ぜんぶ現役バリバリ! JRの「レア特急車両」たち 高性能でも“製造やめた”宝の持ち腐れも!?

鉄道車両には、わずかしか製造されなかった「レア車両」が存在します。今回はJRグループの特急形車両の中から、JR発足後に製造された系列を取り上げます。

なぜE751系が登場した?

 JRグループの特急形車両には、249両も製造されたJR東日本E257系電車のような系列もあれば、数両しか製造されなかった系列も存在します。そうしたJR化後に製造された、数の少ないレア系列の車両を5つ紹介します。

 なお、明らかにデザインや設備が異なっても、同じ系列なら含めます。ただし、リゾートに特化した特急車両は除外します。

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JR東日本のE751系電車(安藤昌季撮影)。

●E751系電車:3編成18両
 2000(平成12)年に製造された系列です。当初は盛岡~青森間の特急「スーパーはつかり」に投入され、最高速度130km/hの高速運転で同区間を最速1時間58分で結びました。

 もともと国鉄特急形485系電車を置き換えるうえで、E653系電車の投入が検討されましたが、交直流両用電車は高コストとのことで、交流専用のE751系が新規開発されました。

「みちのくの四季の彩り」をコンセプトとし、雪や白鳥をイメージした「白」、稲穂や湖をイメージした「黄」、澄んだ渓流や海の「青」、祭りと紅葉をイメージした「朱」の配色となっています。インテリアは「華やぎと大自然の風光」というコンセプトで、E653系には当時存在しなかった半室グリーン室も設定。E3系新幹線と同じグリーン座席が設置されていますが、モケットに違いもあります。

 普通車はE653系と同じ、座面スライド付きリクライニングシートで、湖面の輝きをイメージしています。デッキ扉はE653系と異なり片開きで、手をかざした時だけ開閉する機構を採用して寒さ対策としました。

 2024年現在は、秋田~青森間の特急「つがる」「スーパーつがる」で使われています。

「くろしお」でお馴染み振り子電車

●JR西日本283系電車:3編成18両
 1996(平成8)年に運行開始した直流特急形電車です。列車名は当初「スーパーくろしお(オーシャンアロー)」でしたが、後に「オーシャンアロー」だけとなり、2012(平成24)年からは「くろしお」で統一されています。

 紀勢本線の特急「くろしお」には国鉄型381系電車が走っていましたが、高速道路の延伸を受け、競争力を高めるために開発されました。

 デザインコンセプトは「ワクワクする」「洗練されたオシャレで、品のあるリゾート」「スビード感」。振り子式で最高速度は130km/h、カーブでも高速で通過できます。伯備線への投入も考慮されて、耐寒耐雪構造になっていますが、現在まで「くろしお」系統のみで使われています。

 グリーン車は2+1列配置で、最前列から運転席越しの展望が可能です。振り子の重量バランスの関係で、2+1列→1+2列と中間で座席配列が変わります。また3号車に窓向き座席を備えた展望ラウンジを備えています。

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JR西日本の283系電車(安藤昌季撮影)。

●JR四国8600系電車:3両編成3本、2両編成4本、計17両
 予讃線の特急形2000系気動車を電車化するために製造され、2014(平成26)年から特急「いしづち」として運行、のちに「しおかぜ」にも投入されました。

 デザインコンセプトは「レトロフューチャー」で、前頭部デザインはSLをイメージするなど、ノスタルジックな鉄道車両のイメージを、未来特急としてデザインしたものです。

 それまでの2000形では、振り子式での曲線通過速度向上が図られていましたが、8600系では空気ばねによる車体傾斜を採用し、メンテナンスの軽減が図られています。座席には可動式枕のほか、普通車にも全席へのコンセントやフットレストが設置され、グレードの高い車両です。

 なお、グリーン車の座席が4列であることが、6列の8000系電車との相違点で、インターネット予約サービス「e5489」の予約画面で容易に判別可能です。

宝の持ち腐れ? JR北海道の車体傾斜機能

●JR北海道キハ261系気動車0番台:7編成14両
 JR北海道では、高コストな振り子式気動車を止め、1997(平成9)年に通勤形気動車キハ201系で、空気ばね車体傾斜を実用化しました。これを搭載した特急形気動車がキハ261系で、宗谷本線の「スーパー宗谷」としてデビュー。カーブでも、従来のキハ183系気動車より15km/h速く走行できます。

 札幌~稚内間の一部で最高速度130km/h運転をし、また曲線区間でも高速を維持したことで、所要時間は従来より1時間以上短い最速4時間58分となりました。当初は2両編成6本の12両(うち3本に半室グリーン室のあるキロハ261形を組み込み)でしたが、2両を増備したので、現在は14両となっています。

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JR北海道のキハ261系気動車0番台(安藤昌季撮影)。

 グリーン車は1+2列の豪華仕様。座席は青い牛革に、木製ひじ掛けを備えます。普通車は2+2列で回転式リクライニングシートが並びます。どちらもデンマーク国鉄の協力を得たデザインです。

 なお、2014年より安全性確保とコスト低減のために、車体傾斜機能の使用を取りやめており、所要時間は7~9分程度遅くなりました。

 キハ261系自体は2006(平成18)年から2022年に増備されていますが、1000番台以降は0番台との併結を考慮しておらず、実質的には別形式です。

もうひとつ四国から 量産先行車

●JR四国2600系気動車:2編成4両
 2017(平成29)年に登場した系列です。2編成4両は今回除外したリゾート用特急を含めても最も少ない製造数といえます。

 超レア形式となったのは、土讃線で使われていた特急気動車の振り子式を、空気ばね車体傾斜に置き換えられるか検討する先行車として製造されたからです。スペック上は振り子式に近い性能を持ちます。

 しかしカーブが連続する土讃線では、空気ばね傾斜に用いる空気容量が確保できず、性能上問題があることが判明。このため、走行装置を振り子式とした2700系気動車が製造されたために少数となったわけです。

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JR四国の超レア車両2600系気動車(安藤昌季撮影)。

 デザインコンセプトは「Neo japonism」。塗装は四国の自然に映えるディープレッドを基調として、吉兆の伝統配色である金色の縁取りを配しています。グリーン車はなく普通車のみです。

 内装は和柄をモチーフとし、伝統と先進性を対比・強調させたデザイン。座席は可動枕付きの回転式リクライニングシートです。なお振り子式の2700系は軽量化のため、可動枕は設置されていません。

 2600系はカーブの少ない高徳線で、特急「うずしお」でとして運行されています。

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