海自ついに導入「シーガーディアン」一体どう使うの? 新たな“空の眼”となる無人機 減っていくかもしれない有人機とは?

海上保安庁に続き、海上自衛隊も無人機「シーガーディアン」の導入を決定しました。海保では洋上監視に使われていますが、海上保安庁はどう使うのでしょうか。米海軍や豪空軍と異なる機種を選定した理由から、今後が見えてきます。

海保とは使いかたが違う? 海自「シーガーディアン」導入

 防衛省は2024年11月15日、選定作業を進めていた海上自衛隊の滞空型無人機(UAV)の機種を、商社の双日が提案したジェネラル・アトミクス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)の「MQ-9B シーガーディアン」に決定したと発表しました。

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海上保安庁の「シーガーディアン」。海自への導入も決まった(画像:海上保安庁)。

 シーガーディアンは海上保安庁も洋上監視用無人航空機として導入し、すでに実績があります。同庁がシーガーディアンの導入に先立って実証試験を行った際、海上自衛隊もまた、この試験の本拠地として青森県の八戸航空基地を提供する関係でした。

 海上保安庁は2024年11月現在、運航を担うGA-ASIが収集した情報を購入するという形で、3機のシーガーディアンを運用しています。これらのシーガーディアンは海上保安庁との契約時間外は「フリー」ということになりますが、海上自衛隊は2023年5月から、海上保安庁のシーガーディアンを借用する形で試験を行っており、それを踏まえての導入となります。

 海上自衛隊のUAVには、イスラエルのエルビット・システムズが開発した「ヘルメス900マリタイム」なども候補として名前が上がっていましたが、海上保安庁との相互運用性などの観点から、シーガーディアンの導入が最も現実的だったでしょう。実際に防衛省への提案を行ったのも双日1社で、それゆえにすんなりと決まったのではないかと思われます。

 海上自衛隊のシーガーディアンは、防衛省が海上自衛隊に滞空型無人機の導入を検討する際に掲げた広域洋上監視に使われるにはもちろんですが、将来的には海上自衛隊航空機の最大の使命である「対潜水艦戦」にも使用されると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

「哨戒機大国」の日本に異変?

 日本は太平洋戦争中、連合国の潜水艦に多数の商船を撃沈され、資源が枯渇したことが敗戦の一因となったことから、海上自衛隊は創設以来、対潜水艦戦能力を重視しています。その一環として、空から潜水艦を捜索して対処する「哨戒機」戦力の整備に力を注いできました。

 海上自衛隊は2024(令和6)年3月末の時点で、P-3C哨戒機32機、P-1哨戒機34機、合計66機の哨戒機を保有しています。

 66機という哨戒機の保有数は世界的に見ても多く、一見する限りにおいては盤石にも見えます。しかし、なかでも1981(昭和56)年から1997(平成9)年にかけて導入されたP-3Cは老朽化により急速に退役が進んでおり、2020(令和2)年には50機を保有していた機数は32機に減少しています。

 防衛省はP-3Cの退役を見越してP-1の整備を進めてきましたが、P-1は1機あたりの調達費が200億円以上と高額です。このため調達予定数はP-3C(101機)よりも少ない、70機程度になると見込まれていました。

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海上自衛隊のP-3C哨戒機(画像:海上自衛隊)。

 P-3CとP-1はパイロットに加えて、哨戒飛行パターンの作成や潜水艦を捜索する「ソノブイ」をどこに敷設するかといった戦術的な判断を下す戦術航空士、潜水艦を捜索するソナーの操作や、目視による洋上監視を行うソナー員など、10名から11名の搭乗員を必要とします。

 日本は少子化が進んでおり、仮にP-1をP-3Cと同程度調達する予算が確保できたとしても、搭乗員の確保が困難になったことは間違いないでしょう。

「潜水艦vs無人航空機」の時代に?

 有人哨戒機と連携する無人航空機としては、アメリカ海軍のP-8A「ポセイドン」哨戒機と連携するMQ-4C「トライトン」が実用化されています。しかしMQ-4Cは対潜作戦での使用を想定していません。

 海上自衛隊と密接な関係にあるアメリカ海軍が運用し、同志国であるオーストラリア空軍も採用を決めているMQ-4Cではなく、シーガーディアンの採用を海上自衛隊が決めた理由の一つが、対潜水艦戦への適応能力がより高いと考えられていることではないかと思います。

 開発元のGA-ASIもまた、MQ-9Bを対潜水艦戦などに投入する構想を持ち、そのための研究開発も進めています。

 またアメリカの防衛企業L3ハリスなども、有人航空機と無人航空機に搭載可能なソノブイポッドなどを開発しています。P-3CやP-1のように1機で潜水艦の捜索と攻撃を行えるのは、だいぶ先になるかもしれませんが、ソノブイを広域に投下して潜水艦を捜索するという役割を継承する日は、そう遠くないものと思われます。

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地上にあるシーガーディアンの操縦コンソール。遠隔で操作されるので機体が破壊されても人的損傷はない(画像:GA-ASI)。

 GA-ASIは海上保安庁のMQ-9Bを運用するにあたって、元海上自衛隊の航空機搭乗員を雇用しており、その中にはP-3Cで対潜水艦作戦を指揮するTACO(戦術航空士)を務めていた人物も含まれています。おそらくGA-ASIと双日は、海上自衛隊にシーガーディアンを提案するにあたり、その人物らと同機を対潜水艦戦に投入するために何が必要かを研究し、結果を提案に反映したものと見て間違いないでしょう。

 11月15日付の時事通信など複数のメディアは、MQ-9Bの調達計画機数を23機と報じています。それだけの機数を導入し、かつ無人航空機を対潜水艦戦に使用できる可能性が高まっている現実を鑑みれば、シーガーディアンが将来的に対潜水艦戦に投入される代わりに、現在その役割を担っているP-1の調達数が減らされることになると筆者は思います。

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