【おでかけ】アートとレトロ建築をめぐる、小さなおさんぽ旅【文京編】
文京区の音羽・関口・白金台エリアは、神田川沿いに広がる閑静な住宅街。 江戸時代に肥後藩主細川氏の大名屋敷があった歴史のある場所で、鳩山家や田中角栄の私邸もあった一等地です。 名建築やアートスポットなど、歩いて回れる範囲に見どころが点在しているので、おさんぽ気分でホッピングするのがおすすめです。
【画像をみる】アートとレトロ建築をめぐる、小さなおさんぽ旅【文京編】ステンドグラスが素敵! 鳩山会館で可愛いデザインを探す
まずは丘の上にある名邸・鳩山会館へ。音羽通りにあるゲートを入り坂道を登ると、木立に囲まれた洋館が姿を現し、まるでヨーロッパにタイムスリップしたかのようです。
建物は内閣総理大臣を務めた鳩山一郎の私邸として、大正13(1924)年に造られたもの。
設計したのは、2010年に取り壊された旧歌舞伎座や、丸の内に現存する明治生命館などを手掛けた岡田信一郎です。
2階建ての邸内は、政治の場となった応接室、庭園に臨むサンルーム、食堂、大広間など、優雅&レトロな装飾が当時の趣のままに保存されており、誰でも見学が可能です。
特に注目してほしいのは、邸内の至る所にちりばめられた美しいステンドグラスの数々!
左上:階段の踊り場にある「法隆寺 五重塔」、右上:応接間にある鳩のステンドグラス、左下:食堂の欄間に施された「ライチの実」、右下:エントランスにある鳩のステンドグラス
鳩や花鳥風月など、和洋折衷のデザインが目を引くステンドグラスは、大正時代以降活躍した工芸家の小川三知によるものです。
特に圧巻なのが、2階へと続く階段の踊り場にある法隆寺の五重塔を描いた作品。
五重塔の部分はガラスを二枚重ねにし、立体感が演出されているそう。
そのほかにも、各部屋に色々なデザインのステンドグラスがあるので、ぜひ自分のお気に入りを探してみて。
2階には、以前寝室だった空間を平成8年に改装した大広間があります。
明治生命館を模した木組みの床が美しく、窓からは90品種ものバラが植えられたイギリス式庭園を望みます。
館内には鳩山一郎や妻・薫の愛用品を展示する記念室も。美しい調度品の数々を鑑賞しましょう。
施設概要
鳩山会館(はとやまかいかん)
所在地:東京都文京区音羽1-7-1
アクセス:有楽町線護国寺駅または江戸川橋駅から徒歩約8分
開館時間:10:00~16:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(祝日の場合翌日)、1~2月、8月
観覧料:一般 600 円/学生300 円
公式サイト:https://www.hatoyamakaikan.com/
お問い合わせ:03-5976-2800
※館内は一部撮影禁止
丹下健三氏の美建築にうっとり。東京カテドラル聖マリア大聖堂へ
次の目的地である東京カテドラル聖マリア大聖堂へは、鳩山会館から鳥居坂を登って徒歩10分ほど。
目白通りへたどり着くと、東京カテドラル聖マリア大聖堂の優美な外観が姿を現します。
設計を手掛けたのは、世界的な建築家・丹下健三。広島平和記念公園や東京都庁などを代表作に持ち、日本のモダニズム建築に大きな影響を与えた人物です。
聖堂の外観は8面の曲線を描く壁で構成され、上空から見ると大きな十字架を形作っているそう。
高さ61.68mの鐘塔には、ドイツから輸入された4つの鐘が備えられ、日曜日の10時と12時に鐘の音を響かせます。
東京カテドラル聖マリア大聖堂は、明治32(1899)年に神学校の付属聖堂として建てられたことに端を発し、大正9(1920)年に東京大司教座聖堂になりました。
かつて木造ゴシック様式だった建物は空襲により焼失してしまいますが、ドイツのケルン教区の支援によって再建され、昭和39(1964)年に現在の建物が竣工したそう。
聖堂の内部に一歩足を踏み入れると、外からは想像もつかない荘厳な大空間が! 祭壇はキリストによる最後の晩餐の食卓を模しており、壁面の大理石を通して差し込む黄金色の光が十字架を浮かび上がらせています。
左上:イタリア製のパイプオルガン、右上:飴色に輝く木製の聖歌隊席、左下:ポーランドの教会から寄贈された聖遺物などを展示、右下:カトリック教会の儀式、十字架の道行きに使われる「留(りゅう)」
聖堂内部は、ミサや一部の礼拝のとき以外は、信徒でなくても自由に見学が可能。
祭壇に向かって並ぶ長椅子に座り空間美を楽しんだり、堂内の装飾を見学して回ることができます。
教会用のオルガンとしては日本最大と言われるパイプオルガン、ミケランジェロのピエタ像の原寸大レプリカ、ポーランドやドイツの教会から寄贈された聖遺物などが見どころ。地下には、聖堂を建築した丹下健三の遺骨が安置されている納骨堂もあります。
聖堂の入口にはボックスがあり、任意の金額で教会維持のための献金ができます。
献金をすると、聖書の一節を記した小さな巻紙をもらうことができるので、どんな言葉が出るか試してみてはいかがでしょうか。
聖堂を出ると見えるのが、明治44(1911)年にフランス人宣教師が作ったという「ルルドの洞窟」。フランス南西部の街ルルドにある、霊泉が湧く洞窟と同じ大きさで再現されたものだそう。
小さな聖母マリア像が安置され、信徒の祈りの場となっています。
東京カテドラル聖マリア大聖堂では、土曜日に結婚式が行われることも。なんと、式の間でも聖堂に入ることができるそうなので、パイプオルガンやソリストによる聖歌を聴くチャンスかも!
施設概要
東京カテドラル聖マリア大聖堂(とうきょうカテドラルせいマリアだいせいどう)
所在地:東京都文京区関口3-16-15
アクセス:有楽町線江戸川橋駅から徒歩約15分
開堂時間:9:00~17:00
※主日のミサ(日曜日の8:00~14:00)の時間帯は見学不可
休館日:なし
観覧料:献金(任意)
公式サイト:https://catholic-sekiguchi.jp/
お問い合わせ:03-3941-3029
※聖堂内は撮影禁止
ホテル椿山荘東京でプチラグジュアリーなひと休み
東京カテドラル聖マリア大聖堂の向いにあるホテル椿山荘東京は、目白台の台地の地形を活かしたロケーションが素敵。客室やレストランなど至る所から緑豊かな庭園を見下ろします。
ヨーロッパ調のクラシックな館内には、伝統工芸品や調度品が飾られています。
好きなデザートとコーヒーまたは紅茶を選べるデザートセット2,900円
「ル・ジャルダン」は、ラグジュアリーな雰囲気を気軽に味わえるロビーラウンジ。ランチ、ティータイム、ディナーと色々なシーンで利用できるのですが、おすすめは庭園を眺めながらのんびりできるティータイムです。
ホテルシェフが作る極上デザートをノリタケの食器で楽しめて、気分はまるでお姫様です!
「ル・ジャルダン」では、本格的なイギリス式アフタヌーンティー(予約制)も人気なので、ぜひ試してみて。
ひと休みした後は、ホテル内のショップでお土産をチェック。
ショップ「セレクションズ」では、ホテルメイドのケーキや焼菓子、チョコレートなどを販売しています。
購入したのは、椿山荘の「椿」にちなんだオリジナル缶のふきよせです。
紅白の椿をかたどったアイシングクッキーや金平糖などの詰め合わせで、食べるのがもったいなくなるほどの可愛さ!
ホテル椿山荘東京は、明治時代の軍人・政治家である山縣有朋が造った私邸と庭園が前身となっています。
目白台地の崖線や緩傾斜、清流が流れる沢を利用した庭園は、当時から名園として名高いものだったとか。
まるで森のように鬱蒼と木々が茂る園内には、ひょうたん型の池や滝、竹林などがあり、ちょっとしたハイキング気分です。
点在する約20体の羅漢石は、江戸時代中期の画家・伊藤若冲の下絵による五百羅漢の一部だそう。
30分に1回、人工的に霧を発生させる「東京雲海」というユニークな演出でも人気です。
施設概要
ホテル椿山荘東京(ホテルちんざんそうとうきょう)
所在地:東京都文京区関口2-10-8
アクセス:有楽町線江戸川橋駅から徒歩約10分
営業時間:ロビーラウンジ「ル・ジャルダン」 11:00~22:00(LO21:00)、土・日曜日・祝日は 10:00~ ショップ「セレクションズ」9:00~20:00(生菓子やパン類の販売は10:00~18:00)
定休日:なし
公式サイト:https://hotel-chinzanso-tokyo.jp/
お問い合わせ:03-3943-1111(代表)
永青文庫で和のアート鑑賞
建物は旧細川侯爵家の家政所(事務所)として建てられた昭和初期のもの
最後に訪れたのは、ホテル椿山荘東京のすぐそばにある永青文庫。江戸時代の熊本藩主・細川家の江戸下屋敷跡の一角にあり、池泉回遊式の名園・肥後細川庭園に隣接しています。
永青文庫は16代当主・細川護立が昭和25(1950)年に設立した美術館で、細川家伝来の美術工芸品・歴史資料、護立の蒐集品など、日本や東洋の古美術を所蔵しています。
コレクションは国宝8件、重要文化財35件を含む、約9万点以上。毎年、膨大な所蔵品のなかからテーマを設けて展覧会を開催しています。
館内では護立の洋書コレクションの一部も見ることができます。
現在、秋季展「信長の手紙 ―珠玉の60通大公開―」を開催中。
永青文庫では、細川家伝来の織田信長の手紙を59通(すべて重要文化財)を所蔵していましたが、2022年に新たに1通発見されたそう。
展覧会では、室町幕府滅亡から本能寺の変までの信長の激動の10年間にフィーチャー。60通の手紙とともに、配下の細川藤孝・忠興ゆかりの武具や工芸品も展示しています。
鑑賞後は、隣接する肥後細川庭園を散策したり、庭園の敷地内にある松聲閣(かつての細川家の学問所)を見学するのもおすすめです。
施設・開催概要
▼施設情報
永青文庫(えいせいぶんこ)
所在地:東京都文京区目白台1-1-1
アクセス:都電荒川線早稲田駅から徒歩約10分または有楽町線江戸川橋駅から徒歩約15分
公式サイト:https://www.eiseibunko.com/
お問い合わせ:03-3941-0850
▼開催概要
秋季展 信長の手紙 ―珠玉の60通大公開―
会期:2024年10月5日(土)~12月1日(日)
開館時間:10:00~16:30 (入館は16:00まで)
休館日:月曜日(ただし11月4日は開館し、11月5日は休館)
観覧料:一般1000円、シニア(70歳以上)800円、大学・高校生500円
10/31 07:30
イロハニアート