女性ドライバーは「自己本位」「甘えが強い」 40年前の公的調査が偏見まみれでアウト過ぎる件

女性の運転は危険なのか

現代の女性ドライバー(画像:写真AC)

現代の女性ドライバー(画像:写真AC)

「一姫・二トラ・三ダンプ」

という言葉を聞いたことがあるだろうか。

 昭和の時代、最も危険な運転をするのは「女性」であり、「酔っ払い」、「ダンプ運転者」以上だと考えられていた。

 一般的な傾向として、運転に必要な空間認知能力が男性に比べて女性は低いとされるが、その差は「ジェンダー・ギャップが大きい国ほど顕著」という研究結果がある(リポート『Global Determinants of Navigation Ability(ナビゲーション能力の世界的な決定要因)』、2018年9月10日付)。

 車の運転は男性がするものといった固定観念が今より強かった時代、女性ドライバーは無意識に自身の能力を制限していた可能性がある。

 自動安全運転センターが『平成女性運転者の運転の実態と意識に関する調査研究』を出しているので、1982(昭和57)年と1989(平成元)年の調査結果から女性ドライバー観を見ていこう。

 日本の2024年のジェンダー・ギャップ指数は118位と低水準であり、最新の運転免許保有者数の女性構成比がようやく46.0%(2023年)になったところだが、

・1989年:37.0%
・1982年:31.8%

だった。

 当時の女性ドライバーの評価には真実もあると思うが、ステレオタイプでもあり、平成の令和の男女平等という観点からは十分NG、むしろ興味深いので紹介したい。

昭和の女性ドライバー観

女性ドライバー観の昭和57年調査結果との比較(男性・肯定者比率)。『平成女性運転者の運転の実態と意識に関する調査研究』より(画像:自動車安全運転センター)

女性ドライバー観の昭和57年調査結果との比較(男性・肯定者比率)。『平成女性運転者の運転の実態と意識に関する調査研究』より(画像:自動車安全運転センター)

 調査では、女性ドライバー観を男性、女性の両方に聞いている。まず1982年の調査報告にあった総論的な文言だ。

「男性ドライバーから見た女性ドライバー観というものは、女性ドライバーの持つ自己本位、甘え、対応のまずさといった特性で代表され、程度の差こそあれ、女性の女性ドライバー観もほぼ似た様な傾向を示している。すなわち、女性ドライバーも自分たちのもつ弱点を自認しているという点は注目してよい」

 具体的な点についても辛辣(しんらつ)な言葉が並ぶ。

「女性が普通乗用車にくらべて軽乗用車を安易に考え、気らくな気持ちでハンドルを握っている」
「一般に女性ドライバーは男性ドライバーほど脇見による事故が少ないのは、脇見をする様な余裕がないから」
「橋とか駐車中の車といった様な動かない対象を、より危険であると判断し、反対に動いているものにそうした配慮がない」

という外部の調査結果から、

「情報の選択、判別にたけていない」
「潜在的危険を読みとる能力に欠けている」

と、バカとでもいいたげな表現が並んでいる。態度としては、女性自身のアンケートでの回答から、

「相手がゆずってくれる、とまってくれる」
「前の車についていけば安心して右左折できる」
「男性は女性ドライバーに親切にすべきだ」

と考えているとし、依存傾向が強いとされた。

「女性ドライバーには、他の車への依存的な傾向が強いが、運転場面では男女同じように運転に責任を持たなければならないことから、運転場面ではまったく対等な立場であるとの認識が、早い時期に女性にも男性にも確立されていくことを期待するものである」

という記述が、なんともいえない気持ちにさせる。

昭和から平成へ

女性ドライバー観の昭和57年調査結果との比較(女性・肯定者比率) 。『平成女性運転者の運転の実態と意識に関する調査研究』より(画像:自動車安全運転センター)

女性ドライバー観の昭和57年調査結果との比較(女性・肯定者比率) 。『平成女性運転者の運転の実態と意識に関する調査研究』より(画像:自動車安全運転センター)

 1982年から1989年までの7年の間に、女性のドライバー人口が増えるとともに、女性ドライバー観にもやや変化が表れている。以下に記載の賛成者比率は、「賛成」と「やや賛成」を合わせたものとなっている。

●一般に女性ドライバーは、車の構造をよく知らない
・昭和(男性92%、女性92%)
・平成(男性89%、女性88%)

●一般に女性ドライバーは、とっさの場合の対応が不得手である
・昭和(男性90%、女性84%)
・平成(男性84%、女性76%)

●一般に女性ドライバーは、他人に甘えた運転をしがちである
・昭和(男性72%、女性66%)
・平成(男性69%、女性60%)

いずれもネガティブな意見だが、平成には数値が下がり、女性ドライバー観が少々マシになっていることがわかる。一方、平成になって数値が上がりネガティブになったものもある。

●一般に女性ドライバーは、自己本位の運転をしがちである
・昭和(男性76%、女性59%)
・平成(男性77%、女性63%)

「『他の車が割り込もうとしたら、入れないようにする』『前の車がのろのろしていると、つい追い越したくなる』など女性の攻撃性が増しているとみられる」

という記述もあり、ある意味、女性の気が強くなっている様子が見られる。

 良かった変化もある。平成は、「前方のことが気になってバックミラーで後ろを見たりする余裕がない」が減って、「目的がなくとも、運転することじたいが楽しい」女性ドライバーが増えているのだ。

 また、「一般に女性ドライバーの後ろにつくのは恐いものだ」に対して、男性の賛成者比率は昭和の80%から、平成の24%へと激減しているのも大きな変化である。それについては、

「このような傾向となっているのは、この7年間に女性ドライバーの運転技術が向上してきたこともあろうが、女性ドライバーの増加が著しく、女性ドライバー不信では運転そのものができないといった背景もあるのではなかろうか」

という辛口なコメントがついているのも印象的である。

北海道の調査

異性の運転者の運転マナー観。「女性運転者の運転意識に関する調査研究」より(画像:土木学会)

異性の運転者の運転マナー観。「女性運転者の運転意識に関する調査研究」より(画像:土木学会)

 もうひとつ、1995(平成7)年9月に土木学会第50回年次学術講演会で発表された北海道の「女性運転者の運転意識に関する調査研究」も紹介したい。

 この北海道という土地は、「地域からジェンダー平等研究会」が地域ごとの男女格差を示した「都道府県版ジェンダー・ギャップ指数」によれば、2024年は4項目中3項目(「行政」「教育」「経済」)の分野で47都道府県中47位になっている。

 現代と1995年とは状況が違うかもしれないが、どうだろうか。

 資料は、「『周りにこられて嫌な運転者は?』の問いに対して、最も嫌われているのは『中年女性』であった」ではじまる。

ここでも、異性の運転者の運転技能観についてアンケートを採っている。

 50%の男性が、女性は「反応が遅い」と回答。

「自分勝手」
「余裕がない」
「安全確認が不十分」

の評価が続いた。

 これに対し、40%の女性が、男性は「自分勝手」としている。

「スピードオーバー気味」
「運転が荒い」
「ウインカーが遅い、出ない」
「車線変更が多い」

が続く。

 また、異性の運転者の運転マナー観として、男性から女性に対しては、「自分勝手である」が60%程度で、「譲られてもお礼がない」も多い。女性から男性に対しては「せっかち」が40%弱、これに「自分勝手」「意地悪」が続いた。

「男性ドライバーがまだまだ数的に多い中、男性の運転の流れに女性が合わない(遅い)から嫌われると言えよう」

まとめにも、なかなか刺激的な表現が見えた。

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