画像生成AI「Stable Diffusion」と「Midjourney」に対する集団訴訟でイギリスの写真家が団結呼びかけ

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画像生成AIのトレーニングに作品を無断利用されたことについて、著作権侵害やデジタルミレニアム著作権法(DMCA)違反であるとして、アメリカの画家らが画像生成AI「Stable Diffusion」や「Midjourney」に対して起こした集団訴訟で、イギリスのアート界も団結しなければならないとの呼びかけが行われています。場合によっては、イギリスで独自の集団訴訟が起こされる可能性も示唆されています。
Damien Hirst and Tracey Emin among thousands of British artists used to train AI software, Midjourney | Artificial intelligence (AI) | The Guardian
https://www.theguardian.com/technology/2024/jan/21/we-need-to-come-together-british-artists-team-up-to-fight-ai-image-generating-software

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画像生成AIは、学習元となるデータセットに著作権で保護された画像が多数含まれていることが指摘されていて、Midjourneyの場合はウォルト・ディズニーや草間彌生、フリーダ・カーロといった著名なアーティストから6歳児まで、合計1万6000人ものアーティストのリストを作成して積極的に学習を行わせていたことがわかっています。
MidjourneyがAIトレーニングに用いた6歳児を含む1万6000人のアーティストリストの存在が発覚 - GIGAZINE

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こうした状況で、10人のアーティストがStable DiffusionとMidjourney、および投稿した作品をそのままデータセットにしたアートコミュニティ・DeviantArtを相手取り、集団訴訟を起こしました。
画像生成AI「Stable Diffusion」と「Midjourney」に対して集団訴訟が提起される - GIGAZINE

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原告となったのは漫画家のサラ・アンダーセン氏、イラストレーターのケリー・マッカーナン氏、ビジュアルアーティストのカーラ・オーティズ氏、コンセプトアーティストでイラストレーターのホーク・サウスワース氏、同じくコンセプトアーティストでイラストレーターのグジェゴジ・ルトコウスキ氏、「ナショナルジオグラフィック」のイラストなどを手がけるイラストレーターのグレゴリー・マンチェス氏、ゴシックファンタジー系の作風で知られるイラストレーターのジェラルド・ブロム氏、写真家の張晶娜(チャン・ジンナ)氏、ストーリーボードアーティストのジュリア・ケイ氏、漫画家のアダム・エリス氏。アメリカで活躍するアーティストが中心です。
この集団訴訟を担当するマシュー・バターリック弁護士は、イギリスのアーティストらとも連絡を取っているとのこと。
動物写真で知られるイギリスの写真家で、Midjourneyが作成していたアーティストリストに名前が含まれていた、写真家協会会長のティム・フラック氏は「我々がしなければならないのは団結です。あのリストが公開されたことは、アーティストが団結して取り組むことへの大きなきっかけになると思います。個人的には、(集団訴訟を)やってもいいと思っています」と述べています。
イギリスのデザイン・アーティスト著作権協会(DACS)が1000人のアーティストとエージェントを対象にして調査を行ったところ、22%から自らの作品がトレーニングに利用されているとの回答があり、89%から「クリエイティブ産業保護のため政府が生成AIを規制すべき」との回答があったとのこと。
DACSのリーマ・セルヒ氏は、この調査はMidjourneyのアーティストリストの問題が発覚する前に行ったもので、もし発覚後であればさらに強い反応があったのではないかと述べました。
一方で、異なる意見の持ち主もいます。イラストレーターのクリス・フォス氏は、アイザック・アシモフの「ファウンデーション」3部作をはじめとしたSF小説や、性のマニュアル「The Joy of Sex」のイラストを手がけたことで知られています。キャリアの長さゆえに、AIのトレーニングでもよく利用されているアーティストですが、PCを使用しないため、画像生成AIに模倣作品を作られていることも知らなかったとのこと。
今回の件で画像生成AIのことを知ったフォス氏は、出力された画像を見て「私の作品を知っている人であれば、『クリス・フォス風画像』が私の手によるものではないとすぐにわかるはずです。ある種の平坦さがあり、深みに欠けるからです」と感想を述べました。フォス氏は2024年後半に展示会を予定していて、約80点の作品を作らなければならないそうで、「照明や構図など、いろいろなことを考えなければいけません。しかし、画像生成AIの生成した画像をいじれば、いい絵が描けそうです。彼らは、私のためにすべての問題を解決してくれていますから」と、AIを踏み台にして新たな作品を生み出す意欲をのぞかせたとのことです。

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