日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『動物界』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。人間が動物になる近未来を描く、"突然変異"スリラー!

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『動物界』

評点:★3点(5点満点)

©2023 NORD-OUEST FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINÉMA - ARTÉMIS PRODUCTIONS.


©2023 NORD-OUEST FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINÉMA - ARTÉMIS PRODUCTIONS.

理由なく動物化していく人々

人間が動物になる映画、あるいは動物が人間になる映画、はたまた人間と動物のハイブリッドが生まれる映画の歴史は長く、バリエーションも無数にある。

そんな中、本作は「世界中で、なぜか一部の人間が次々といろんな動物に変わっていってしまう」という一種のパンデミック状態を描いていて興味深い。変身する動物も哺乳類や鳥類、さらに爬虫類や頭足類と豊富で、ビジュアル的にも楽しい。

が、タコや蛇も含め本作に登場するほぼ全ての「人間・動物」ハイブリッドは過去の映画に前例があるので、そこに本質的な目新しさがあるわけではない。動物への移行もおそらく数ヵ月程度かかる感じなので、メリメリと人間が動物に変身していくような、一般的な動物変身映画とは見せ場の方向性も異なっている。

非常に独特に感じられるのは、本作において「人間→動物」の移行が、文字通り「人間が動物に徐々に変わっていく」というだけのこととして描かれており、そこにこれといった寓意性が見いだせないところにある。

誰かがタコになり、誰かが鳥になり、誰かが狼に、それぞれ理由なく変化する......という極めてランダムな事態に何らかの象徴性を持たせるのが難しいのは分かるのだが。

STORY:人間が動物に突然変異する原因不明の奇病が蔓延。フランス政府は患者を"新生物"として拘束し、施設に隔離していた。妻が新生物となった夫とその息子は、彼女の移送先の南仏に移住するが、そこで思いがけぬ事態に遭遇する

監督:トマ・カイエ
出演:ロマン・デュリス、ポール・キルシェ、アデル・エグザルコプロスほか
上映時間:128分

全国公開中

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