トランスフォームする「ハイエース」!? 究極収納を実現する “職人マジック” に驚いた!

クルマのドレスアップは外見だけではありません。仕事道具を車内にキレイかつ使いやすく収納する、そのためのラックを自作するのもそのひとつだとか。それら職人系ドレスアップカーが集結したイベントを取材しました。

スライド式収納でクルマから作業場に変形

 オーナーが自分の愛車をカスタムする文化は、あらゆるカテゴリーの車種で存在しています。一般的にはクルマの外見をドレスアップする例が多いものの、車内を実用的かつ美しくカスタムする人たちも一定数います。

 今年(2024年)の6月9日に開催された「N.I.E.~荷室、イジってえぇんやで~」は、ハイエースのような商用バンの荷室をカスタムした車両が集まった珍しいイベントです。参加者は空調や内装、電気といった建築関係の職人が多く、当日は様々な種類の作業車が40台も集まっていました。どの車両も仕事で使う道具類を効率的に積み込むために荷室がカスタムされています。

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スライドドアからラックを伸ばし、屋根にはキャンピングカーで使われるサイドタープを設置。ハイエースを作業場として利用することができる(布留川 司撮影)。

 効率のよい収納といえば、普通は整理整頓と収納ケースなどを使うことをイメージします。しかし、会場に集まったクルマはそんな一般人が連想するレベルを超えており、収納上手といった簡単な言葉では言い表すことができない内容となっていたのが印象的でした。

 単純に車内に物を詰め込むだけに留まらず、スライド式のラックを自作して取り出しやすさも追求。それらを引き出すと、クルマはキャンピングカーのようにトランスフォームし、停めた場所がそのまま即席の作業場へと変化します。

 しかも、どのラックも収納力とともにショーケースのような美しさも追求しているため、DIYで工具などに興味がある人ならば、見ているだけでワクワクしてくる不思議な魅力がありました。

なぜそんなに積み込むの? 必要だからです!

 イベントに参加した荷室のカスタムカーを見ていると、「なんでこんなに道具を積むの?」と思う人も多いかもしれません。

 建築関係の職人は、自分の会社ではなく、相手の現場まで出向きそこで仕事を行うのが普通です。また、職人といえば自分の腕(技術)ひとつで仕事をしているイメージがありますが、実際には作業に応じて必要な工具と部材があり、それが不足すれば当然ながら仕事もできません。

 建築系の職人たちがハイエースのような収納スペースの広いバンタイプのクルマを愛用するのは、それだけ日々の業務で多くの工具や部材が必要であり、それらを少しでも多く積んでおくためです。

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「N.I.E.~荷室、イジってえぇんやで~」に参加した皆さん。ほとんどが建築業界で活躍する職人の方々で、収納のカスタムから工具の話題などで盛り上がっていた(布留川 司撮影)。

 イベントに参加した職人の方々は、関わる仕事も多種多様であるものの、共通するのは扱う道具の幅広さ。工具だけでなくネジや溶剤などの細かい消耗品まで含めると、積み込んだ荷物の種類は数百を超えていることから、これら車両の荷室カスタムには、実用的な理由も多分に大きいといえるでしょう。

 イベントを主催した大原さんは和歌山県で水道工事の職人として働いているそうで、会場には自身が仕事で使っているハイエースを展示していました。当然ながら、その荷室も見事な荷室のカスタムがされていたのは言うまでもありません。

 収納カスタムをした理由について聞くと、それは実用性と趣味性の両方だと語ってくれました。

「一番の理由は、自分自身こういうカスタムというかDIYが好きだからです。普段の仕事で使い勝手の悪さを感じると、それを自分で直したくなってくるんですよ。ただ、単純に機能を良くするだけでなく、見た目も綺麗にカッコよくっていうモットーでやっています」

見栄えの良さは新しい仕事にも繋がる

 一般人ですら目を引く荷室のカスタムは、仕事現場では同業者からも注目を集めるそうで、それが次の仕事に繋がることもあるのだとか。大原さんいわく「これだけ改造していると悪目立ちすることもありますが、現場の親方や施工主が認めてくれて次の仕事を紹介されることもありますね。カスタムにはそれなりのお金と手間が掛かっていますが、作業の効率化も入れて考えると1年くらいで元は取れたと思っています」とのことでした。

 荷室カスタムの基礎ともいえるスライド式ラックについては、原点はアメリカのキャンピングカーで壁などが外にせり出すスライドアウト機構にあるそうで、居住空間を広げるための仕組みを、仕事車の荷室に応用したのが始まりだといいます。

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「N.I.E.~荷室、イジってえぇんやで~」のイベントを主催した大原さん。ご自身も水道工事の職人で、このキャラバンで実際に現場を回っているという(布留川 司撮影)。

 ただし、具体的な製品や決められたフォーマットがあるワケではないため、その改造は誰もが自分の仕事のスタイルに合わせたDIYによるワンオフ製作となっています。大原さんがこのようなイベントを行った一番の理由も、自身も含めた荷室カスタム仲間との交流だそうです。

「自分自身、もともとこういう集まりというかイベントが大好きなんです。普段の仕事では会えない、いろんな職種の人たちが集まって、お互いの荷室やアイディアを見せ合い、話して盛り上がるのってすごく楽しいことだと思います」

「N.I.E.~荷室、イジってえぇんやで~」は今回が初開催ですが、今後も年1回から2回程度の頻度で継続的に開催していこうと考えているそうです。今回のイベントに集まった荷室カスタムカーは、工事関係者でなくとも見ているだけで楽しめる内容であり、その工夫を凝らした機構はキャンピングカーなど内装カスタムをしているドライバーにも参考になることでしょう。

「N.I.E.~荷室、イジってえぇんやで~」はInstagramにて公式アカウントを運営し情報発信しているので、そこにアクセスすると意外な発見ができるかもしれません。

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