【リスト大公開】やせた人が食べていたもの、太った人が食べていたもの「太る野菜もある」研究で明らかになった衝撃の事実
〈健康に良い食べ物は野菜、魚、そして〇〇! ただし、NGな食べ方も。エビデンスに基づいた“積極的に食べたいもの”はコレだ〉から続く
摂取カロリーさえ減らせば、やせると思っている人は多いだろう。しかし同じ100kcalでも、いちごのショートケーキで摂取する場合と、野菜サラダで摂取する場合では体重への影響は当然違うのはご存知だろうか。
【リスト公開】太った人が食べていたもの、やせた人が食べていたもの
UCLA准教授で医師の津川友介氏の著書『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より一部抜粋・再構成し、エビデンスに基づいた「やせた人/太った人が食べていたもの」のリストを公開・解説する。
体重を確実に減らす科学的な方法
肥満は、2型糖尿病や脳梗塞・心筋梗塞、がんなどのリスクを上げることが分かっている。
皆さんもBMI(体格指数)という言葉を聞いたことがあるだろう。BMIは体重(㎏)を身長(m)の2乗で割って算出されたもので、肥満・痩せの指標として広く使われている。WHOはBMI25以上30未満を「過体重」、30以上を「肥満」と定義している。一方、日本肥満学会はBMI25以上を肥満と定義している。
例えば身長170㎝、体重が75㎏の男性なら、75÷(1.7m×1.7m)でBMIは25.95となり、肥満ということになる。
痩せすぎも病気のリスクが上がるが、肥満は病気の元となるのである。ダイエットは、美しさや見た目を良くする効果はもちろんであるが、健康の面でもとても重要である。
テレビをつけると数多くの「ダイエット法」に関する情報が溢れており、書店に行くと、どのようにすれば効果的に痩せることができるかというコツが書かれた本が山積みになっている。
それらの中にはきちんとエビデンスに基づいたものだけでなく、個人の経験に基づいていて他の人でも同様の結果が得られるのか不明なもの、そもそも痩せる要素のないデタラメなものまで含まれており、玉石混交の状況である。
効果のないダイエット法にお金や労力を投入することは無駄であるだけでなく、やり方を間違えると健康を害してしまう可能性すらある。効果的にダイエットするためにも、何が正しくて何が正しくないのか見分ける力が重要だろう。
書店で売れているダイエット本を見てみると、①斬新な方法で、②楽に痩せられるとうたっているものが多い印象を受ける。おそらくその方が話題性があって本が売れるからだろう。ダイエットの基本から言うと、摂取したカロリーよりも消費したカロリーの方が多ければ人間は痩せる。シンプルな「引き算」である。
確実に痩せたいのであれば、摂取カロリーを効果的に減らす方法か、もしくは消費カロリーを増やす方法を身に付けるべきなのであるが、あまりにも当然すぎて、もし「痩せたければ摂取カロリーを減らせ!」というタイトルの本があったとしてもおそらく誰も手に取らないだろう。
一番正しい内容の本が売れず、目新しくて話題性があれば内容が正しくなくても売れるというのは何とも皮肉なことである。
結論から先に伝えると、体重を減らすのが目的であれば、最も効果的なのは食事を変えることであり、運動はそれと比べると影響は小さいと考えられている。
大公開! 痩せた人が食べていたものリスト
摂取カロリーを減らせば痩せるとか、消費カロリーを増やせば痩せるという類の話はおそらく聞いたことがあるだろう。
でもよく考えてほしい。もし本当にカロリー摂取量のみで太るか痩せるかが決まるのであれば、100kcalをいちごのショートケーキで摂取しても、野菜サラダで摂取しても、理論上は体重への影響は同じになるはずである。
でも実際にこの2つが体重に与える影響が違うことを私たちは経験から理解している。カロリー計算を用いてダイエットをすることが間違っているのである。なぜならば同じカロリーや同じ糖質量であっても、体重への影響は違うからである。
ハーバード公衆衛生大学院の研究チームが行った研究を2つ紹介しよう。
1つ目の研究は、米国人約12万人を12~20年間追跡し、食生活の変化と体重変化の関係を評価したものである。4年ごとにデータを区切り、その期間における「食事の変化量(4年間で食事がどれくらい増減したか)」と「体重の変化量(同時期に体重がどれくらい変化したか)」の関係を解析した。
その結果、フライドポテトやポテトチップスの摂取量が増えている人ほど体重が増加しており、ヨーグルトやナッツの摂取量が増えている人ほど体重が減少していることが明らかになった。
ここで興味深いのは、似たような食材でも、加工方法の違いで体重への影響が正反対になるものがあることだ。
例えば、パン、パスタ、白米などの「白い(精製された)炭水化物」の摂取量が増えている人ほど体重が増加していたのに対して、全粒粉、玄米、オートミールなどの「茶色い(精製されていない)炭水化物」の摂取量が増えている人ほど体重が減少していた。
果汁100%のフルーツジュースの摂取量が多くなっている人ほど太っていたのに対して、(未加工の)果物の量が多くなっている人ほど痩せる傾向があった。巷では太ると言われているナッツの摂取量が増えていた人は実は痩せる傾向があり、最近日本で太らないと言われるようになってきた赤い肉(牛肉や豚肉のこと)の摂取量が増えていた人は実は太っていた。
太った人が食べていた野菜や果物は…
2つ目の研究は、同じ研究チームで、米国人約13万人を追跡し、摂取する野菜と果物の種類によって体重が変わってくるかを評価したものである。先ほどの研究では食事全体を評価していたのに対して、こちらはその中でも野菜と果物に絞ってより詳しく解析を行ったものである。その結果は、野菜や果物の種類によって体重への影響は異なるというものであった。
じゃがいも、とうもろこし、えんどう豆のようにデンプン質の多い野菜の摂取量が増えている人は、太る傾向にあることが分かった。
野菜の中でも、特に食物繊維が多く、グリセミック負荷(グリセミック指数=GI値に対象の食品に含まれる炭水化物の割合を掛け合わせた指標で、最近ではGI値よりも適切な指標であると考えられている)が低いものは痩せる傾向にあることが明らかになった。
具体的に痩せていた人が多く食べていた果物は、ブルーベリー、プルーン、りんご、梨、いちごなどであった。野菜に関しては、大豆、カリフラワー、ズッキーニ、サヤインゲン、ピーマン、ブロッコリーなどを食べていた人は痩せる傾向にあった。
これらはあくまで研究であり、ある食生活をしている人を追跡して、その人の体重がどのように変わったかを評価したものである。
総摂取カロリーだけでなく、運動量、1日のうち座っている時間やテレビを観ている時間、喫煙習慣、睡眠時間などのほかの生活習慣に関しては統計的な手法を用いて影響を取り除いている。
つまり、同じような生活習慣の人で、食習慣が違う人を比べているのである。これらに加えて2つ目の野菜と果物の研究では、食事に関する他の要因(野菜と果物以外の食事内容)の影響も統計的に取り除いている(2つ目の研究では果物や野菜の種類でカロリーそのものが変わってしまうため、総摂取カロリーの影響はあえて取り除いていない)。
これだけ洗練された統計手法が使われていても残念ながら完璧ではない。健康的な食生活をしている人と不健康な食生活をしている人とでは、運動や喫煙習慣など研究者がデータとして集めたもの以外の要素(そもそもの健康に対する意識など)も違うと考えられ、統計的手法ではこれらの影響を100%取り除くことはできないからである。
つまり、これらの研究からは自信を持って因果関係があると言うことはできない。それでもなお、太った人、痩せた人がどのような食事をしていたのかを観察することで参考にできることはたくさんあるだろう。食事の影響に関しては、個人差がある可能性もあるので、実際にご自分で食事内容を変えてみて、それで体重がどのように変化するかを見てみるのも良いだろう。
図/書籍 津川友介著『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より
写真/shutterstock
参考論文
*1 Mozaffarian D et al. Changes in Diet and Lifestyle and Long-Term Weight Gain in Women and Men. N Engl J Med. 2011;364 (25):2392-2404.
*2 Bertoia ML et al. Changes in Intake of Fruits and Vegetables and Weight Change in United States Men and Women Followed for Up to 24 Years: Analysis from Three Prospective Cohort Studies. PLoS Med. 2015;12(9):e1001878.
11/09 12:00
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