岸田首相が突き進む「6月解散・7月総選挙」 議席大幅減でも過半数維持すれば「自民党総裁選再選可能」の独善的な戦略

岸田文雄・首相は自らの延命のためだけに動いているのか(写真/共同通信社)

 岸田文雄・首相が「6月解散、7月総選挙」に打って出るシナリオが現実味を帯びてきた。自民党内で裏金問題の処分をめぐって怨嗟の声が渦巻くなか、岸田首相が自らの延命のためだけに練っている謀略の内実とは──。【全3回の第3回。第1回から読む

【写真】厳しい顔で歩く麻生太郎氏。他、裏金問題で処分を受けた世耕弘成氏、塩谷立氏なども

ギリギリ過半数でいい

 岸田首相は総選挙後の自民党総裁選再選への布石も打っている。自民党内で強い疑問があがっている萩生田光一・前政調会長への大甘処分だ。

 萩生田氏は安倍派からキックバックを受けた金額が2728万円と立件された3人(※注)に次いで多く、裏金問題の政治責任の重さでいえば“最重量級”と見られている。

【※注/政治資金規正法違反(虚偽記入)で安倍派の池田佳隆・衆院議員(不記載額約4800万円)が起訴、大野泰正・参院議員(同約5100万円)が在宅起訴、谷川弥一・衆院議員(同約4300万円)が略式起訴された】

 ところが、安倍派5人衆の中で1人だけ「党の役職停止」という軽すぎる処分になった。岸田側近が語る。

「萩生田氏は森喜朗・元首相と非常に近いうえ、反主流派の菅義偉・前首相とも関係が良い。総裁選のキーマンになる。だから総理は味方に取り込むために恩を売った」

 安倍派5人衆の他の幹部は離党勧告や党員資格停止処分となったので、次の総選挙が7月なら自民党の公認を得られない。比例復活の可能性がない以上は、落選を免れるために地元を走り回らなければならなくなる。結果、政局絡みでは身動きできなくなる。

「その間に萩生田氏がバラバラになった安倍派の一部をまとめ、選挙で生き残った議員は総裁選で岸田支持に回る算段になっている」(前出・岸田側近)

 岸田首相は森氏に対しても、電話一本かけただけで「(キックバックへの)具体的な関与については確認できなかった」と責任をウヤムヤにした。

 案の定、萩生田氏と森氏は大甘処分の陰で動き出した。安倍派の若手議員の1人が明かす。

「最近、仲間にメシに誘われて行ったら、そこに森先生と萩生田先生がいた。総裁選をにらんで2人を中心に派閥を立て直す考えのようだ」

 岸田首相はそこまでお膳立てしたうえで、解散・総選挙に踏み切ろうとしているのだ。

 衆院の自公の現有議席は304。総選挙で両党合わせて最大71議席減らしても、ギリギリ過半数で政権は維持できる計算になる。その間に党内の反対勢力を徹底的に追放すれば、たとえ議席大幅減でも総裁再選は可能という岸田首相の独善的な戦略が見えてくる。

 裏金問題の責任に頬被りしたばかりか、国民の審判が下って選挙に負けても総理・総裁の座に居座ろうと悪知恵をめぐらせている。だが、その身勝手な目論見が外れれば、権力にしがみつく船長とともに、自民党という船が沈んでいくことになる。

(了。第1回から読む

※週刊ポスト2024年4月26日号

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