50ccの「戦車っぽい何か」!? ホンダが市場ガン無視で発売した「伝説のレジャーバイク」とは? 21世紀にも化けて出た!?

レジャーバイクブームがひと段落した1980年代、世の中の潮流を無視するかのようにホンダが打ち出したモデルが「モトラ」です。いかにも実用一辺倒の無骨なモデルは、今なお語り継がれています。

レーサーレプリカへの人気移行期に、突如登場した無骨な1台

 1967年に市販された「モンキー」を皮切りに、1960年代後半から1980年代前半までのホンダは数多くのレジャーバイクを開発してきました。「ダックス」「ハンターカブ」「ゴリラ」などが有名で、中にはさらに派生モデルを産んだヒット作もありますが、その中でも特に独創的なのが、1982年に登場した「モトラ」です。

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ホンダのレジャーバイクの歴史の中でも特に異彩を放っていた1982年発売のモトラ(画像:ホンダ)。

 1970年代後半から1980年代前半のミニバイクシーンは、それまで人気があったレジャーバイクタイプから高性能のレーサーレプリカなどに人気が移行しつつある時期でした。また、特にホンダ・ヤマハでは毎週のように新モデルを発表した時期もあるほど競争が激化。「HY戦争」と呼ばれた時代でもありました。

 そんな中で、ホンダのレジャーバイクとしてはモンキーの次に登場したダックスが1981年に生産終了。従来からのホンダのレジャーバイクはモンキー、ゴリラに集約されることとなりました。

 しかし、それから1年後の1982年には新発想のレジャーバイク「モトラ」が発売されました。「HONDA」のロゴがプレスされた鉄板を垂直に配したボディは、まるで戦車か重機のような無骨さ。前述のようなレーサーレプリカへの人気以降期ということも合わせて考えれば、かなりセンセーショナルな登場のモデルでした。

 発売当時のリリースを見ると「積載機能重視、野生味あふれる50ccレジャーバイク」と謳われていますが、この通りフロントとリアに重厚なパイプフレームのキャリアを搭載していたのも大きな特徴です。

 ホンダのレジャーバイクの多くがそうであるように、モトラもまたカブ系エンジンを搭載する一方、パワフルな登坂性能を目指し、通常のシフトに副変速機能として低速シフトをプラス。また、荷物の重さや路面状況に合わせてショックの硬さを手軽に調整できたり、分厚いブロックタイヤを採用したりした、かなりヘビーデューティなモデルでした。

50ccでそんな需要あったのか?

 ただし、この当時、ミニバイクで悪路や坂道を進み、大量の荷物を運ぶ実用ニーズがどれだけあったかは計り知れず、モトラ登場と入れ替わる格好で姿を消したダックスほどのヒットには至りませんでした。

 それでも、ホンダらしい遊び心や徹底したこだわりに、レジャーバイクファンからの一定の支持を得て、販売期間は5年となりました。

 短命だったわけではないため、生産終了後も中古の個体が比較的多く見られた一方、この独創性から高値傾向なのもモトラの特徴です。販売終了から37年が経過した今なお「伝説のレジャーバイク」として多くのファンを持つモデルでもあります。

「あれモトラじゃん」ファンをもやもやさせた“再来”モデルも

 また、2004年にホンダは“どことなくモトラっぽい”250ccスクーター、PS250を発売。「ラフ」「タフ」「ブコツ」がコンセプトで、モトラのそれとそっくりです。カラーのラインナップもモトラとよく似ていることから、「モトラのリメイク」の印象が強くありました。

 しかし、ホンダは正式にこれを謳っておらず「新感覚の250ccスクーター」とリリースしていました。

 モトラのイメージが伏せられたPS250の登場に、少しモヤモヤする感じもありましたが、筆者個人的な印象では、従来のモトラファンの間でもPS250はおおむね好評を受けていた様子。「モトラとPS250双方を所有し楽しむ」ユーザーも少なからずいたようです。

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PS250。どう見てもモトラにインスパイアされている(画像:ホンダ)。

 見た目もコンセプトも実用性も、とにかく独創的だったモトラですが、近年ホンダが125ccモデルで往年のレジャーバイクを続々と復活させ、ヒットに繋いでいる状況を思えば、このモトラもまた「公式なリメイクバイク」として復活して欲しいものです。特にキャンプなどのアウトドアレジャーが根強い人気を誇る今なら、モトラの実用性の高さはさらに評価を受けることでしょう。

 仮に125ccモデルで登場した場合、おそらく同排気量のバイクよりも巨大になりそうにも思いますが、それもまた面白そうです。オリジナルのモトラの登場時「市場に全く合わせない」ように感じさせたインパクト同様、いつの日かセンセーショナルな復活を遂げてほしいと思う1台です。

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