石破氏、台湾有事で邦人保護の同意相手国「台湾」明言 林氏は超法規措置も 小泉氏は簡潔

自民党総裁選(27日投開票)に立候補した9氏は15日のフジテレビ番組で、台湾有事での邦人保護の在り方について議論し、林芳正官房長官(63)は現行法で対応できない部分があっても、邦人救出を優先し、その上で政治責任を取る考えを示した。石破茂元幹事長(67)は邦人保護で必要とされる「同意」の相手国は台湾と明言。高市早苗経済安全保障担当相(63)は有事の兆候を早期に把握するため、インテリジェンス能力の強化を主張した。小泉進次郎元環境相(43)はシミュレーションの必要性を強調した。外相や防衛相、官房長官などとして有事のシミュレーションに当たった候補とそうではない候補とで発言内容の具体性に差が出る形となった。

茂木氏は外相時代に武漢退避を指揮

中台関係を巡っては、2月に台湾の金門島沖で台湾当局が追跡した中国漁船が転覆事故を起こし、2人が死亡。その後、中国海警船が台湾側の管轄水域に侵入するなど圧力をかける事態となった。中台双方は7月下旬に和解したが、米シンクタンク「戦争研究所」が8月に発表した報告書は、今後6カ月以内に中国が金門島を奪取するための作戦に発展する可能性も指摘している。

番組では中国が台湾封鎖に踏み切った場合、邦人救出する上での法的基準などが尋ねられた。

茂木敏充幹事長(68)は明言を避けた上で、新型コロナウイルス発生直後、外相として「ロックダウン(都市封鎖)」された中国・武漢などから邦人の退避オペレーションを陣頭指揮した経験に触れ、「さまざまなシミュレーションをして、しっかりできる自信がある」と強調した。

次いで小泉氏も邦人救出する上での法的根拠を問われたが、「万が一のリスクが高まったときに、日本だけでやるべきことと日本だけではできないことの整理、シミュレーションも含めて他国との連携を深めることが大事だ」と述べるにとどめた。

自衛隊が在外邦人保護を行う上で自衛隊法は「当該外国の同意」を求めている。中国が台湾を封鎖した場合、台湾の邦人を救出する上で、「同意」を要するのは中国か、それとも日本と外交関係のない台湾なのか─。

小泉氏はこの点を問われたが、「有事のときのシミュレーション」の必要性を繰り返すなど簡潔な回答に終始した。一方、石破氏は「台湾でしょうね」と即答。「中国がそういう状況を作ったのは明らかな国際法違反になる。中国と交渉するという話にはならんだろう」と指摘した。

石破氏の発言後、番組側が候補者全員に対し「台湾の同意でよろしいか」と尋ねると、加藤勝信元官房長官(68)も「政府解釈はそうだ」と述べ、小泉氏も含めた全員が挙手した。

上川氏「在外邦人を守ることは国家の責務」

その場合、日本政府は外交関係のない台湾に国家としての主権を認めることになるのか─。

外相や防衛相などを歴任した河野太郎デジタル相(61)は、「平時は『一つの中国』ということを日本はいっているが、こういう危機的な状況の場合は、そこを誰がコントロールしているかで、判断することになる」と指摘。「金門島は、平時は台湾が管理している。その同意があれば、そういう判断を出すことで法的にも問題はない」と解説した。

茂木氏は「緊急時においては、独立国かどうかよりも、オペレーションのカウンターパートとして誰と対応するかで救出する。オペレーションの主体となるのは間違いなく、台湾になる」と述べ、加藤氏も政府答弁を踏まえ、「国交承認している国に限る必要はない」と語った。

上川陽子外相(71)は台湾について「日本としては、在外邦人の生命を守ること、そこから適切に退避させることは国家としての責務だ」と述べ、在外邦人の退避に向けて、平時から同盟・同志国との協力関係を深める重要性に言及した。

小林氏「シンクタンクで何度もシミュレーション」

高市氏は、台湾有事に伴い中国本土に暮らす邦人を救出する必要性を問われ、「すごく大事なことは情報を早くとる。とにかくインテリジェンス能力を高める」と述べ、有事が発生する前に邦人が退避できる環境を整えるべきとした。

小林鷹之前経済安保担当相(49)は台湾有事を巡って、「民間シンクタンクのシミュレーションで何度も首相役を含めて(閣僚役を)務めたが、段階的な措置が必要だ」と述べ、「何らかの兆候を探知した時点で家族は速やかに民間機で退避してもらう。事態がエスカレーションした場合は(民間人を安全に脱出させる)『人道回廊』を設定するために、首相自ら国際社会に訴えていく準備が必要だ」と語った。

林氏は「躊躇(ちゅうちょ)して邦人を救えなかったら、首相の政治責任だ。首相になったときは、法律を少し超える所があっても、それをやりたいと思う」と述べ、「その後、責任を取って辞任する」とした。(奥原慎平)


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