リオ五輪レスリング金→生まれ故郷の市職員に…土性沙羅(29)が“引退後のセカンドキャリア”で見つけた喜び
日本代表が快進撃を続けるパリ五輪。なかでも、体操の男子団体総合やスケートボードストリートの堀米雄斗選手など、“大逆転での金メダル”は多くの人に感動を与えている。
16年のリオデジャネイロオリンピックで“大逆転で金メダル”を獲得したのが、レスリング女子69キロ級の土性沙羅さん(29)だ。決勝では0−2と劣勢でむかえた残り30秒から、最後の力を振り絞って相手を倒し、逆転劇勝利を収めた。
快挙達成後はケガに悩まされた。肩を脱臼し、18年4月に左肩に骨を移植する手術に踏み切る。術後、リハビリを経て復帰したが、19年の世界選手権は5位、その年の全日本選手権では7年ぶりとなる国内での敗戦を喫するなど、思うような試合ができない時期が続いた。努力を重ね東京五輪代表に出場をはたしたが、結果は5位。23年に現役を引退した。
23年4月から、土性さんは生まれ故郷の三重県松阪市の職員として、教育委員会スポーツ課に勤務している。
「今までバイトもしたことがないなかで、引退後のセカンドキャリアをどうしようかと悩んでいたときに、母から『市役所で社会人枠の求人がある』という話を聞きまして、応募したんです。地元にはあたたかい応援をしていただいていたので、恩返ししたいという気持ちもありましたね」
21年に大学の同級生と結婚しているが、夫は土性さんの新たなキャリアを後押ししてくれた。
「夫にも相談して、三重県への引っ越しを決意してくれたことで、とんとん拍子で再就職が実現しました」
朝8時30分から17時15分までが出勤時間。当初は戸惑うこともあった。
「電話の応対が苦手でしたし、名刺も正しい交換の仕方を知らなかったですから(笑)。パソコンも操作を覚えるために必死です。でも、みなさんに温かく接していただいて感謝しかないですね」
市役所での事務作業のほかに、小中学校に赴き、自身の体験談を話す出前授業なども行っているそうだ。
「今の子どもたちは自分の夢をうまく描けないでいることが多いと感じています。私の体験を話すことを通じて、1人でも多くの子に夢のスイッチが入ればと願っていますし、子どもたちからもらう手紙に、考え方が変わったと書いてあるととてもうれしくなりますね」
子どもたちだけではなく、市内各地の住民自治協議会の集まりで簡単なエクササイズを伝える「さら☆トレ楽ちん講座」も7月26日からスタート。徳和住民自治協議会を皮切りに、15の地域を来年2月まで巡回する。
「今回の講座は、楽しみながら健康づくりにつなげてもらう新規事業なんです。スポーツに取り組むことで心身ともに生活に充実感を与えるなどのメリットをデータを用いて示したり、腕立て伏せや腹筋のほか、パイプ椅子を使ったヒールアップやスクワット、体幹トレーニングなどを紹介しています。高齢の方々は『きつい!厳しい!』なんて冗談を言い合いながら取り組んでくれました。ふれあいながら、楽しんで体づくりができることを目指しています」
金メダリストのエクササイズ講座は、故郷の健康意識の高まりに大きく貢献していきそうだ。
8月6日からはパリ五輪でレスリングの競技が開催される。後輩たちへのエールを聞いた。
「私自身、いつもものすごいプレッシャーを感じながら挑んでいましたが、その場に立っていることで、その選手をみている人に勇気を与えられると思います。私たちの次の世代が、プレッシャーを乗り越えて、悔いのない試合をしてきてほしいと思います。
今大会もいろいろな競技で逆転劇が繰り広げられていますが、諦めてしまったら、わずかな希望も絶たれてしまいます。最後まで気持ちを切らさないことが、結果を大きく左右するのかなと思うんです。若手の爆発的なパワーを、ドキドキワクワクしながら寝ずに応援しようと思います」
08/08 06:00
女性自身