外交・防衛 一様に路線継承も、異彩放つ石破茂氏 「アジア版NATO」「地位協定改定」 自民党総裁選 政策比較(3)

岸田文雄政権は中国の軍拡や台湾海峡危機のリスクなど安全保障環境の激変に応じた外交・防衛政策を進めてきた。今回の自民党総裁選(27日投開票)に出馬した9人のほとんどは、第2次安倍晋三政権以降の外交・安保政策に閣僚として携わっており、基本路線に大きな違いはない。ただ石破茂氏が掲げた「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」など、一部に異彩を放つ主張もある。

多くの候補が防衛力整備掲げる

「自由で開かれたインド太平洋」「法の支配」といった現在の日本外交の基本路線は安倍氏が礎を築き、菅義偉・岸田両政権が継承してきた。岸田首相は強固な日米同盟を軸に豪州や韓国、G7(先進7カ国)各国などとの連携強化を進め、ロシアによるウクライナ侵略以降は対露制裁とウクライナ支援に力を入れた。防衛政策では反撃能力の保持などを明記した「安保3文書」を閣議決定し、防衛予算の国内総生産(GDP)比2%への増加を決めた。

候補者9人の政策はこれらの路線継承が軸だ。多くの候補が経済安保の推進や、サイバー攻撃に先手を打って被害を防ぐ「能動的サイバー防御」の早期法制化など、新領域での戦争に対応できる防衛力整備を掲げた。自衛官の処遇改善も多くの候補が打ち出した。

原潜保有など特徴的な主張も

それだけに候補者間の論戦が深まっている状況とはいえないが、特徴的な主張もある。高市早苗氏は非核三原則の「持ち込ませず」について「(見直しを)議論しなければならない」と指摘。河野太郎氏は原子力潜水艦の保有や、パレスチナの国家承認など中東外交強化を訴えた。

「アジア版NATO」の実現には集団的自衛権の全面的な行使容認などの課題があるが、提唱者の石破氏は14日の討論会で茂木敏充氏にその点を問われ「これから議論を詰めたい」などと答えるにとどめた。石破氏は対等な日米同盟を目指す立場から、在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の改定も訴えており、17日の沖縄県での演説会でも「見直しに着手する」と明言した。

一方、北朝鮮が日本人の拉致を認めた日朝首脳会談から17日で22年。候補者は一様に拉致問題解決へ向けたトップ会談への意欲を示しており、必要なのは結果だ。

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