岸田首相が突き進む、本気の「6月解散、7月総選挙」戦略 定額減税、夏のボーナス増額、株価高値更新で“布石”が揃う

岸田文雄・首相がもくろむ「6月解散、7月総選挙」のシナリオとは(時事通信フォト)

 本気でやろうとしている──岸田文雄・首相が「6月解散、7月総選挙」に打って出るシナリオが現実味を帯びてきた。自民党内で裏金問題の処分をめぐって怨嗟の声が渦巻くなか、岸田首相が自らの延命のためだけに練っている謀略の内実とは──。【全3回の第1回】

【写真】細身のスーツ姿、厳しい顔の麻生太郎氏。他、裏金問題で処分を受けた世耕弘成氏、塩谷立氏なども

補選全敗でも“余裕”

 国賓待遇での米国訪問を終えて帰国する岸田首相を待ち受けるのは、4月28日投開票の衆院3補選だ。

 自民党は選挙買収で議員辞職した柿沢未途・元法務副大臣の東京15区、安倍派の裏金問題で議員辞職した谷川弥一・元代議士の長崎3区で候補者擁立を断念して不戦敗が決まり、残る島根1区でも大苦戦している。

 党内では、「補選に全部負けると岸田おろしが始まる」(2月28日の船田元・衆院議員総会長の講演)との見方が強く、反主流派はその機会をうかがっている。

 ところが、追い詰められているはずの岸田首相には、ここにきて開き直りの様子さえうかがえるのだ。

 自民党関係者は言う。

「日本の総理大臣が米議会の上下両院合同会議で演説をするのは安倍(晋三)首相以来、9年ぶりのこととなった。訪米直前の岸田首相は、“日米の未来像を発信するんだ”と熱心に演説内容を練り込んでいた。9月の自民党総裁選で再選を果たして、“来年以降も自分が日本の総理だ”と確信している様子にさえ感じられた」

 それというのも、危機的状況にあるように見える岸田首相は、永田町で囁かれ始めた「6月解散、7月総選挙」を本気でやるつもりなのだ。

 訪米前、裏金議員への処分を発表した岸田首相は、国会で責任の取り方が不十分だと追及されるとこう言ってのけた。

「最後は国民と党員のみなさんに判断いただくのが、自民党総裁としての立場だ」

 与野党ともに、この発言を総選挙で「国民」の審判を受け、勝利したうえで9月の自民党総裁選で「党員」の支持で再選されるという宣言だと受け止めている。

 政治評論家の有馬晴海氏はこう語る。

「岸田総理は早くから今年6月の解散・総選挙を念頭にシナリオを練ってきた。鳴り物入りで打ち出した所得税の定額減税の実施時期をわざわざ6月にしたのもその布石の一つ。

 しかも、経済団体に賃上げを強く要請して今年の春闘では一斉に大幅賃上げ回答が出され、夏のボーナスは上がる。そこに減税も重なるからちょうど選挙期間にサラリーマンの手取りは大きく増える。株価も過去最高を更新し、景気のマインドも良くなった。加えて米国訪問という華々しいイベントでアピールし、このまま解散・総選挙に突き進む姿勢です」

 裏金問題で自民党への批判が強いことも、岸田首相は逆にチャンスと計算しているというのだ。

「自民党議員は大逆風を感じているから、総選挙になれば勝敗ラインは下がる。総理はたとえ議席を大きく減らしても、自公で過半数さえ取れば、“国民の信を得た”とするつもりでしょう。そのためには何でもやる構えです」(有馬氏)

第2回に続く

※週刊ポスト2024年4月26日号

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