公明新代表に石井啓一氏 世代交代ほど遠く、自民とのパイプ役も不在 後進育成が課題

公明党の新代表に石井啓一幹事長の就任が決まった。誠実な人柄と実務能力への評価が高く、交代は既定路線との見方がある。一方で、「党の顔」としての知名度や自民党との連携に懸念を示す声もある。

「公明は結党60年を迎える。現場第一主義に徹し、さまざまな政策を実現する。その先頭に立ち、粉骨砕身働く決意だ」。石井氏は当選後の記者会見で、こう抱負を述べた。

石井氏は官僚出身の政策通として知られ、「国政全般に能力が高い人」(党幹部)と堅実な仕事ぶりに定評がある。自民派閥のパーティー収入不記載事件を受けた政治資金規正法改正では、党内のプロジェクトチーム座長として公明案の策定をリードした。庶民的なワインを好み、「振ると味が良くなる」と語る。

懸念材料は知名度の低さだ。8期15年務めた山口那津男代表は支持母体の創価学会から厚い信頼を得て、遊説先では支持者から「なっちゃん」コールが沸き起こるほどの人気を誇った。これに対し石井氏は「党首としては地味」との印象が付きまとう。

石井氏は自民との連携にも不安を残す。昨年5月に衆院選挙区定数「10増10減」を巡り、東京での選挙区調整が難航した際、「自公の信頼関係は地に落ちた」と不満を示した。自公の幹事長と国対委員長が国会運営や政策について打ち合わせる会合でも「押し黙って食事をしていた」(公明関係者)との証言もある。自民幹部と胸襟を開く関係を築いた太田昭宏前代表や漆原良夫元国対委員長とは雲泥の差だ。

中堅・若手の育成手腕も問われる。今回の代表交代には自民の総裁選や立憲民主党の代表選を横目に、公明も世代交代の流れに乗り遅れたくないとの思惑も透ける。ただ、「66歳の石井氏への交代が刷新といえるのか」との声は根強い。

石井氏は会見で、「中堅・若手、女性の登用を積極的に図っていきたい」と強調した。党の刷新を図り、そう遠くない時期に行われる次期衆院選で仲間たちを勝利に導けるのか。15年ぶりの新代表にとって見習い期間はなさそうだ。(長橋和之)

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