世界の願い!?「ホンダさん『ダックス』もう生産終了しないで…」 2度も消えたド定番原付の55年
ホンダ「モンキー」と並ぶレジャーバイクの双璧が「ダックス」です。モンキーの兄貴分のような存在ですが、55年の歴史で2度の生産中止を経験。しかし再評価と復活を繰り返し、電動化という新たな動きも見せています。
1969年に登場した初代と2代目の2モデル
1960年代後半、ホンダが切り開いた「レジャーバイク」という新カテゴリーが一世を風靡した時代がありました。その発端は、かつてホンダが運営していた多摩テックの遊具として開発された「モンキー」で、後に市販化。海外のアウトドアシーンで「子どもが遊ぶバイク」として絶大な支持を獲得しました。
この「モンキー」の兄弟モデルとして1969年に登場したのが「ダックス」です。
鋼板をプレスしてT字型に成型した「Tボーンフレーム」を採用したモデルで、ダックスもまた海外のアウトドアシーンで人気を博し、日本国内でもコアな支持を集めました。
ただし、初登場からの55年間でダックスは2度の生産終了を経験。この間、筆者は4台ほどのダックスを所有しましたが、常にヒットし続けたわけでないところもまた、なんだか愛おしく、特別な思いを感じるレジャーバイクです。
「お母さん向け」だったダックス
前述のモンキーが、海外のアウトドアシーンで子どもたちに親しまれた一方、「お母さんが楽しめるバイクがない」として開発されたダックス。初期のダックスはモンキー同様、車載できる仕様で、折りたたみハンドルが採用されていました。
また、モンキーとの併用部品も多く、ダックスのウインカーレンズは工具がなくても手でクルクル回せば外れるものでした。
このおもちゃ感もがなんともかわいらしいですが、初代がオン・オフ双方を意識して開発されたように映る一方、初代と同年には早くも「エクスポート」と呼ばれる2代目が登場。オフロード・ユーズに舵を切ったモデルでアップフェンダー、アップマフラーなどを搭載。「レジャーバイク」としての存在感をさらに強く印象づけました。
1度は淘汰された「ダックス」たち
また、ダックスのヒットによって、派生モデルも登場しました。
より走破性を高めた「マイティダックス90」(1972年)や、従来のダックスよりも太いタイヤを履き、従来型のガソリンタンクを配置した「ノーティダックス」(1973年)など。いずれのモデルもまた国内外で人気を博しました。
余談ですが、アメリカのロックバンド、ザ・モンキーズの往年のドラマのオープニングで、メンバーが「ノーティダックス」にまたがり、嬉しそうにはしゃぐシーンが残っています。
1970年代の中半から後半になると、ダックスも複数モデルがラインナップされ、1979年にはフロントフォークの長いチョッパータイプのダックスが登場。さらなる進化を予感させましたが、この頃よりバイクメーカー各社の熾烈なシェア争いが始まり、各社のラインナップが増加。
ラインナップの整理のほか、ミニバイクの人気が「レーサーレプリカ」に移行し始めたことを受け、1981年にホンダのレジャーバイクは「モンキー」「ゴリラ」に集約されることとなり、ここで国内モデルのダックスは一度目の生産終了に至りました。
20数年周期で再燃する? ダックス2度の復活
ただし、1980年台から1990年代にかけてもダックスの海外輸出モデルの生産は続けられていました。日本国内のコアなダックスファンの中には、逆輸入で輸出向けモデルを入手する人もいたほどでしたが、こういったコアな支持を受けてか、ダックスは1995年に24年ぶりの復活を果たします。
初期ダックスの雰囲気を漂わせた折りたたみハンドル仕様の一方、12Vで初期にはなかったCDI点火などを採用し、往年のファン、新しいファン双方に支持されました。
しかし、この「90年代ダックス」も1999年に施行された「平成11年二輪排ガス規制」の適合モデルが開発されず、わずか4年で生産終了となりました。
もはやダックスはここまでで終わりかと思われましたが、2度目の生産終了から23年後の2022年に、突如「ダックス125」として復活。
タイホンダのチームが「今だからこそ『ダックス』がウケる」と開発。基本コンセプトを踏襲しながらも125ccモデルとして再表現したことで、結果的にタイ・日本双方ともヒットに至りました。
あの時のイメージ蘇る!? 「デカいダックス」「電動ダックス」の実際
従来型のダックスを愛した筆者ですが、やや大ぶりとなった「ダックス125」にまたがっても違和感ゼロ。所有時の思いが蘇るバランスの取れたライディングポジションと、足回りなどの強化ぶりにまず感動しました。
さらに細部を見ると、往年モデルと比べ溶接部なども実に細やかに作られており、次に購入するバイクはダックス125にしたいと思うようになりました。
前後しますが、2001年に開催された「東京モーターショー」のホンダブースには、「ダックス」を冠した電動バイクを参考出品していました。
その名も「e-DAX」。外見には往年のダックスの面影はさほど感じられないものの、バイク全体を伸縮・折りたためる仕様で、ダックスの当初のコンセプトが反映されたモデルでした。なかなかかわいい電動バイクで市販が期待されましたが、その後、全く音沙汰なし。
しかし、それから22年を経た2023年にホンダは、中国市場限定の電動バイク「DAX-e」を突如発売しました。
往年のダックスのTボーンフレームを模した未来的デザインがカッコ良く、すぐに日本のダックスファンの間でも話題となりました。この注目度の高さを受け、最近では一部バイクショップが逆輸入のカタチで販売するケースも出始めています。
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ここまでダックス55年のストーリーをざっくり紹介しましたが、筆者の願いは、2度の生産終了を経験したダックスが、再び生産終了にならないこと。
近年のダックス125の復活およびヒット、中国市場における電動バイクDAX-eの登場などで、しばらくはまず大丈夫だと思いますが、ダックスはモンキーと並ぶ、ホンダの「レジャーバイク」出身の重要なモデルです。様々な進化を遂げながら、向こう45年生産が続き「ダックス100周年」が迎えられる日が来ることを願ってやみません。
08/26 18:12
乗りものニュース