日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが『ゴンドラ』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。実在のゴンドラが舞台の「セリフなし」ラブストーリー!

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『ゴンドラ』

評点:★3.5点(5点満点)

©VEIT HELMER-FILMPRODUKTION,BERLIN AND NATURA FILM,TBILISI


©VEIT HELMER-FILMPRODUKTION,BERLIN AND NATURA FILM,TBILISI

可愛らしく美しい絵本のような「セリフなし映画」

音楽や効果音はあってもセリフがない、という一風変わったスタイルのファンタジックな作品である。

これまでも同じ手法の作品を作ってきた監督は「私の映画は『サイレント映画』ではなく『セリフなし映画』なんだ」と語っているが、こういう「セリフなし映画」の手法はアート系アニメーションではしばしば目にするところである。

それもあって、語義矛盾を承知で言えば、本作はまるで「実写版のアート・アニメーション」を観ているような感覚をもたらすものとなっている。

ジョージアの山脈部に渡された長い長いロープウェイをとらえた映像は「まるで絵のように」美しく、そこで働く二人の女性乗務員が往復のゴンドラがすれ違う一瞬、さまざまな趣向を凝らして交流するさまは詩的であり絵本のようでもある。

二人がゴンドラを船や飛行機に見立てたり、プレゼントを送ったり、音楽を奏でたりしてつかの間のコミュニケーションを楽しむところは観ていてホッコリさせられるし、限定的なシチュエーションを使いつつ広い世界へと想像力を広げるように出来ていて、クレバーで可愛らしい。

丁寧に描かれた小さな美しい絵本をうっとり眺めているような気分にさせられる映画である。

STORY:イヴァは村のゴンドラの乗務員として働き始める。もう一台のゴンドラの乗務員はニノ。ふたりはゴンドラに"衣替え"させたり、奇想天外なやりとりを楽しむが、駅長は激怒し、地上の住民も巻き込んだ騒動になっていく

監督・脚本:ファイト・ヘルマー
出演:ニニ・ソセリア、マチルド・イルマンほか
上映時間:85分

全国公開中

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