「着る」を習って人生が変わった!30、40代は3人の息子を育て、おしゃれと無縁。50代で一念発起、「片付け」→「着る学校」でイライラが消えた

受講生・さっちゃん(写真提供:ご本人 以下全て)
ドラマスタイリストの西ゆり子さんが、一般女性に向けて2023年6月に開講した『着る学校』。好きな服を着るための基礎知識を学び、自分らしいおしゃれを楽しめるようになると、人生がどのように変わっていくのか。連載2回目からは、受講生の方々の学びを紹介します。(構成◎内山靖子 全5回連載/第2回)

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【写真】さっちゃんお気に入りアイテム

「着る」ことをもっと楽しみたくて

校長・西ゆり子さんのインタビューはこちら

初めて、西先生の存在を知ったのは、ヘアメイクアップアーティストの化け子さんのYouTubeに、先生がゲストとして出演したときでした。「なんて素敵な人がいるんだろう!」って、そのときの衝撃は今でも忘れられません。

それまでも、テレビの画面やファッション雑誌でおしゃれな人は大勢目にしてきましたが、自分がその人と同じ服を着たいのか?と聞かれたら、答えはノー。確かに、その人はおしゃれだけど、「私はそういう恰好をしたいわけじゃないし」と、とくに興味を感じることもありませんでした。

でも、西先生の姿を見たときに「私もこういうふうになりたい」と憧れる気持ちが俄然湧いてきたんです。なぜかと言えば、先生の着こなしは、70代という年齢にまったくとらわれていない。また、ファッション雑誌に載っているままのコーディネートではなく、自分なりに様々なアレンジを工夫され、服を着ることを存分に楽しんでいらっしゃる。

50代を迎え、服を着ることをもっと楽しみたいと思っていた私が求めていたものはまさにこれだ!と。そこで、『着る学校』のレッスンを受けることに決めたのです。

受講前のさっちゃん

30~40代は、おしゃれとは無縁の生活

50代になったばかりの私が、なぜ「着る」ことをもっと楽しみたいと思ったのか。それは、30~40代はおしゃれとはまったく無縁の生活を送ってきたことが影響しているのかもしれません。28歳で長男を出産し、その後、次男、三男が次々と生まれ、30~40代は子育に追われる毎日で、新しい服を買うヒマなんていっさいなくて。子育て中に着ていたのは「子どもたちと公園に行ける服」か「汚れが目立たない服」ばかり。デザインや色なんて考えている余裕もまったくありませんでした。

正直な話、その頃は、精神的にもいつもイライラしていましたね。58平米の手狭な家の中に男の子が3人ですから、片付けても片付けても家の中は荒れ放題。家事や育児は専業主婦である私の仕事と気負ってしまって、独りで意地になってしまい、夫婦の関係も上手くいっていませんでした。コミニュケーションが苦手な私ひとりだけでは、息子たち3人分の学校行事やPTAの催しの準備なども追いつかず、にっちもさっちもいかなくて……。とはいえ、誰にも相談できない。だったら、自分を変えるしかないのだろう。そう思っていたときに出会ったのが近藤麻理恵さんの『人生がときめく、片付けの魔法』という本。そこに書いてある通りに片付けてみたところ、本当に家の中が片付いたんですよ。そこで、この片付け法をもっと世の中に広めたいと、こんまりさんの講座を受講して、こんまり流(R)片付けシニアコンサルタントの資格も取りました。

ただ、服に関しては、片付けした直後のクローゼットには大満足なのですが、だんだん「もっとときめきたい!」という気持ちもわいてきてしまったのです。なのに、片付け後は「無駄なものを増やしたくない」という思いが勝ってしまい、「失敗しない服を選ぼう」という意識が常に働いてしまって。その結果、新しく買う服はいつも黒、グレー、紺、白という無難な色の服ばかり。こんまりさんのメソッドに沿って、自分では「ときめく服」を選んでいるつもりでも、私自身がどうしても無難な色を選んでしまい、「この服じゃ、ワクワクできない」というモヤモヤ感がずっと胸の奥に溜まっていたのです。

モノクロの世界がカラフルに!

そんな私が『着る学校』に入学して以来、じょじょに変わっていきました。「カラフルな色の服が着られないんです」と訴えたところ、「じゃあ、最初は靴下から色を取り入れてみたら?」と、西先生がアドバイスしてくださって。そこで、恐る恐る買ったのが紫色の靴下でした。紫と言っても、遠目から見たら黒にしか見えないくらいのダークパープルだったのですが、それでも初めてその靴下を履いたときは緊張してドキドキしちゃって(笑)。その勢いで、2足目は黄色の靴下を買いました。たかが靴下ですが、黄色を身に着けるだけでも、私にとっては大チャレンジです。その当時、黄色の靴下を履いて撮った写真を見ると、今にも泣きそうな顔をしています。

西先生のアドバイス前と後のさっちゃん

それでも、西先生や同じ講座を受講しているメンバーのみんなから「いいじゃない」「すごく似合う」と褒めていただいて。その言葉に勇気をもらって、トップスもボトムスも、それまでのワードローブにはまったく存在しなかった明るい色の服を着られるようになりました。極めつけは、生まれて初めて水色のロングコートを買ったこと。他の受講生のみんながカラフルな色の服を着ているのに憧れて、「今年の冬は、私も絶対にカラフルなコートを着るんだ!」と、清水の舞台から飛び降りるような気持で。

生まれて初めての水色のロングコート

もちろん、最初は上手く着こなせませんでした。足首くらいまで丈があるロングコートなので、羽織ると全身が水色一色になっちゃって、「やっぱり、私がこの色を着るのは無理かも」と、一時は弱気になりました。でも、「じゃあ、袖をまくってみたら?」という西先生のアドバイスに従って両方の袖をまくってみると、中に着ているトップスの色がアクセントになり、水色の分量が減ってスッキリ見える。おかげで、その水色のコートを着るのにも慣れたある日、街中を歩いていたときに、「私、水色のコートを着ていてよかった!」と心の底から思えたんですね。曇り空の寒い日で、周りの人はみんな暗い顔をして、暗い色のコートを着て歩いている。その中で、自分だけが明るい色のコートを着ていたことで、少しだけ街の風景を明るくすることができたかもしれないなって。そんなふうに思えるようになったのも、それまでモノクロだった私の世界が明るい色で満たされていったからだと思います。

華やかな色を着こなすさっちゃん

黄色の靴下で離婚へ踏み出す

明るい色の服を着るようになってから、私自身の気持ちもどんどん明るくなっていきました。実は、40代の頃から夫とは離婚しようと考えていました。私は家にいるのが好きなので、本音を言えば、専業主婦として生きていたかった。かと言って、このまま夫とずっと一緒に生きていく人生はあり得ない。彼と2人で過ごす未来を想像したら、暗い気持ちにしかなれなかったのです。

とはいえ、離婚に向けて一歩を踏み出すには勇気が要りました。心の準備はしていても、実際に踏み出すとなると、その一歩が重くて前に進めない。そんな私の背中を押してくれたのが黄色の靴下だったのかもしれません。黄色の靴下を履いて冒険できるようになったおかげで、服だけでなく、この先の生き方に関しても、無難な人生を選ぶのはつまらないと思えるようになれたのでしょう。夫とはすでに別居して、もうすぐ籍が抜ける予定です。ここから本当の自分の人生が始まるのだと、今はすがすがしい気持ちでいっぱいです。

社会人となった長男はすでに独立し、今は下の2人の息子たちと一緒に暮らしていますが、母親の手はほとんど必要としない年齢です。精神的に自由になったこれからは、自分が心底ワクワクする服を着て堂々と街を歩きたい。片付けコンサルタントの仕事も広げていって、自分のアイディアを形にしたオリジナルの家庭用品の開発もしてみたいと考えています。

レッスンの最初の頃に、「10年後はもっといい女になって、自分も周りの人も幸せにしよう!」とおっしゃる西先生の言葉に胸を打たれました。その言葉をお借りすれば、私は今、自分が10年前に夢見ていた自分にようやくなれたところです。そして、次の10年をもっと自分らしく、前向きに生きていくためのスタートラインに立っている。この先の人生に期待と希望が持てるようになったのも、着る服を変えたおかげかもしれません。

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