「超おトクに空港でぜいたくし放題だった“神カード”」が衝撃の改悪!? それでもおすすめな理由は?

上位クラスのクレジットカード保有者が、特典として取得できる「プライオリティ・パス」。航空旅行で高いコスパを発揮するこのサービスが、一部カード会社で縮小傾向にあるのだとか。そうなると、今後作る意味はなくなるのでしょうか。

カードの特典で「空港ラウンジ使えます」からさらに…

 2024年秋、飛行機での旅行を楽しむ人、また出張で飛行機をたびたび使う人に、驚きのニュースが広がりました。三菱UFJニコス、JCBが、上位クラスのクレジットカード会員向けに提供する「プライオリティ・パス」について、その利用範囲を制限すると発表したのです。

従来、プライオリティ・パスは航空旅行に行くうえで「コスパ最強のサービスを受けられるカード」として、ユーザー界隈では知られていました。ただ、このたび利用範囲が狭まったことで、今後プライオリティ・パスを作る意味はなくなってしまうのでしょうか。

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「プライオリティ・パス」(乗りものニュース編集部撮影)。

  プライオリティ・パスは、アメリカの同名会社が展開するサービスで、「空港ラウンジの無料利用」を軸に拡大。現在はラウンジにとどまらず、レストランやリラクゼーションなども無料利用できる範囲に含まれています。

 同社が直接提供するプランはラウンジ利用料金が必要な「スタンダード」、無料利用10回を含む「スタンダード・プラス」、利用回数制限のない「プレステージ」の3タイプとなっており、年会費はそれぞれ99ドル、329ドル、469ドルです(日本居住者向け価格、2024年10月現在)。

 先述の三菱UFJニコス、JCBは、一定以上の上位クラスのカード保有者に対し、これまでプレステージに相当する会員資格を無償で提供していました。つまり本来のプレステージのステイタスにかかる費用との差額(もしくは会員が利用する都度かかる費用)は、両社が負担していたと考えていいでしょう。

 そしてその仕組みは、会員の利用がそもそものプライオリティ・パスの“守備範囲”であった「海外の空港ラウンジの利用」であれば、利用人数も限られ、問題なく成立していました。

 しかし近年、プライオリティ・パスのサービスが日本国内でも空港ラウンジ以外のレストランやリラクゼーションにも拡大し、国内旅行でも気軽に使えるようになったことで、利用者の数が急拡大しています。

 そうしたこともあり、年会費2万2000円の「プラチナカード会員」などにプライオリティ・パスの利用資格を付与していた三菱UFJニコスは、9月末をもって無料利用の範囲を「空港ラウンジのみ」に、年会費1万6500円の「JCBゴールド・ザ・プレミア」以上から利用資格を付与していたJCBは、10月末をもって「国内は空港ラウンジのみ」と制限することにしたのです。

 筆者(植村祐介:ライター&プランナー)もプライオリティ・パスのサービス対象となっている羽田エアポートガーデンのレストラン「All Day Dining Grande Aile」のランチビュッフェ(3850円相当)を利用した経験があります。そのときスタッフにヒアリングしたところ、「お客さまの8割くらいがプライオリティ・パスのご利用です」との返事を得ています。

ほかのカード特典も「サービス縮小」可能性アリ?

 ほぼ満席の店内で客数の半分以上を占めていた日本人のうち、少なくない人数がクレジットカード付帯のプライオリティ・パスの利用であろうことを考えると、「無料でレストランが使えるサービスをずっと続けるのは難しいのではないか」というのが、当時の素直な感想でした。

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プライオリティ・パスで利用できる、香港国際空港の「プラザプレミアムラウンジ」(植村祐介撮影)。

 一方、同じくプライオリティ・パスが付帯する上位クラスのカード(セゾン・プラチナ・アメリカン・エキスプレス・カード、セゾン・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カードに無料付帯、セゾンゴールド・アメリカン・エキスプレス・カードに年会費1万1000円で付帯)を発行するクレディセゾンは、2024年10月14日現在、サービス内容の変更について何らアナウンスをしていません。

 ただクレディセゾンのこれらのカードは「リーズナブルなプライオリティ・パス付帯カード」として人気が高かったことから、三菱UFJニコスやJCBと同様の変更が行われても、不思議ではないと思われます。

 ところで、こうしたサービス内容変更を「改悪」と一面的にとらえるのは、正しい考え方でしょうか。

「サービス縮小」でもまだまだある「最強カード」のメリット

 プライオリティ・パスにより海外の空港で使えるラウンジは、“ドリンクバーがある待合室”と言うべき国内空港のカードラウンジとは異なり、ビュッフェ形式ながら温かい料理があるほかアルコールも無料で、さらにシャワーが使えるところもあります。また空港によっては、一部の航空会社のラウンジも利用可能となっています。

 こうしたラウンジの利用は、長旅の合間のリフレッシュ、さらには十分な作業スペースを使ってのノマドワークなど、タイパ(タイムパフォーマンス)の向上に欠かせません。

 そして重要視したいのが、セキュリティです。海外の空港において乗り継ぎなどで待ち時間が長くなるとき、出発ロビーや通路に設けられたベンチで時間をつぶすのは、置き引きやスリへの注意が欠かせません。一人旅のときは、とりわけ神経を使います。

 そうした不特定多数が行き交う外のベンチに比べると、ラウンジの安全度は(もちろん100%ではありませんが)格段に上であることは言うまでもありません。

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海外の空港の出発ロビーは多国籍、不特定多数の人が行き交う。身の回りの品にはつねに注意が必要(植村祐介撮影)。

 今回のサービス内容変更について、三菱UFJニコスは公式サイトで「昨今、空港における飲食店舗やリフレッシュ施設等でのプライオリティ・パスのご利用が大変増加しております。それに伴い、本サービスに関連するコストが増加しており、本サービス自体のご提供を続けることができなくなるおそれがございます」と説明しています。

 つまり運用コストの上昇に対し、プライオリティ・パスの有償化や付帯中止ではなく、サービス内容変更にとどめたというのは、海外の空港での乗り継ぎなどで“本来、ラウンジを必要としている利用者”にとっては「仕方ないけれども、納得できる範囲の見直し」とも言えるのではないでしょうか。

 コロナ禍後の航空運賃の値上がりに加え、たとえばJAL(日本航空)では2024年にステイタス制度の見直しをしたことなどで、短期のマイル修行で上級会員になる道はほぼ閉ざされました。航空券そのものの値上がりもあり、航空会社の上級会員へのステップアップも年を追うごとに難しくなっている状況です。そのようななか、海外空港のラウンジを無料で使えるサービスの価値は、ますます高くなっています。

 もしクレディセゾンがプライオリティ・パスのサービス内容を変更したとしても、先行した三菱UFJニコス、JCBと同じく「空港ラウンジのみ」にとどまるのであれば、加入を検討する理由は十分にあると思われます。

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