【紅麹問題で高まる消費者不安】厚労省所轄「国立健康・栄養研究所」ホームページから健康食品の「安全性」に関する情報が不自然に消えていた

なぜ厚労省は健康食品に関する一部情報を削除したのか(イメージ)

 小林製薬の「紅麹」の健康被害が拡大している。厚労省によると、同社の紅麹サプリを摂取後、医療機関を受診した人は1250人を超え、腎障害などによる入院患者や死亡者が増え続けている。

【写真】記者会見する日本腎臓学会の南学正臣理事長と厚生労働省職員

〈史上初!〉とパッケージに謳う同社の『紅麹コレステヘルプ』は、発酵食品などに使われる麹菌・紅麹を使った「機能性表示食品」として初めて認可された商品だった。

 消費者庁は食品の機能性について〈特定の保健の目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)〉と説明。紅麹コレステヘルプには〈悪玉コレステロールを下げる〉と書かれており、消費者はそれを信じて購入したはずだ。

「食品」として規制される健康食品やサプリメントには、医薬品における「副作用」や「使用上の注意」を記した添付文書はないが、副作用について国が調べていないわけではない。日本では「国立健康・栄養研究所」(厚生労働省所管)が健康食品・サプリの原料となる素材に関する「安全性・有効性情報(素材情報データベース)」をインターネット上で公開してきた。

 本誌・週刊ポスト2018年6月29日号の〈「副作用に要注意」と指摘された健康食品成分一覧リスト〉では、同データベースをもとに855種類に及ぶ食品成分の「副作用」について報じた。同研究所担当者(当時)も「国内外の研究を精査し、科学的裏付けがあると判断したものを掲載」と答えていた。

 データベースの「安全性」項目には摂取による有害事象などが記載され、医薬品の「添付文書」に近い情報が閲覧できた。

 健康食品への不安が高まる今こそ確認したいが、現在、同データベースを開くと、「安全性」(危険情報、禁忌対象者、医薬品との相互作用、動物他での毒性試験など)の欄が消えているのだ。「有効性」情報は閲覧できるため、「安全性」だけが不自然に消された格好だ。

 厚労省に聞くと「情報が削除されていることは確認している」(担当者)と認めたが、その経緯や理由については「調査中で回答できない」の一点張りだった。

1年以上、成分の「有効性」だけが記載される状況

 その後、データベースを公開する国立健康・栄養研究所に確認すると、2023年3月以降、「安全性」情報が削除されたことがわかった。それから1年以上、データベースでは成分の「有効性」だけが記載される状態が続く。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。

「公的な研究機関が健康食品の有効性だけを知らせるのでは、単なる“宣伝”でしかありません」

 米国では保健福祉省(日本の厚労省に当たる)に属する世界最大の医学研究機関・NIH(米国国立衛生研究所)が健康食品の有効性や安全性に関する情報を整理し、ホームページで公開。検索すれば誰でも無料で閲覧できる。米国在住の内科医・大西睦子氏が言う。

「サプリ大国の米国ではサプリが原因と考えられる有害事象などの情報がNIHによりオープンにされており、その点は日本と大きく異なります」

 大西医師が続ける。

「サプリを食事同様に捉え、飲んでいることを主治医に伝えない人が多いと思いますが、それは安易な考え。腎機能が低下する高齢者ほど、薬との飲み合わせを含めて予期せぬ症状が出るリスクが高まります。だからこそ、安全性については国が管理して保証する必要があると考えます」

 2015年に導入された機能性表示食品制度によってサプリ市場は1兆円市場に拡大した。だからこそ、厚労省が“効果”ばかりを宣伝し、「リスク情報」を消費者に閉ざしている現状は、一刻も早く改善する必要がある。

※週刊ポスト2024年4月26日号

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