「ミニ新幹線」あなどってはいけない! フル規格を上回る座席も 歴代車の乗り心地を徹底解説

2024年3月のダイヤ改正で、最新車両の山形新幹線E8系がデビューしました。在来線と新幹線の両方を走るミニ新幹線は、1990年に400系が登場してから今年で35年目です。この機会に歴代ミニ新幹線について、座席を中心に振り返ってみましょう。

ミニ新幹線始まりは400系

 いわゆる「ミニ新幹線」は、在来線車両の車体を持ちつつ、新幹線へ直通運転を行う新幹線車両のこと。その歴史は、1990(平成2)年に400系の試作車が登場してから2024年で35年目となります。この間、400系、E3系、E6系、E8系と4車種のミニ新幹線が製造されました。
 
 併結で走るフル規格の新幹線車両と比べると一回り小さく、座席の数も少ないミニ新幹線車両ですが、フル規格車両に劣らない、忘れ難い座席もありました。歴代ミニ新幹線車両について、座席鉄である筆者(安藤昌季:乗りものライター)が座席を中心に紹介したいと思います。

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初のミニ新幹線400系(画像:PIXTA)。

■400系
 1990年に試作車が、1992(平成4)年より量産車が製造された、山形新幹線用の車両です。車体全長20.5m(先頭車のみ23m)、車体幅2.94mと在来線並みであり、一般的なフル規格新幹線の車体長25m、車体幅3.4mより小さなものでした。

 このため、車体には可動式延長ステップが装備され、新幹線区間でのホームとの隙間を埋めました。この仕様は後のミニ新幹線に踏襲されていきます。

 接客設備は普通車とグリーン車です。当時のJR東日本は、普通車自由席と普通車指定席の設備に差を付けており、自由席の座席間隔は910mm、指定席は980mmでした。リクライニング角度も、指定席の方が大きく取られていました。なお15号車は後に製造されたため、座面スライド機構を搭載。普通車の側窓は2列1窓で、眺望性に優れていました(400系以外は1列1窓)。

 特筆すべきはグリーン車で、1160mmの座席間隔は以降の車両と同じですが、ミニ新幹線では唯一の1+2列配置。座席幅も493mmあり、2+2列のフル規格新幹線よりも広く(N700Sが480mm)、非常にゆったりとしていました。E8系が登場した現在の目線でも、座り心地では最高だと思います。400系は2010(平成22)年までに引退しました。

普通席なら現行車両よりもイイ?

■E3系0番台・1000番台
 1995(平成7)年に試作車が登場した、秋田新幹線用のミニ新幹線です。自由席が座席間隔910mm、指定席が980mmという点は400系と同じですが、リクライニング角度に差はありませんでした。座席幅は445mmです。

 2002(平成14)年に登場したR18編成より、普通車の座席が在来線特急のE257系普通席に類似したものとなり、座面スライド機能やドリンクホルダー、フットレストが装備されました。

 グリーン車は2+2列となり、座席幅460mmで、同時期のE2系(473mm)よりも狭くなりました。ただし枕が装備され、400系よりもその部分のグレードが上がっています。座面はスペースこそやや狭いものの柔らかめでした。

 1000番台は1999(平成11)年、山形新幹線の新庄駅延伸時に製造された車両で、前頭部や塗装などが0番台と異なります。座席は同時期の0番台と同じなので省略します。

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E3系0番台の普通車(2014年9月、安藤昌季撮影)。

■E3系2000番台
 2007(平成19)年、400系置き換え用に製造されました。普通車全席が座席間隔980mmとなり、窓側の座席と車端部にコンセントを設置。枕はありませんが、現行のE6とE8系には座面スライドとフットレストがないので、コンセントのある窓側が、最もグレードが高いミニ新幹線普通席ともいえます。2000番台は、鉄道車両として初めて空気清浄機が搭載されました。

 グリーン車の座席幅は465mmと、0番台よりやや広くなっています。フットレストがレッグレストに置き換わったほか枕も備わり、肘掛けにコンセントもあります。座面が固めですが、レッグレストの角度もよいので、座り心地はなかなか。ただ、窓側座席では窓枠と肘掛けがやや干渉します。

2つの新幹線観光列車

■E3系700番台「とれいゆつばさ」
 新幹線初の観光列車として、2014(平成26)年にE3系0番台を改造して登場した観光列車です。最大の特徴は「新幹線内の足湯」で、景色を見ながら足湯を楽しめました。

 座席は1+2列の向かい合わせ座席と、元グリーン車の2+2列座席。1+2列は座席間隔が広く、横方向のゆとりはありましたが、座面が畳でその上に座布団を敷くためクッション性はやや難あり。背もたれ形状は背骨と合わず肘掛けもないため、座り心地はそこそこでした。2+2列は元グリーン車なので、普通車指定席と考えるなら「当たり」。2022年に引退しています。

■E3系700番台「現美新幹線」
 2016(平成28)年に上越新幹線に登場した「走る現代美術館」がコンセプト、車両の大半がギャラリーペースというユニークな車両でした。

 座席は1両のみ元グリーン車の普通車指定席で、あとはギャラリースペースのソファーです。ソファーはやや固めの座り心地でした。ビュッフェの座席は座面のみクッションがある椅子で、お洒落な喫茶店にあるようなものでした。2020年に引退しています。

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E3系700番台「現美新幹線」(2016年4月、安藤昌季撮影)。

■E6系
 東北新幹線の最高速度320km/h化に対応し、2010(平成22)年に試作車が登場した、秋田新幹線用の車両です。普通車の座席間隔は全て980mm。座席の色は秋田の稲穂を、通路は田んぼのあぜ道をイメージしています。窓際と車端部にコンセントがあります。

 座席は、枕の設置により快適性が増しています。フットレストや座面スライドはなくなりましたが、リクライニングと連動し、わずかに座面が動きます。座面形状は悪くありません。

 グリーン車は座席間隔1160mm。沿線の角館の武家屋敷をイメージし、枕は秋田の伝統工芸「楢岡焼き」の釉薬「海鼠釉」の青色です。全席にコンセントが設置されています。一部が革張りとなり、肘掛けも幅は狭いですが、木製であるなど高級感のある素材が使われています。座面形状はなかなかです。ただ、レッグレストに座面との段差があり、足の重量が分散しておらず、長さも不足しているように感じます。

最新ミニ新幹線E8系

■E8系
 2024年に登場した、山形新幹線用の新型車両です。普通車でもコンセントが全席設置されています。

 座席はE6系と酷似し、座席間隔も同じ980mmです。枕、窓下のテーブル、座席背面の網ポケット、大きなテーブル、ドリンクホルダー、帽子掛けがあります。座席形状はE6系と同様よくできており、やや固めながらホールド感があり、リクライニング角度も十分です。

 グリーン車も2+2列です。こちらも座席形状はE6系と酷似していますが、背もたれ上部はやや異なります。インテリアは「最上川と月山」の雰囲気で、ややライトに。座席表面は革張りですが滑りません。枕は位置も動かせ柔らかく、肘掛けにはサクラ材が貼られています。肘掛け内テーブルと背面テーブルがあり、併用もできます。中間肘掛けにコンセントもあります。

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E8系のグリーン車(安藤昌季撮影)。

 座席のリクライニング角度は大き目で、形状は悪くありません。ただ、E6系と同じくレッグレストが短く、座面とのつながりも悪く感じます。

 一方で走行音が小さく、揺れも抑止されていたのは素晴らしいです。ちなみにコンセント位置については、乗客がコードに足を引っかけるのを防ぐため、肘掛けの付け根としたという経緯があります。

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