【箱根駅伝2018】箱根ランナーを支える精鋭部隊 白バイ隊員たちの素顔

12/29 11:00 mediba編集部

第94回東京箱根間往復大学駅伝が、2018年1月2日、3日に行われる。各校が火花を散らす新春の晴れ舞台。多数のスタッフ・関係者に支えられ、学生ランナーたちはスタートに立つ。コースの安全に目を配り、選手を先導するのが白バイ部隊。神奈川県警第1交通機動隊は、交通量の多い横浜周辺を担当する。部隊を総動員して任務に当たる2日間。中でも、レース先頭の先導は隊員にとって生涯一度の名誉だ。洗練された技量で今回の箱根を統率する「精鋭」たちのヘルメットの奥の素顔に迫った。

白バイ

(左から)津高、長島、本城、北村の4人の巡査長。彼らにとっても箱根は夢舞台だ(写真:mediba編集部)

「この4人の代わりはいない」

正月のお茶の間。テレビを点けると、箱根路を疾走するランナーが映し出される。その前方約20m。ペースを合わせ走行する2台の白バイに注目する人も多いだろう。警視庁第1方面交通機動隊、神奈川県警第1交通機動隊、同第2交通機動隊。この3部隊が各管轄を互いに引き継ぎながら10区間(217.1km)に亘るレースの行方を見守る。

第1交通機動隊の持ち場は、東京から神奈川へ入る1区終盤の六郷橋からスタート。「華の2区」鶴見中継所から各校のエースたちと走り、3区・戸塚中継所の少し先まで目を光らせる。今回大役を担うのは、本城佑樹(28)、北村匠(28)、津高智大(31)、長島裕(32)の4人の巡査長。川崎、横浜、横須賀の各分駐所から選び抜かれたエリート中のエリートだ。第1交通機動隊小隊長の塩谷功警部補(47)は、大役を控えた隊員にエールを送る。

「この4人の代わりはいない。沿道でサポートする大勢の警察官たちの思いに報いるためにも、体調管理に留意して万全で当日を迎えてほしい」

駅伝の先導には高度な技術が要求される。約300kgの車体を低速で制御しながら安定走行。選手の走りに影響が出ないように、エンジンの回転数を低くし、排気ガスを極力抑える。バックミラーで選手との距離感を測り、適正な位置をキープ。万が一の有事には身を挺して選手を守るタフさも必要だ。

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白バイを自在に乗りこなす隊員(写真:mediba編集部)

全国白バイ競技大会V 第1交通機動隊のエース

往路を先導する北村は、第1交通機動隊のエース。白バイ乗務は4年目。「特練」と呼ばれる技術の鍛錬に特化した精鋭チームで技を磨いた。10月の全国白バイ安全運転競技大会では警視庁などの猛者を抑えて個人総合優勝に輝いた。

「今回の選出は、白バイ大会優勝のご褒美だと思っています。選手が1年間練習してきたものを100%出し切って走れるようにサポートし、選手と沿道の動きを見つつ任務を遂行します」

北村は白バイ乗務の以前、山岳救助のスペシャリスト・レンジャー隊員を勤めていた。演習では30kgの重しを入れたリュックを背負い、冬山で朝5時から不眠不休で31時間。食糧もない中、コンパスを頼りにサバイバルを続けた。過酷な経験が白バイを乗りこなす技術となって生きている。

菊池雄星との投げ合い 元プロ注目左腕

往路のパートナー本城は異色の経歴を持つ。岩手・専大北上高では野球部に所属。本格派左腕としてプロのスカウトが注目する存在だった。3年時の練習試合では、今季パ・リーグ最多勝の花巻東・菊池雄星(現西武)と投げ合ったこともある。肘の故障を抱える中、迎えた高3の進路選択。憧れがあった白バイ隊員とプロ野球選手とで悩んだ。どちらも狭き門。悩み抜いた末に白バイへの道を選んだ。幼い頃に家族で見ていた箱根駅伝が念頭にあった。

「野球部の監督から大学の話もありました。進学していつかプロ野球にという気持ちもありましたが、天秤にかけたら白バイへの憧れが勝ちました。地元・岩手の方やお世話になった方への感謝の気持ちで走りたいし、この4人で先導できるのは嬉しいです」

本城のみ半年早い配属だが、実質同期の4人。日頃の業務を通じて鍛錬を続けてきた。交通違反の取り締まりパトロール。速度違反などを犯した違法ドライバーは絶対に逃さない。車列の合間を縫って接近し、安全を確保。地域を守るため白バイの技術向上に努めてきた。メンバー選考の際、普段の仕事に対する取り組み姿勢は重要な選考材料。後輩に対する指導・育成など総合的に考慮され、今回吉報が届いた。
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隊員は白バイのメンテナンスを日々怠らない(写真:mediba編集部)

格好いいパパ 子供たちの声援が励み

箱根・芦ノ湖からの折り返し。2日目の復路は、津高と長島が担当する。

「2人の子供が沿道に来てくれる予定です。94回という歴史のある大会。みんながテレビで見ている大役ですし、神奈川県警の名に恥じないように無事に引き継げればと思います」

津高はそう力を込める。幼い頃、兵庫県警で白バイ隊員だった祖父の姿に憧れた。日大三高ではアメリカンフットボール部に所属。高校日本一を決めるクリスマスボウルに出場し、2年連続準優勝の実力者だ。腰を痛めて競技は高校までで一区切り。大学では理工学部で風力発電の研究に情熱を注いだ。「今はバイクで風を感じています」。箱根の先導で感じる風は、きっと格別だろう。

脱水症状の選手を先導 心の中で応援

長島には思い出すシーンがある。昨年までは下位チームにつく中間先導で選手をサポート。2年前、中間先導していた9区の選手が鶴見中継所の約2km手前で脱水症状を起こした。左右にふらつきながら懸命に腕を振る選手。その時、監督車から飛んだ「もう少しで中継所だ。あの白バイ隊員についていけ!」。この言葉に身が引き締まった。奮起した選手は、長島の背中を追いかけ見事にたすきをつないだ。

「頑張ってついて来い!と心の中で応援していました。走り抜いた姿を見て自分のことのように嬉しかったです。白バイに声援をくれる方もいるので精一杯やり切りたいです」

白バイ隊員なら誰もが憧れる箱根の先導の大役。厳しい鍛錬を続け、選ばれた白バイ隊員は箱根に欠かすことができない存在だ。箱根を夢見てきた彼ら4人も、立派な主役に違いない。
(江村 聡信)

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