「あれ、迷彩が違う」木更津に揃ったオスプレイと輸送ヘリに感じた違和感 グレー塗装が増えた“今っぽい”切実な理由

オスプレイ納入完了式の際、付近にあった陸上自衛隊の大型輸送ヘリとを見比べると、その形だけではなく迷彩も異なることに気付きました。これはそれぞれの納入時期による違いですが、同時に日本の安全保障環境の変化も写し出していました。

搭乗して感じるオスプレイと陸自輸送機の違い

 2024年7月11日、陸上自衛隊木更津駐屯地の第1ヘリコプター団でV-22「オスプレイ」の納入完了式が行われました。この式典を経て、輸送航空隊には大型輸送ヘリCH-47JAとV-22の定数が揃いました。
 
 筆者(月刊PANZER編集部)はこの機会で、V-22「オスプレイ」に搭乗することができました。

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2024年の総合火力演習に参加したV-22「オスプレイ」。海上を飛行することを想定してグレー系の迷彩塗装だ(月刊PANZER編集部撮影)。

 V-22「オスプレイ」のキャビンには24名分の座席がありますが、シートベルトは肩まで固定して体をホールドする4点式と独特なため、装着する際にはちょっとしたコツが必要です。座席もアメリカ人の体格に合わせた規格なのか、陸自の輸送ヘリCH-47JAと比べると高く感じます。機内の表記も全て英語で、搭乗するとアメリカ製であることを実感します。

 軍用輸送機には旅客機のような快適さは期待できません。手荷物の収納棚などありませんので、筆者は自分の手荷物を座席下に押し込んでいましたが、V-22では座席の下には物を置くことが禁止されています。これは不時着時に、座席が下がって衝撃を吸収する構造になっているからです。

 座席も前向きではなく、通勤電車のようなロングシートの横並びで座席同士が近接しているため、シートベルトを締める際にも隣席のバックルを間違えて引き込んでしまうなど、身を落ち着けるまでいつもマゴつきます。CH-47JAは2点式シートベルトでしたが、V-22の場合は前出の通り4点式シートベルトなのでさらに手間が掛かります。

 離陸前に慣れない4点式と苦闘していると、ふと航空自衛隊のC-2輸送機でも同じ苦闘をしたことを思い出しました。C-2も横並び座席の4点式シートベルトだったのです。

 そういえば脈略が無いようですが、両方とも迷彩塗装が同じグレー系であることも気が付きました。V-22とC-2のシートベルト、そして迷彩塗装の類似性は偶然ではないようです。

両機に与えられた任務は何か

 その一方、駐屯地でCH-47JAとV-22を見ると、印象が大きく違います。回転翼機とチルトローター機という形の話ではなく、この2機は迷彩塗装が異なるのです。

 初期のCH-47Jの取得は1986(昭和61)年、V-22の取得は2018(平成30)年と32年の開きがあります。この間に日本の安全保障環境が大きく変化していることを示しています。

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2019年の総合火力演習で高機動車を下す陸受自衛隊の大型輸送ヘリCH-47JA。内陸低空域の行動を想定した緑・茶系迷彩だ(月刊PANZER編集部撮影)。

 CH-47の塗装は内陸部の低空域での行動を想定し、地表面の色彩に合わせた緑と茶、黒の3色迷彩が施されています。一方、V-22は海上を飛行することを想定し、濃淡の異なるグレー系の3色で塗り分けられています。これは、V-22が輸送航空隊として島嶼防衛を主任務とする水陸機動団と一体的に運用されるためです。

 V-22はチルトローター機という機能上の特性が注目されがちですが、CH-47JAとの役割の違いも重要です。CH-47は遅いながら車両などを大量に運べるのに対し、V-22はたくさん運べないぶん速いという特徴があります。

 具体的には、V-22はCH-47と比べて巡航速度で約1.7倍、航続距離で約2.5倍です。機内搭載量はCH-47と同じ約9100kgですが、機外懸吊量はCH-47が約1万2500kgに対して約6800kgとやや劣ります。実際の任務では、V-22で人員と最小限の装備を迅速に運び、CH-47が後追いでより多くの人員や装備を送り込むというイメージです。

例えばオスプレイが3色迷彩になる日は来るか

 CH-47Jが取得された時代、陸自は内陸部防衛が主任務でしたが、V-22を取得する時期になると島嶼部防衛に重点を置かなければならなくなりました。これが迷彩塗装の違いとして表れており、同じことは空自輸送機C-1とC-2にも見られます。

 C-1は内陸部仕様の迷彩を施されていますが、C-2は海上仕様のグレー系迷彩です。この違いもまた、航続距離が意図的に短く抑えられたC-1の時代と、海外任務にも対応できるC-2の時代の、日本の安全保障環境の変化を示しています。

 このC-1とCH-47JA、C-2とV-22の類似性は先に紹介したキャビン座席のシートベルトにも見られます。C-1とCH-47は腰で締める2点ベルトを使用していますが、C-2とV-22は4点式ベルトを採用しています。これは取得時期によって求められる安全性のレベルが上がったことはもちろんですが、機体特性にも関係しているように思います。

 チルトローター機であるV-22は、飛行中の回転翼機モードから固定翼機モードへの変化時に独特の横向きの加速度がかかります。C-2も大型でエンジン出力が大きいため、横向きの力が強くかかることが共通しています。このため、より体をホールドしやすい4点式シートベルトが必要なのではないかと筆者は考えます。

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CH-47JAと同じような緑・茶系迷彩塗装の航空自衛隊C-1輸送機。老朽化により退役が進んでいる(画像:航空自衛隊)。

 迷彩塗装の違いからシートベルトの仕様に至るまで、細部に現れる変化はその背後にある日本が直面する安全保障環境の現実と適応の一端を垣間見せます。輸送航空隊のCH-47がグレー系迷彩に塗装される、またはV-22が緑と茶、黒の3色迷彩に塗装される時が来るならば、日本の安全保障環境が再び変化したことを意味するかもしれません。

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