憲法改正、自衛隊明記と緊急事態条項 自民総裁候補の各氏が推進で横並び 問われる実現力  自民党総裁選 政策比較(1)

自民党が党是に掲げる憲法改正は、今回の総裁選(27日投開票)で重要な論点になる。9人の候補者は全員、9条への自衛隊明記など、9月2日に党がまとめた「論点整理」を踏まえた改憲を公約に掲げている。問われるのは実現力だ。

現総裁である岸田文雄首相は、公言してきた任期中の改憲を実現できなかったが、「論点整理」の取りまとめを主導し、置き土産とした。平成30年に党がまとめた「改憲4項目」の見解を引き継ぎ、現行9条を維持した上で「9条の2」を新設して自衛隊を明記。さらに大災害など緊急事態での国会議員の任期延長と、政府の権限を一時的に強める「緊急政令」の導入を可能にする案を軸とした。

論点整理には、積み上げた議論を「ピン留め」し、後戻りを防ぐ狙いがある。改憲論議はこれまで、総裁交代などで議論が振り出しに戻ることがあった。首相は取りまとめに当たり「現在までの取り組みは、新総裁にもしっかり引き継いでもらえるよう申し送る」と念を押した。

候補者の中で、石破茂氏は「9条2項を削除し『国防軍』を創設」という、論点整理とは異なる考え方を持論としてきた。ただ今回の出馬にあたっては「私が総裁になっても路線は不変だ。優先項目は党で決定した通りだ」と述べ、論点整理を尊重する考えを表明。これにより9人の改憲に関する路線は、表面的には横並びになった。

違いがあるとすれば改憲実現の時期だ。政策集や政策発表会見で、石破氏は「首相在任中」、林芳正氏は「(3年の)総裁任期中」の発議を掲げた。茂木敏充氏は「3年以内に憲法改正を実現」とした。小泉進次郎氏は「否決される可能性があっても」国民投票に踏み切ると表明している。

とはいえ、改憲実現には野党を含む国会での合意形成が欠かせない。新総裁にはスローガンだけでなく、発議と国民投票の実現に向けた具体的な進展が求められる。

自民党総裁選で焦点となる政策などについて、候補者9人の主張を比較していく。

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