AIの「LLaMa」が著作権を侵害したとしてMetaを訴えた作家らの主張がほとんど棄却される

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コメディアン、女優として知られるサラ・シルバーマン氏らを筆頭に3名の作家が著作権侵害でMetaを訴えた件で、AIの訓練に著作物を使用したのは著作権侵害に当たるという原告の主張を除き、すべての請求が棄却されました。
Court Grants Meta's Motion to Dismiss Claims in AI Lawsuit
https://www.thefashionlaw.com/court-grants-metas-motion-to-dismiss-bulk-of-claims-in-authors-ai-lawsuit/
Sarah Silverman Hits Stumbling Block in AI Lawsuit Against Meta – The Hollywood Reporter
https://www.hollywoodreporter.com/business/business-news/sarah-silverman-lawsuit-ai-meta-1235669403/
LLM litigation · Joseph Saveri Law Firm & Matthew Butterick
https://llmlitigation.com/
作家のリチャード・カドレー氏、サラ・シルバーマン氏、クリストファー・ゴールデン氏は、Metaの大規模言語モデル「LLaMA」が著作物を基に訓練したのは問題であるとし、そのようなモデルの生成物は著作権を侵害するという内容の主張でMetaを訴えました。原告は、同日、同内容でOpenAIも訴えています。

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こうした訴えに対し、Metaは「LLaMAの訓練を目的とした書籍の無断複製が著作権侵害にあたる」という主張を除き、すべての請求を棄却するよう要求。2023年11月20日、Metaの要求が認められ、原告の複数の主張が棄却されました。
◆1:LLaMA自体が著作権を侵害する二次的著作物である
二次的著作物とは、1つ以上の既存の著作物(原著作物)を基に再構築、変形、あるいは翻案を加えて生み出した著作物のことを指します。
原告はLLaMAについて、データセットの文章表現に近づけるように出力内容を調整できる機能が、そもそも著作物の表現なしには機能しないものであると指摘し「LLaMAの全目的は著作権で保護された表現を模倣することであり、モデル自体が著作権を侵害する二次的著作物とみなされるべきだ」という主張を展開。
しかし、本訴訟を担当したヴィンス・チャブリア連邦地裁判事はこれを全面的に否定し、LLaMAそのものを原告の書籍の再構成や翻案と理解することはできないとの見解を示しました。チャブリア判事は「LLaMAとシルバーマン氏の本を並べて『似ている』と主張しているようなもの」「ナンセンス」と切り捨てています。

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◆2:LLaMAの出力内容はすべて著作権を侵害する二次的著作物である
原告は、著作物で訓練したLLaMAが著作物の表現を改変して出力した物は、すべて二次的著作物であり、著作権を侵害していると主張。さらに、第三者のユーザーがLLaMAを利用することで副次的な著作権侵害行為を発生させてしまっていると訴えました。
しかし、著作権侵害を訴えるためには、原著作物と二次的著作物の類似性を示す必要があります。
この点について原告は「そもそも訓練時に原著作物を完全に複製したモデルなのだから、類似性を示す必要はない」と述べていたのですが、この主張は誤りであると見なされ、最終的には類似性を証明しなければならないと判断されました。
◆3:LLaMAが著作者情報を隠匿している
デジタルミレニアム著作権法(DMCA)第1202条では、「何人も、故意に侵害を誘発、可能、容易にし、または隠ぺいする意図をもって、虚偽の著作権管理情報を提供、あるいは虚偽の著作権管理情報の頒布、もしくは頒布のための輸入をしてはならない」と規定しています。つまり、作者を偽って本を頒布することなどは違法ということです。
原告は、LLaMAが著作者情報を削除して著作物を頒布したとし、この点が上記規定に違反していると訴えましたが、LLaMAが著作者情報なしに原告の著作物を頒布したという主張を裏付ける事実はおろか、そもそも原告の著作物を頒布したという事実もないとして、この主張は棄却されました。原告がこの主張を貫くためには、前項の「LLaMAの出力内容はすべて著作権を侵害する二次的著作物である」という主張をまず立証しなければなりません。

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◆4:Metaが不正競争防止法に違反している
原告は、Metaが原告の許可を得ずに著作物をLLaMAの訓練に使用するなどした行為は、カリフォルニア州ビジネス・職業法に違反していると主張。これについては、上位の法的権威(この場合連邦法)が下位の法的権威(同カリフォルニア州法)に優先されるというプリエンプションの法理に基づき、先に著作権侵害を立証するべきだとして訴えは認められませんでした。
◆5:Metaが不当に利益を得ている
訴状によると、Metaはいわゆる海賊版サイトを用いてLLaMAを訓練したため、原告に金銭的損害が発生しているとされています。これに関しても、プリエンプションに基づき棄却されています。
◆6:Metaの情報管理に過失がある
カリフォルニア州民法第1714条に基づくと、Metaが著作物を訓練に使用したこと、訓練に使用した著作物を保持しなかったことは違法だと原告は主張していますが、上記同様プリエンプションに基づき棄却されました。

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連邦地裁は、原告側に訴状を修正する許可を与えた上で、前述の訴えをすべて棄却しました。原告は証拠を見直す必要がありますが、とはいえ原告の主張の中心となっている「LLaMAの訓練を目的とした書籍の無断複製が著作権侵害にあたる」という点についてMetaは棄却を求めていないため、今後この点が引き続き争点となって裁判が展開されると予想されます。

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