失職選んだ斎藤知事、資質欠くと言われても自身の正当性にこだわり でも勝算は「ない」

兵庫県議会から全会一致の不信任決議を受けた斎藤元彦知事が取った選択は、失職だった。26日の記者会見では、3年間の県政改革の「実績」を強調し、告発文書問題の対応も適切との認識を改めて示した。不信任決議で「資質を欠く」との烙印(らくいん)を押されながらも、改革継続の是非を争点に出直し知事選に臨む姿勢からは、自身の正当性へのこだわりが透ける。

「改革を止めるわけにいかない。今回辞職ではなく、失職し、出直していきたい」。斎藤氏は記者会見でこう述べた。

辞職と失職-。現職の知事でなくなる点は同じだが、斎藤氏にとっては全く意味が異なる。

なぜ辞職を選ばなかったかと問われ「4年間の任期を全うしたいとの強い思いがあり、自ら職を辞することは、選択肢としてなかった」と説明。「辞めるよりも、続けていく。仕事をしていくことも責任の果たし方だ」と持論を展開した。

一定の責任は認めつつ法律が定める自動失職を選ぶことで、自身の非をできるだけ認めない形を取ったとみられる。

斎藤氏は議会解散についても「考えていなかった」と否定した。文書問題の対応を問題視され、自らの信を県民に問うのが筋との考えからだ。

会見では、決断に際して一番悩んだ点は「出直し選に出るかどうかだった」と語ったが、不信任後の斎藤氏の動きは、すでに選挙を意識していたようにもみえる。

斎藤氏は不信任翌日の20日以降、NHKや民放の情報番組などに相次いで生出演。文書問題の対応については従来の説明を繰り返す一方、県立大の授業料無償化など実績を訴える場面が目立った。斎藤氏本人は否定するが、議会側からは「出直し選に向けた布石だ」との声が上がった。

もっとも斎藤氏を取り巻く状況は厳しい。令和3年の前回知事選では自民党と日本維新の会の推薦を得たが、今回は「政党の力を得るのは難しい。完全に一人の無所属候補」と話す。

会見で勝算を聞かれた斎藤氏は「そういったことはない」と答えつつ、「県民の皆さんから応援もあれば『信じている』との声もある。もう一度頑張らせてもらいたい」と、いちるの望みをかけた。各党の足並みがそろわなければ、直前まで知事だった実績を武器に選挙戦を有利に進める可能性も否定はできない。

近畿大の上﨑哉(うえさきはじめ)教授(行政学)は斎藤氏の説明について「文書問題への言及がなければ、県民は報道などから(対応の是非を)判断せざるを得ず、望ましいとはいえない」と指摘する。「失職の選択から『まだまだ自分の県政をやっていきたい』という意思がうかがえる。正しいことをしてきたという確信を持って選挙を戦うのだろうが、支援組織がなければ万全の態勢で臨むのは難しいのではないか。有権者にどれだけ声が届くかだろう」と話した。


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