電車代は1万円!? 富士山登山鉄道構想「もっと来てもよい」「昔のハコモノ行政と同じ」住民の賛否に県が回答 意見交換会の概要公表

富士山が抱える課題はLRTで解決する?

LRTで来訪者数のコントロールが可能に

 山梨県は2024年7月、富士山登山鉄道構想などについての意見交換会で交わされた主な住民の意見や県の回答を公表しました。

 県は6月から7月にかけて、住民と県の担当者による少人数の「持続可能な富士山のための新交通システム意見交換会」を計14回開催し、住民延べ54人が参加しました。そして7月30日、意見交換会の議論の概要を公表しました。

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富士山登山鉄道のイメージ(画像:山梨県)。

 県が検討を進める富士山登山鉄道構想は、富士山の麓から五合目までを結ぶ既存の有料道路「富士スバルライン」の路面に軌道を整備し、LRT(次世代型路面電車)を走らせようというものです。

 景観への影響を最小限に抑えるため、軌道からのワイヤレス給電方式を検討。電車を決まった時間と本数で運行することで、来訪者数の確実なコントロールも可能といいます。五合目の終点は地下駅のように整備し、年間を通じて来訪できるようにします。線路などの基盤整備は公的主体、LRTの運行管理は民間が担う上下分離方式を想定しています。

 公表された議論概要によると、登山鉄道構想について住民からは「『鉄道ありき』ではないか」「LRT以外に選択肢がないかのような説明であり、都合の良いことばかり言っているように思う」「昔のハコモノ行政と同じであり、強引」など、県の進め方に疑問を呈する声がありました。

 また、「来訪者コントロールが必要との認識は賛成できる」「オーバーツーリズムは問題ではない。来訪者はもっと来てもよい。昔から多いし、経済効果がある」など、来訪者数の管理については賛成意見も。

 これに対し県は、2013年の世界文化遺産の登録時にイコモス(国際記念物遺跡会議)から指摘された「来訪者コントロール」「環境負荷の軽減」「景観を信仰の場にふさわしいものとする」といった3つの課題を挙げ、「登山鉄道構想はこれらの現状の課題解決にとどまらず、100年先を見据え、富士山を唯一無二の上質な空間としていくための一つの具体的な提案」と説明しています。

 2021年の有識者会議で電車代が1万円と試算されたことについては、住民から「身近な山であり、誰でも気軽に登れる山。登山鉄道により1万円を払わなければ登れなくなるのは反対」という意見に対し、県は「富士山の保全のために、来訪者コントロールとともに、五合目の高付加価値化を図ることが将来を見据えた対策として必要」と回答しています。

 住民から出た意見は、県における今後の検討において参考にするということです。

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