全国トップクラス輸送量の「単線」複線化なるか? 沿線自治体が国へ“技術支援”要請 将来は羽田直通も

JR川越線は東京へ通じる埼京線と一体運用されるほか、将来的には羽田空港への直通も見込まれています。しかし、いまなお大部分が単線のまま。今後はどうなるのでしょうか。

さいたま市が「川越線の複線化に向けた技術的支援」要望

 JR埼京線と直通運転を行う「川越線」の東半分、大宮-川越間は大部分が未だに「単線」のままです。そうした中、さいたま市は2025年度へ向けた国への要望に、「川越線の複線化が可能な構造に関する技術的な支援」を盛り込みました。今後どうなるのでしょうか。

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川越線の車両(画像:写真AC)。

 川越線の大宮-川越間は、埼京線と一体化した運行形態となっており、大宮-日進の1区間だけが複線で、それ以外は単線です。1日の平均通過人員は7万7625人(2022年度)におよび、単線区間としての輸送量は全国トップクラスとなっています。沿線では、10両編成の通勤電車が田園地帯の単線を行き交う光景を見ることができます。

 単線区間があると、運転本数や速度に制約が生じます。また、遅延が後続列車だけでなく、対向列車にも影響を与えるため、複線運行に比べてダイヤの回復に多くの時間を要するデメリットも。2023年3月には指扇~南古谷間で、単線区間に上下線の車両が同時に進入して鉢合わせとなるトラブルも発生しています。川越線は埼京線のほか、りんかい線や相鉄線とも直通運転を行うなど、ダイヤ乱れの影響を受けやすく、輸送障害時には大宮駅で運行形態を分断する措置が取られています。
 
 川越線は将来的に、羽田空港アクセス線(西山手ルート)を経由して羽田空港までの直通も見込まれており、定時性の確保は更に重要性を増すことが見込まれます。開業の目途が立っていない西山手ルートの早期着工を国へ要望している埼玉県は、川越線をはじめとした県内路線の活性化が期待されるとしており、今年度も要望を継続していく構えです。

複線化に向けた動きは?

 ただ、現時点で川越線に複線化の計画はありません。検討主体であるJR東日本は、「将来的に利用者が増えた時には、複線化の可能性はある」というスタンスを沿線自治体に示しています。さいたま市は、沿線の土地区画整理事業や、新たな産業集積拠点の形成に向けた検討などを引き続き推進し、複線化につながるような利用者増に取り組むとしています。
 
 過去にはさいたま市議会で、議員から川越線の複線化用地を確保すべきという質問が出たこともありましたが、市は「現段階ではJRから具体的な軌道の線形が示されていないので用地は確保していない。今後複線化用地の線形や区域が示された時点で用地確保を検討していきたい」との認識を示しています。複線化に向けた道のりは長そうです。
 
 ただ、架け替えが予定されている荒川橋りょう区間(指扇-南古谷)に関しては、埼玉県などが複線仕様で架け替えを検討する調査を実施しました。荒川橋りょうは、国が荒川の治水対策として整備を予定している第二調節池の計画地内にあり、堤防の嵩上げによって現在の橋りょうの高さや幅が不足するため、2030年度を目標に架け替えが予定されています。

 この調査によると、まずは現位置の上流に新たな橋りょうを単線で建設して架け替え、複線化する際は現位置に単線の鉄橋を新設する案の評価が最も高いとしています。荒川橋りょうの架け替えと合わせて複線化されるわけではなく、単線で架け替えた上で、将来的な複線化の余地を残す方向となりました。
 
 現時点では、川越線の複線化が実現するかはかなり不透明な状況と言えます。

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