「なんちゃってライドシェア」のままじゃダメ! 法整備求めるデジタル相に国交相“土俵に上がらず” 対立鮮明に

日本版ライドシェアが解禁され、2種免許不要でタクシーによる旅客運送が可能になったばかりですが、河野太郎デジタル相はライドシェアに関する法制度のさらなる踏み込んだ検討を斉藤鉄夫国交相に求めています。ただ意見の対立は鮮明です。

「脱・日本版ライドシェア」は不要? 国交相

 2024年5月27日16時、斉藤鉄夫国土交通相と河野太郎デジタル行政改革相の話し合いが、デジタル庁で行われました。いわゆるライドシェアにタクシー会社以外の参入を認めるかどうかについて、岸田首相は5月中に論点を整理し報告するよう関係閣僚に指示しており、残された時間がわずかとなったためです。

 約20分の意見交換で、両者の一致と不一致が明確になりました。

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斉藤国交相(右)と河野デジタル相(中島みなみ撮影)。

 最も決定的な違いは、ライドシェアのアプリなどを運営するプラットフォーム事業者が直接的に運転手を雇用することなどについて、新たな法整備の必要性を感じているか否かです。斉藤国交相は同日、意見交換後に行われた囲み取材で、こう明かしました。

「現在、我々が行っている日本版ライドシェア、また公共型ライドシェアで移動の足の不足が解消されるのであれば、プラットフォーマー型のライドシェア、新しい法整備は必要ないと、このように私たちは考えております」

 日本版ライドシェアとは、道路運送法第78条第3号に基づく「自家用車活用事業」のことです。2種免許を持たないドライバーが自家用車などを使って送迎を行いますが、ドライバーはタクシー事業者の運行管理のもとで有償運送を実施しなければなりません。また、公共型ライドシェアは、交通の不便な地域で自治体などが主体となり同じように有償運送を展開する道路運送法第78条2号に基づく「自家用有償旅客運送」です。

 両者の食い違いは、制度改革によってタクシードライバーを増やし、移動の足を確保、その効果検証を行った後に、それでも不足がある場合には、新たな段階に入るべき――という斉藤国交相に対して、河野担当相は効果検証を待っていては対応が後手に回る、平行して法整備を検討すべき――と主張している点です。

 今回の意見交換では、河野氏からプラットフォーム事業者にもライドシェアを担わせるべきということは言及されなかったと言います。むしろ、そのキーワードを出したのは、斉藤氏でした。

「まずは国会での多くの議論の通り、担い手・移動の足の不足解消という観点から、丁寧に十分な時間をかけてモニタリング検証していくことが必要ではないか、このように申し上げました。そして率直に申し上げまして、プラットフォーマー型のライドシェア事業を導入すると何十年もかけて培ってきた公共交通の適正な事業運営や、運転者の労働環境に大きな影響が生じるので、プラットフォーマー型のライドシェア事業は導入しないで済むことがベストであると、わたくしは考えると、このように申し上げてきた」

でも「バージョンアップは直ちに」

 国土交通省には、タクシーの規制緩和により長時間労働と低賃金の問題が生じた過去の苦い経験があります。2009年に成立した改正タクシー特別措置法によって改善しつつありますが、今もその途上という認識です。4月にスタートした新制度から2か月足らずで法制度の検討に入れば、新制度による担い手不足解消の意欲が削がれて、タクシーによる旅客運送そのものが立ち行かなくなる、という苛立ちすら感じさせます。

 さらに斉藤国交相は河野担当相に、こう話しています。

「大きな目的は、地域の移動の足不足の解消でございます。今の取り組みによって移動の足の不足が解消されるのであれば、それが目的なのではないか。このようにも申し上げました。したがいまして、答申や閣議決定において、法制度については言及しない。このようにしたいと考えていると申し上げてきたところでございます」

 ただ、現状でも判明している都市部の雨の日需要や、万博を想定した大規模イベントの需要に対しては、「日本版ライドシェアや公共型ライドシェアについて、前向きなバージョンアップを直ちに開始したいと思います」と斉藤氏は話しています。

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タクシー運転手不足はライドシェア解禁後も顕在化している。写真はイメージ(画像:写真AC)。

 ライドシェアのほかに、河野担当相は「自動運転の社会実装の加速化も進めるべきである」という発言をしていますが、この点については斉藤国交相との同意をみました。

 しかし、法制度についての検討について意見の隔たりは埋まらず、両者は引き続き調整を続けるとしていますが、国交省側は、そもそも法制度に言及をしないのだから、モニタリング検証の結果以前に話し合いが進むことはないと考えているようです。

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