糖尿病治療のSGLT2阻害薬、肥満でないと効果が薄い? 京大など

京都大正門と時計台

 糖尿病治療でこの10年ほどで広く使われるようになった「SGLT2阻害薬」について、肥満でない患者では、脳卒中や心筋梗塞(こうそく)などの発症を抑える効果が統計上、確認できなかったと、京都大や米ハーバード大など国際共同研究チームが医学専門誌に発表した。全国健康保険協会(協会けんぽ)の約28万人分の健診や診療報酬明細書(レセプト)のデータを分析した。研究チームでは今後、肥満でない患者でこの薬が効果的な人とそうでない患者がいるのか、検証を進める。

 SGLT2阻害薬は糖分を尿から出すことを促し血糖を下げる比較的新しいタイプの薬で、日本では2014年から使われている。ほかの治療薬に比べて脳卒中や心筋梗塞などを予防する効果が数多く示され、いまでは第一選択薬の一つとして広く利用されている。

 ただ、過去の大規模な臨床研究は、体格指数のBMI(体重〈キロ〉÷身長〈メートル〉÷身長〈メートル〉)が平均30を超えるような肥満の糖尿病患者を対象としていて、日本に多いBMIが25未満の患者に対しても有効なのかは科学的な証拠が十分でなかった。

 研究チームは協会けんぽのデータベースを使い、2015~21年度にかけて、2型糖尿病で、SGLT2阻害薬を使っている患者のグループと、糖尿病治療で日本で最も利用されているDPP4阻害薬を使っている患者グループの計約28万人(平均55~56歳、がん患者や透析患者を除く)を平均27.5カ月追跡し、死亡もしくは脳卒中と心筋梗塞、心不全を発症した割合を比べた。二つの患者グループは同数で、年齢や性別、喫煙歴、BMI、血糖値などで偏りを出ないようにして選んだ。BMIが25未満の肥満でない患者は全体の約3割を占めた。

 その結果、全体では8165人が死亡もしくは脳卒中と心筋梗塞、心不全を発症。SGLT2阻害薬を使った患者はDPP4阻害薬の患者に比べ死亡・発症を8%ほど減らす効果が認められた。

 だが、BMIによって大きくわかれ、25以上では効果があり、BMIが増加するにつれて効果も高くなったが、25未満では効果は統計上は認められなかった。

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