「AIと協力して創作をするべき」と作家が語る理由とは?

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GPT-4などの大規模言語モデル(LLM)を用いた生成AIは、人間によるものとしか思えない文章や画像を作ることができます。AIによって生み出す作品についてはクオリティ面や著作権などの問題がしばしば議論される中で、「作家はAIに任せることはせず、しかし拒絶するのでもなく、AIと協力して創作すべき」と作家でエッセイストのデビー・アーバンスキー氏が語っています。
Why Novelists Should Embrace Artificial Intelligence ‹ Literary Hub
https://lithub.com/why-novelists-should-embrace-artificial-intelligence/

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AIは著作権で保護された本や文章を含むデータでトレーニングされており、そのことがしばしば問題として指摘されます。2024年1月17日には、芥川賞に選ばれた作品の一部を「文章生成AIを駆使して書いた」ことを作者が明かしたことで、海外でも話題を呼びました。
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一方で、アーバンスキー氏は「AIは人間と創造的にコラボレーションすることが可能」と提案しています。著作権で保護されたデータでトレーニングされていることを問題視する場合、そのAIを用いて生成した文章を作品に反映することは、著作権的に問題があると考えられます。しかし、ChatGPTなどの対話型AIと作品に関する話題や息抜きのために関係ないやりとりを繰り返すことでインスピレーションを得ることは、素晴らしい体験だとアーバンスキー氏は話しています。

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創作に際してAIとやりとりをするプロセスを、アーバンスキー氏は「ある意味、GPT-4と会話するとき、私たちは自分自身に話しかけているのです」と表現しました。アーバンスキー氏は「AIが夢を見るとしたらどんな夢を見るのか」についてAIと話し合ったり、なぜ詩が人の心に響くのかをAIと議論しながらできの悪い詩や歌詞を書いてみたそうです。AIと対話した経験により、自分の考え方をさらに深めたり、さまざまな知見を広げたりして、作品に反映することができたとのこと。
「GPT-4は、私たちが過去に話した、あるいは読んだようなデータでトレーニングされているため、GPT-4と会話することは、自分自身を見つめ直すことになります。そして同時に、GPT-4は私たちの想像できないイメージを伝えてくることもあり、それが何よりもエキサイティングです」とアーバンスキー氏は語りました。
AIを積極的に用いた作品の例として、アーバンスキー氏はSF短編映画「Sunspring」を挙げています。Sunspringは2016年に公開された実験映画で、脚本を当時の長期短期記憶(LSTM)ニューラルネットワークであるBenjaminが担当しました。ここでは、Benjaminの脚本をプロが監督してプロが出演して作り上げたことで、奇妙で感動的な作品になっているとアーバンスキー氏は高く評価しています。またその他、ハリウッドの映画監督であるベネット・ミラー氏が、DALL-Eを用いて生成した画像の展示会を2023年に実施した際に、目を見張るような作品があったことをアーバンスキー氏は指摘。「ドキュメンタリーとフィクション、そして人間らしさの境界に存在し、実際には起こらなかったが記録された過去と記憶を示唆していると思います」と話しています。
Sunspring | A Sci-Fi Short Film Starring Thomas Middleditch - YouTube

AIには、トレーニングにおける権利、契約の問題、そしてさまざまな面で大きなレベルでの安全の問題が懸念されるなど、考えるべきことは多くあります。AIに関する懸念に関心を持つことは重要ですが、それだけではなく、ある程度は楽観的になって、テクノロジーの進歩が私たちの視野や創造性をどのように広げてくれるのかも重視すべきと、アーバンスキー氏は強調しています。

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