 特にサイコパシーのスコアが交通違反を予測するよい指標であることがわかった。サイコパシーのスコアが最低の人は、過去12か月間に運転違反を犯した確率が9.89%だったが、スコアが平均的な人では24%、さらにスコアが高い人(4.33)では

「56%」

にまで跳ね上がり、他のグループを大きく上回る結果となった。スコアが最低の人に比べて、実に5.7倍だ。これにより、サイコパシーが交通違反の優れた予測因子であることが確認された。

 前述のとおり、サイコパシーのスコアが高いほど、運転中にスマートフォンを使用する頻度も増えることがわかっている。もし、運転中のドライバーが頻繁にスマートフォンを気にしているなら、そのときは仕方なくとも、次回からはそのドライバーのクルマに同乗するのは避けたほうがいいかもしれない。

 さらに、運転中でなくても、普段からスマートフォンを気にする人のクルマに乗ることにも慎重になったほうがよいだろう。

 警視庁のデータによると、2023年には携帯電話使用による死亡・重傷事故が122件発生しており、2021年以降増加傾向にある。携帯電話使用時の事故は、他の事故と比べて死亡事故率が約4倍も高い。ドライバーは、運転中のスマートフォン使用を厳に慎むべきである。

サイコパス度の高い車種はBMW

サイコパスのイメージ(画像:写真AC)

サイコパスのイメージ(画像:写真AC)

 その人物にサイコパス的な特徴があるかどうかは、スマートフォンへの執着を観察することである程度わかるかもしれない。また、乗っているクルマの種類からサイコパス度を推測できる可能性もある。特に、サイコパスに好まれる車種が存在するのだろうか。

 英国の中古車関連サービス会社「Scrap Car Comparison」の調査チームは、2021年に2000人の英国人ドライバーに対し、運転しているクルマの

・ブランド
・色
・カスタマイズの度合い、
・ナンバーが希望したものあるかどうか

を報告させ、その後サイコパス度を測定するテストを実施した。

 このサイコパス度テストは36点満点で、18点以上でサイコパスの可能性があり、27点以上でサイコパス的性格特性とされる。しかし、調査を受けた2000人のドライバーの平均スコアは「6.6点」と低かった。

 調査の結果、サイコパス度が最も高い車種はBMWで、スコアは12.1点だった。以下は、サイコパス度の高い車種のトップ10だ。

・1位:BMW 12.1点
・2位:アウディ 11.7点
・3位:フィアット 7.0点
・4位:マツダ 6.4点
・5位:ホンダ 6.3点
・6位:フォード 6.1点
・7位:メルセデス・ベンツ 5.9点
・8位:シトロエン 5.8点
・9位:フォルクスワーゲン 5.4点
・10位:ヒュンダイ 5.3点

また、サイコパス度が高い車体の色のトップ5は次のとおりだ。

・1位:ゴールド 12.7点
・2位:ブラウン 12.2点
・3位:グリーン 8.5点
・4位:ブラック 7.6点
・5位:ブルー 7.0点

「希望ナンバー」を付けているドライバーの平均サイコパス度は13.8点で、希望していないドライバーは5.3点であった。

EVドライバーのサイコパス度

Scrap Car Comparisonのブログ記事『Which Drivers Are Most Likely To Be Psychopaths?(サイコパスになりやすいドライバーは?)』の表(画像:Scrap Car Comparison)

Scrap Car Comparisonのブログ記事『Which Drivers Are Most Likely To Be Psychopaths?(サイコパスになりやすいドライバーは?)』の表(画像:Scrap Car Comparison)

 また、興味深いことに、電気自動車(EV)のドライバーの平均サイコパス度は

「16.0点」

と非常に高い結果が出た。対照的に、

・ハイブリッド車:9.8点
・ディーゼル車:7.0点
・ガソリン車:5.2点

だった。このことから、

「希望ナンバーを付けたゴールドカラーのBMWのEV」

に乗っている人は、サイコパスである可能性がかなり高いかもしれない……。

 ただし、参加者全体の平均サイコパス度は低く、18点以下はサイコパスではないとされているため、これはあくまで

「わずかな傾向」

にすぎない。もちろん、18点以下であればサイコパスとは見なされないが(18点以上でサイコパスの可能性があり、27点以上でサイコパス的性格特性)、EVオーナーの16.0点はつい気になってしまう。

 このように、ドライバーのサイコパス度が懸念されているが、どのような性格特性を持っていても、安全運転を心がけることは絶対に必要である。そして、サイコパス的な傾向を持つドライバーが運転する車両からはできるだけ離れたほうがよいだろう。

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