石破茂新総裁、厳しい安保環境下のかじ取り アジア版NATO、地位協定改定…実現未知数

自民党の石破茂新総裁は、中国やロシアによる軍事活動の活発化や北朝鮮の相次ぐ弾道ミサイル発射など日本周辺の安全保障環境が厳しさを増す中でかじ取りを担うことになる。総裁選では「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の創設や日米地位協定の改定など独自の安保政策を掲げたが、実現性は未知数だ。日米同盟を基軸に同志国との連携を深め、抑止力・対処力をいかに高めるか、手腕が問われる。

「安全保障の仕事を長く手がけてきた。日本の守りをきちんと確立していく」。石破氏は27日、総裁就任後初の記者会見で強調した。

石破氏は総裁選で、かねての持論であるアジア版NATOの創設を訴えた。NATOは米国や欧州各国などによる軍事同盟で、加盟国に対する攻撃を全加盟国に対する攻撃とみなし、集団的自衛権を行使することを規定している。

石破氏は、ウクライナがロシアの侵略を許したのは「NATOに加盟していなかったからだ」として、アジアにおける集団安全保障体制の構築を訴える。ただ、日本は集団的自衛権の全面的な行使を違憲としている。石破氏が唱える構想がNATOに倣うのであれば、憲法改正か政府解釈の変更が必要になる。

石破氏は「中国を最初から排除することを念頭に置いているわけではない」とも語っており、抑止対象も不明瞭だ。いずれにしても実現には相当な年月と政治的エネルギーを要する。

石破氏は日米同盟強化の一環として、米国に自衛隊の訓練基地を作る案も示している。現在、自衛隊の長射程ミサイルの発射訓練は広さの制約がある国内ではなく、主に米国で実施されている。米国内に常設拠点を設けることで効果的な訓練を円滑に実施する狙いがある。

ただ、費用対効果や自衛隊と米軍の一体化を懸念する声があり、これまで政府内では検討の俎上に載せてこなかった。自衛隊関係者は「一理あるが、実現は容易ではない」と漏らす。

また、日米同盟を巡り、対等な同盟関係を目指すとの立場から、在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の見直しも掲げている。協定改定は多くの在日米軍基地を抱える沖縄も要望してきた。だが、外務省は慎重な姿勢を示しており、米側も見直しに否定的だ。

米国は11月に大統領選を控えており、石破氏が新大統領と良好な関係を構築できるかも鍵になる。(小沢慶太)

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