安室奈美恵 歌い踊り続けた25年~貫いた信念~

09/07 11:00 mediba編集部


歌手・安室奈美恵。沖縄から上京し、14歳でデビューした少女は、日本の音楽界のトップにのし上がった。「アムラー」の社会現象まで作り上げ、「時の人」に。いや、「時の人」と形容するのはあまりに安易すぎるかもしれない。安室は自分のために自分らしさを貫く、「平成」の生き方を体現するアイコンだった。

1年間の休業

「アムラー」ブームがピークを迎えた96年、発売したシングル「Chase the Chance」、「Don’t wanna cry」、「You’re my sunshine」の3作品で連続ミリオンを達成。さらに97年2月に発売した「CAN YOU CELEBRATE?」は229万枚以上売り上げ、女性アーティストのシングル歴代売上1位を記録した(全てオリコン調べ)。
そんな人気絶頂の真っ只中、ファンに衝撃が走った。97年10月、結婚と妊娠を発表。スポーツ紙が号外を配布するなど、メディアも大きく取り上げた。その年の末から産休に入り、約1年間の休業。入れ替わりの激しい芸能界から一度姿を消し、元の人気を取り戻すことは並大抵の努力ではできない。安室本人もNHK総合『ニュースウオッチ9』のインタビューで、休業中は不安になったり、焦りが出てきてしまったりすることがあったと語っている。しかし現在の安室は、このもどかしかった1年が与えたくれた良い影響を感じていた。「(休業した)1年がなかったら、その先に不安や焦りが出たときに自分で自分のことを信じてあげることができなかったりとか、ブレーキをかけてあげることができなかったりしていたと思うので、<中略>すごく大切な1年間を過ごさせていただいたなと思っています」。
安室にとって、休業中に自分と向き合ったことは、その後の芸能生活で大きな支えになっていたようだ。この休業は、太い芯の通った安室を作り上げたきっかけとなったに違いない。

突然の引退発表

そして40歳の誕生日に当たる2017年9月20日。安室は翌年9月16日をもって引退することを突然発表した。この発表を聞いたとき、筆者は思考回路が一瞬停止した。言葉の意味を理解するのに長い時間がかかったように思う。初めて観たコンサートや曲に励まされた日々が走馬灯のように流れ、「あ、安室奈美恵がいなくなってしまうのか」と気づいたときに、暗闇に落とされたような喪失感に襲われたことをはっきり覚えている。
なぜこのタイミングでの引退だったのか。NHK総合特番『安室奈美恵 告白』で、「理由はすごく、すごくいろいろありすぎて、深すぎてというところもあるんですけど」と前置きした上でこう答えている。「たまたま今回の40歳で、25周年というのも同時に重なっていたので、歌を歌う自分自身にピリオドを打つにはすごくいい節目の年なんじゃないかなっていう風に思いました」。
また、引退については「はじまりがあれば終わりがある。だからデビューがあれば絶対的に引退が来る。っていうのはそのときニコイチのセットでデビュー当時は考えていた」と語っている。好きではじめた歌とダンスを猛特訓し、やっとデビューという時に、引退を考えていたとはとても驚きだ。どんな時も自分自身を見失わない、彼女の生き方が反映されたエピソードだろう。

芸能界に起こった「アムロス」

25年という月日を常に第一線で駆け抜けてきた安室。そのなかで下した引退の決断。これには芸能界からも賛辞・悲嘆など様々な声が上がった。小学生以来のファンだと公言するイモトアヤコは、「清く潔く美しくかっこいい生き方心から尊敬します。安室奈美恵さんと同じ時代に生まれた奇跡に感謝し、1年後の9/16まで全身全霊かけてアーティスト安室奈美恵さんを応援したいです」と自身のインスタグラムにつづっている。
90年代の安室の飛躍を支えた小室哲哉氏は「正直、仕事で何とも言えない寂しさを感じるのは初めてです」と自身のツイッターで明かしている(現在は非公開)。
同じ沖縄出身で女優の黒木メイサは、琉球新報のインタビュー(2018年08月17日配信)で「え…?と頭の中ははてなだらけだった。でも安室さんが発表したコメントを聞いて徐々に状況を把握していくような感じだった。引退発表までみじんも“引退”なんて感じさせないパフォーマンスを続けてこられて、最後まで走り抜けられる安室さんはやはりかっこよすぎる」と語った。
ここに記載したコメントはごくごく一部だが、皆一貫して安室奈美恵という存在に「ぶれない」というイメージを持っているように感じた。そうした安室の信念と引退の決断を、重ね合わせて納得しているように筆者は思えた。

ぶれない信念

このぶれない信念、生き方を安室が積極的に発信しているわけではない。自問自答を繰り返し、何をすべきか、何がしたいのかを考え抜き、やっと出した答えを行動しているのではないかと思う。口数の少ない彼女の背中は、何よりも「自分らしく」あり続ける大切さを物語っていた。常に人々の一歩先を歩んだ、安室奈美恵の25年。
これからの彼女の人生をささやかながら応援することが、彼女に感謝を伝える一番の手段なのかもしれない。(文中敬称略)

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