「日本一のモグラ駅」に行くための特急とは? 国鉄型が“最後の力走” 乗った人も力走が必要!?
JR東日本は、毎年春から夏にかけて、高崎線・上越線で臨時特急「谷川岳もぐら」を運転しています。臨時列車ながら観光列車のような「乗るだけで楽しめる」列車となっていますが、かなり異色の特急でもあります。
春から夏にかけて運転される特急「谷川岳もぐら」
JR東日本は、毎年春から夏にかけて、高崎線・上越線で臨時特急「谷川岳もぐら」を運転しています。この列車は、「日本一のモグラ駅」として知られる土合駅(群馬県みなかみ町)に長時間停車し、駅を見学することができる異色の特急。「谷川岳ループ」と合わせて運転されており、「乗るだけで楽しめる」列車となっています。
「谷川岳もぐら」「谷川岳ループ」は、いずれも大宮~越後湯沢間で運転。下り越後湯沢行きは「谷川岳もぐら」、上り大宮行きが「谷川岳ループ」として設定されています。
今や貴重な存在の185系で運行される「谷川岳もぐら」に乗車してみました。乗車したのは、「春の臨時列車」として2024年6月に設定された列車。始発駅となる大宮駅は7番線からの発車となります。ホームに列車が入線してきた時点で、多くの注目を集めていました。
車内は窓側が埋まる程度の乗車率で、鉄道ファンと思しき人が多めです。家族連れも見かけました。185系の非常に珍しい特徴は、特急車両にも関わらず窓が開閉できること。この列車でも、実際に窓を開けて風を感じながら風景を楽しんでいる人がいました。
列車は国鉄型ならではの重々しいモーター音を響かせて高崎線内を快走。かつて185系で運行されていた特急「草津」「水上」を彷彿とさせます。
そうこうしているうちに、関東平野を抜け、水上駅に到着。ここではドアは開きませんが、運転停車となります。水上を出て群馬・新潟県境に近づくと、これから通過する新清水トンネル(約1万3500m)を紹介する車内放送が入り、まるで観光列車のようです。
大宮駅を発車してから約2時間で、この列車の“お目当て”のひとつである土合駅に到着しました。
「谷川岳もぐら」はここ土合駅で30分も長時間停車します。地中のホームから地上まで462段もの階段を登る必要があり、駅から出るのにおよそ10分も要す構造が“モグラ駅”の所以です。
ホームに降りるとヒンヤリ涼しく、すぐに地上まで続く長い階段が現れます。所々に地下水が湧いて濡れているため、滑らないように注意しながら上っていきます。
階段いつ終わるの……で、さらに戻るの!?
トンネル内にある地下ホームと駅舎の標高差は約70mもあり、階段の途中には休憩できるようにベンチまであります。土合駅が開業した当初、ホームは地上だけにありましたが、1960年代に上越線が複線化された際、下り線が新清水トンネルとして設けられたため、このような標高差が生まれることになりました。
階段を上りきると、さらに24段の連絡通路階段(長さ143m)があり、ここを通り抜けてようやく地上の改札口に到着しました。地上にある駅舎は、谷川岳をモチーフとした三角屋根となっています。
下りホームから地上改札までの往復に約20分を要するため、引き続き越後湯沢まで乗車する場合、30分の長時間停車でも地上部分を見学する時間はあまりありません。駅構内の見学はギリギリとなる点は注意が必要です。ただ、土合駅に「谷川岳もぐら」で到着し、「谷川岳ループ」で戻るのであれば、ゆっくりと見学できます。
越後湯沢から大宮行きの「谷川岳ループ」は、地上に位置する土合駅の上りホームに到着します。その後、急勾配を緩和するために線路を一周させるループ線を通り、車内や湯檜曽駅ホームから、「これから走る線路」や「これまで走ってきた線路」を見ることができます。
土合駅に停車する普通列車の本数は少なく、定期列車は10本しかありません。この「谷川岳もぐら/ループ」を利用すれば、停車時間を活用して駅の見学を効率的に楽しむことができます。
「谷川岳もぐら/ループ」は今後、2024年7月20日(土)・21日(日)、9月7日(土)・8日(日)、9月28日(土)・29日(日)に運転される予定。7月中の使用車両は国鉄型の185系ですが、9月からE257系に変更されます。8月以降、185系は臨時列車に充当される予定がなく、臨時特急としては最後の力走になるかもしれません。
06/30 15:12
乗りものニュース