サウナは“命”まで「ととのう」…あの重病のリスクも減らす驚くべき健康効果とは〈医師が解説〉

糖質制限ダイエットは絶対やってはいけない3つの理由…医師が解説する“納得”しかないその根拠〉から続く

サウナは一過性のブームにとどまらず、多くの人の趣味・習慣として定着した。毎週のようにサウナに出かけ、「ととのって」いる人も多いだろう。そして、サウナの効果は心理的なものにとどまらない。最新の研究によって、サウナや入浴は深刻な病気のリスクを下げることが分かってきた。

【図でチェック】サウナの驚くべき健康効果

UCLA准教授で医師の津川友介氏の著書『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より一部抜粋・再構成し、サウナの驚くべき健康効果を解説する。

「入浴」は脳卒中・心筋梗塞のリスクを下げる

そもそも、入浴には健康上のメリットがある可能性が示唆されている。

その1つが痛みの緩和である。例えば、線維筋痛症(身体のあちこちの広い範囲に痛みが出て、身体のこわばり、疲労感、不眠、頭痛、うつ気分などが生じる原因不明の病気)の患者において、浴槽入浴することで痛みが緩和されたという研究結果がある。

変形性関節症の患者においても浴槽入浴が痛みを改善する可能性が示唆されている。これらの研究の質は必ずしも高くないものの、実際に症状が改善するか試してみる価値はあると考えられる。他のタイプの痛みでも浴槽入浴によって改善する可能性がある。

また、浴槽入浴には別のメリットも存在する。浴槽入浴やサウナ浴を行うと血管が拡張し、その結果として血圧が下がる。水圧によって血流も改善する。これらの作用によって、脳卒中や心筋梗塞などの脳や心臓の病気のリスクが下がるという報告がなされているのだ。

2020年に日本で発表された研究では、約3万人の年齢40~59歳の人を1990年から2009年まで追跡し、入浴回数と脳卒中や心筋梗塞の発症率との関係を評価した。この研究の結果、頻繁に入浴する人の方が、あまり入浴しない人よりも脳卒中や心筋梗塞を起こす確率が低いことが報告されている。

サウナの驚くべき健康効果

日本では、数年前からサウナがブームだ。サウナでとても気持ちよくなった状態を「ととのう」と言ったりする。実はサウナは体調まで「ととのう」ことが分かっている。

フィンランドの人は数千年前からサウナ(ドライサウナ)に入っており、平均すると週に2~3回サウナに入っていると言われている。二〇一八年に発表された複数の研究結果をまとめた論文では、サウナ浴は血圧を下げ、脳卒中や心筋梗塞などのリスクを下げ、心臓疾患による突然死のリスクも下げると報告されている。

この論文によると、これらの効果は身体が温まることによる血管への好影響や、コレステロール値の改善、炎症の抑制などによってもたらされている可能性もあるが、一方でサウナでリラックスするという精神的な要素が健康に良い効果を与えている可能性もあるという。サウナが心不全に良いという研究結果も複数ある。

入浴を気をつけるべき人

入浴がもたらす健康上のメリットについて説明してきたが、デメリットがないわけではない。

例えば、軽度の高血圧のある人ならば通常の入浴は問題ない一方で、不安定狭心症などの心臓の病気、コントロールされていない高血圧などがある人では、これらの病気を悪化させるリスクがある。

高齢者で血圧が低めの人では、浴槽入浴によって血圧が下がりすぎて、転倒してしまうリスクもある。こういったケースでは、熱すぎるお風呂や長時間の入浴は避けた方がよいだろう。

自分で判断する前に、適切な入浴方法に関してかかりつけの医師にぜひ相談してほしい。

また、特に冬場によく見られるが、乾燥肌でかゆみがある人の場合、熱すぎるお風呂に長時間つかることで、症状が悪化する可能性もある。

タオルなどで皮膚をごしごし擦って洗う人も要注意である。肌の汚れを落とすには、石鹼をよく泡立てて、手でやさしく洗うだけで十分である。お風呂はぬるめにして、入浴後にしっかりと保湿することが重要である。

それでも改善が見られない場合には、入浴時間を短くしたり、浴槽入浴ではなくシャワー浴にすることで肌の症状が改善することがある。

妊娠初期の女性も、熱い湯に長時間つからない方がよいとされている。1992年に発表された約2万3000人の妊婦を追跡調査した論文によると、熱いお風呂に定期的に入る習慣のある女性から生まれてくる赤ちゃんでは、神経の障害(無脳症や二分脊椎などの神経管閉鎖不全によって起こる病気)のリスクが約2.8倍高かったと報告されている。

また、感染症などによる妊婦の発熱でも胎児に障害が生じるリスクが高いという別の研究結果も存在し、妊娠中に母体の深部体温が高くなりすぎることが胎児の健康に悪影響を与えると考えられている。

安定期に入る妊娠12週までは熱い湯に長時間入ることは避けて、浴槽入浴するとしてもぬるめの湯にするのが良いと考えられる。なお、温泉や銭湯などの大衆浴場には前述に加えて感染症のリスクがあるので避けた方がよいとされている。

図/書籍 津川友介著『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より
写真/shutterstock

正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール

津川 友介

正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール

2024年10月18日発売
682円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4-08-744707-1

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●糖質制限ダイエットは死亡率を高める上、リバウンドしやすい
●サプリメントはほとんど気休め
●睡眠時間を1.5時間単位にすると良いというのは都市伝説
●サウナは心臓疾患による突然死のリスクを下げる
●ストレスとがんは関係ない
●加熱式タバコにも多くの有害物質が含まれている
●受動喫煙で毎年赤ちゃんも含めた1万5000人が亡くなっている
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●花粉症を根治できる治療法がある
●かぜに抗生物質は無意味
●がんを予防するワクチンがある
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人生100年時代、病気にならずに健康に生きたい人必読の一冊。
(装画・ヤギワタル)

参考論文

*Harvard Health Publishing [https://www.health.harvard.edu/staying-healthy/take-a-soak-for-your-health]
*Ukai T et al. Habitual tub bathing and risks of incident coronary heart disease and stroke. Heart. 2020; 106(10):732-737.
*Laukkanen JA et al. Cardiovascular and Other Health Benefits of Sauna Bathing: A Review of the Evidence. Mayo Clin Proc. 2018;93(8):1111-1121.
*Källström M et al. Effects of sauna bath on heart failure: A systematic review and meta-analysis. Clin Cardiol. 2018;41(11): 1491-1501.
*Milunsky A et al. Maternal Heat Exposure and Neural Tube Defects. JAMA. 1992;268(7):882-885.
*Waller DK et al. Maternal report of fever from cold or flu during early pregnancy and the risk for noncardiac birth defects, National Birth Defects Prevention Study, 1997-2011. Birth Defects Res. 2018;110(4):342-351.

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