JR西日本vs京阪に「阪急」も名乗り! 関西「有料座席」競争ますます熾烈 一番イイのはどれ?
阪急電鉄が有料座席「PRiVACE」のサービスを開始。これで大阪~京都間は「PRiVACE」と、JR西日本「新快速Aシート」、京阪電鉄「プレミアムカー」の3サービスが競い合うことになりました。それぞれの特徴を比較してみましょう。
利用範囲のJR、サービスの私鉄
阪急電鉄が2024年7月から、有料座席「PRiVACE」のサービスを開始。これにより大阪~京都間で並行する3路線では、「PRiVACE」にJR西日本「新快速Aシート」、京阪電機鉄道「プレミアムカー」と3サービスが競い合うことになりました。
料金不要の列車にグレードの高い有料特別座席車両を連結する事例は、電車では1930(昭和5)年の横須賀線電化時に、二等車(現在のグリーン車)を連結したことを始まりとします。京阪神地区では1980(昭和55)年に普通列車グリーン車が廃止され、国鉄(JR)と阪急、京阪の私鉄特急が、転換式クロスシートを備えた追加料金不要の速達列車で競う状況が続いていました。
そうしたなか、2017(平成29)年に、京阪が追加料金を支払うことで着席できる有料座席指定特別車両「プレミアムカー」の運行を開始しました。特急列車に連結された「プレミアムカー」は、改造車ながら1+2列の回転式リクライニングシートを備えており、洗練されたインテリアもあって好評を博します。2021年より、従来の8000系に加え3000系にも新造車でプレミアムカーが連結されたほか、2025年からはプレミアムカーの2両化も発表されています。
一方2019年より、JR西日本は新快速に有料座席指定特別車両「Aシート」の連結を開始。こちらも運行当初は223系の改造車でしたが、2023年より225系の新造車両も投入され、当初の4往復が6往復に拡大しています。
ここへ先述の通り阪急京都本線の「PRiVACE」が加わり、京阪が淀屋橋~出町柳間、JRが網干・姫路~草津・野洲間、阪急が大阪梅田~京都河原町間と、京都~大阪間に3社の有料座席指定サービスが出そろったことになります。
では、各社のサービスを登場順に比較してみましょう。なお紹介する座り心地は、身長173cm、77kgとほぼ男性標準体型の筆者(安藤昌季:乗りものライター)の主観となります。
インテリア◎「プレミアムカー」
■京阪電鉄「プレミアムカー」
1+2列のヘッドレスト付き回転式リクライニングシートで、定員40名です。8000系と新しい3000系の2種類があり、一部の仕様が異なります。
座席間隔は3000系が1040mm、8000系が1020mmで、座席幅はどちらも460mm、リクライニング角度は20度です。付帯設備は背面テーブル(一部の座席はインアームテーブル)、ドリンクホルダー、コンセント、座席上面のつまみです。フリーWi-Fi、空気清浄機、大型荷物スペース、フットライト、21.5インチ大型壁面モニターが設置されています。
特徴は「風流の今様」というコンセプトの和風デザイン。座席部分に枯山水のようなカーペットが敷かれています。カーテンの柄も京風で統一されており、とてもオシャレです。インテリアとしては、3社の有料サービスの中で最も洗練されていると感じます。また、アテンダントによるグッズ販売があるのは特筆する部分です。
座席については、やや固めの着座感。スペースとしては十分にゆったりしており、コンセントやテーブルなどの使い勝手は良好です。大型ヘッドレストのおかげで隣席が視界に入りにくく、プライベート感もあります。ただ、枕がないので後頭部にかかる重量がやや分散しない点と、座面が背もたれの傾斜に連動しないため、体が前に滑りやすいのは少し気になります。
側窓は十分に広く、解放感があります。ただし、8000系のプレミアムカーは改造車なので、一部の座席が窓割りと合わない箇所があります。ホームページで窓配置は確認できるので、景色が見たい人は注意しながら予約するとよいでしょう。
料金は淀屋橋~淀以遠、出町柳~寝屋川市以遠は500円、それよりも短い距離は400円。淀屋橋~出町柳間の所要時間は48~60分程度です。
俊足「Aシート」 18きっぷも一部OK
■JR西日本「Aシート」
「A」とは「Amenity」(快適性)、関西弁の「ええ」、JR神戸線・JR京都線・琵琶湖線の路線記号「A」にちなみます。
座席は2+2列の回転式リクライニングシートで、その間隔は944mm(225系)~970mm(223系)、幅は450mm、定員46名です。223系の「Aシート」は改造車のため、座席と窓割りが合わない場合があります。
リクライニングは「プレミアムカー」や「PRiVACE」に劣らず倒れます。設備面は大型テーブル、個別コンセント、座席上部のつまみ、網ポケット、無料Wi-Fiで、中間肘掛けは可動式で跳ね上げ可能。窓枠にも小物なら置けます。また、大型荷物置き場も備わります。天井と車端部にモニターがあり、どの座席からでもモニターの視認がしやすいです。
車いす対応トイレがあるのもJRらしい点です。ちなみに、トイレの前に備えられた1人用の“トイレ待ち座席”は、新型の225系のみ備わります。
座席の出来栄えですが、全体的にクッションが柔らかめです。枕はありませんが、クッション性が高いので、そこまで違和感はありません。座面はリクライニングと連動せず、やや体が前に滑る感じはあります。JRの車両限界が私鉄より大きいため、2+2列座席ではありますが、横幅では遜色ありません。
料金は区間によらず840円。チケットレスだと600円です。やや高めですが、最大で2時間20分ほどの乗車ですし、私鉄特急よりもスピードでは勝るので、利用区間によっては割安と感じます。なお、みどりの窓口で事前に指定券を購入すれば「青春18きっぷ」での利用も可能ですが、チケットレスでは乗車できないので注意が必要です。
快適性に不満はないのですが、本数があまりにも少ないため、時刻表を見ないと利用できないという点が残念に思います。
居住性を重視「PRiVACE」
■阪急電鉄「PRiVACE」
紹介したほかの車両と異なり、車両中央にホテルのエントランスのような出入口があり、客室が前後2つに分けられています。座席は大型ヘッドレストが備わった1+2列の回転式リクライニングシートで、定員は40名です。
インテリアは阪急の伝統を踏襲し、ゴールデンオリーブの座席モケットと、木目調の化粧板です。通路全体にカーペットが敷かれているため、高い静粛性を実現しています。全体的に「派手さはないが、質実剛健」なインテリアという印象を受けました。
座席間隔1050mm、座席幅は1人掛けが465mm、2人掛けが480mmで、スペース面では3社で最も広いです。リクライニング角度は通常時が9度、最大20度です。
付帯設備はインアームテーブル、読書灯、個別コンセント、ドリンクホルダー、マガジンラック、小物掛け、個別コンセントと充実。無料Wi-Fiや空気清浄機、大型荷物置き場、車いすスペース、大型モニターもあります。
座席はヘッドレストと座席間仕切りが大きく取られ、プライベート感があります。頭の部分が柔らかく、座面もリクライニングに連動して動くため、かなり座り心地に優れています。中間肘掛けは狭いのですが、仕切りに体をもたれかからせることで、快適に過ごせます。
快適性は抜群ですが、他社が2列1窓なのに対して、プライベート感を重視するあまり1列1窓なので、側窓がかなり狭いです。一方でこのことが静粛性に貢献しているので、ヘビーユーザーであればむしろ利点ですが、観光気分で車窓を眺めるのには向いていません。料金は区間によらず500円です。
なお、特筆すべきは4番と5番のBC席(2人掛け座席)にチャイルドシートを装着できることです。利用者は予約時に対象の席を予約し、車内でアテンダントに申し出ると利用できます。
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全てに乗車したうえでの感想ですが、インテリアは「プレミアムカー」、速達性は「Aシート」、快適性は「PRiVACE」と感じました。
それぞれに良さがある、京都~大阪間の有料座席サービス。乗り比べてみてはいかがでしょうか。
08/14 07:12
乗りものニュース