「計量オーバーのカシメロと井上尚弥の対戦の可能性は100%ない」“キーマン”の大橋会長が明かす

 プロボクシングの元3階級制覇王者のジョンリエル・カシメロ(35、フィリピン)が豪快な1ラウンドTKOで1年5かぶりに勝利してスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(31、大橋)との対戦をアピールしたが、大橋秀行会長(59)が「計量オーバーしているような選手との対戦は100%ない」と明言した。カシメロは13日に横浜武道館で行われたWBO世界バンタム級8位のサウル・サンチェス(27、米国)とのスーパーバンタム級10回戦戦で復活したが。600グラムの体重超過で計量を失格していた。

 問題児が13日に世界ランカー相手に豪快TKO勝利も

 計量オーバーのTKO勝利など認めない。
 豪快なTKO勝利で「次は井上尚弥だ!」と豪語したカシメロとの対戦の可能性をキーマンの大橋会長がキッパリと否定した。
「カシメロとの対戦の可能性は100%ないですよ。計量オーバーしておいて豪快なKOで復活しましたなんて冗談じゃない」
 カシメロは13日に前WBO世界バンタム級王者のジェイソン・モロニー(豪州)と互角の勝負をしたこともあり、WBC世界バンタム級王者、中谷潤人(M.T)のスパー相手も務めた世界ランカーのサンチェスから、1ラウンドに3度ダウンを奪い、わずか160秒で秒殺KOした。
 2023年5月にフィリップス・ンギーチュバ(ナミビア)に判定勝利して以来、1年5か月ぶりの勝利。同年10月の元IBF世界スーパーバンタム級王者の小國以載(角海老宝石)と不甲斐ない試合内容で4回負傷ドローとなり、評価を落として井上の対戦候補から消えていたが、「これで井上尚弥との対戦のアピールになっただろう。オレはいつでもどこでも戦う」と自慢げに再度の対戦要求をした。
 この試合の仕掛け人で、井上尚弥への挑戦を実現するためカシメロと2年前から契約を結んでいる元WBO世界スーパーフェザー級王者でトレジャーボクシングプロモーション代表である伊藤雅雪氏も「迫力もスピードもある、魅力的だとリアルに思った。昨日は失望したし、体重超過を犯したことで、井上選手陣営が納得してくれるかどうかはわからないが、あの左フックは唯一井上選手に勝つ可能性のある選手だと思う。不甲斐ない内容だった1年前の試合とは雲泥の違い。しっかりと復活をアピールできた。井上選手のこれからの相手は決まっているが、なんとか挑戦者候補として食い込めるように交渉をしていきたい」と希望を口にした。
 だが、前日計量ではスーパーバンタム級リミットの55.3キロから1キロオーバーの56.3キロ。2時間の猶予で、50分間、サウナに入ったが400グラムしか落ちずにまさかの計量失格。サンチェスサイドと協議の上、当日計量で58.0キロをクリアすることを条件に試合が実施されることが決まった。
「水だけ飲んで寝て5時間何も食べず」にカシメロは当日計量をパスして試合が実施されたが、そもそも本計量を守れなかった勝利に価値などない。

 

 

 大橋会長は「試合内容は関係なく体重を守れない時点でアウトですよ。井上尚弥の対戦候補は何人かいるが、カシメロは対戦候補リストに入っていません」と断言した。
 5月6日に井上が東京ドームで対戦したルイス・ネリ(メキシコ)も、WBC世界バンタム級王者の山中慎介とのタイトル戦で体重超過を犯し、JBCから無期限のライセンス停止処分を受けていたため、大橋陣営は当初対戦候補から外していた。だが、スーパーバンタム級に上げてからのネリが、WBCの指名挑戦者になるまで実績を積み信頼を回復させたため、挑戦者として認めたという経緯がある。それでも計量オーバーした場合は、即試合を中止にするという強い姿勢を打ち出し、その場合のリザーブとしてTJドヘニー(アイルランド)を用意していたほど。ルール厳守をポリシーとする大橋陣営が、カシメロを対戦候補から外すのも当然と言えば、当然だろう。
 カシメロは、WBOバンタム級王者時代にもポール・バトラー(英国)とのタイトル戦で一度目はウイルス性胃腸炎でキャンセル、次は英国のローカルコミッションが禁止しているサウナによる減量をしていたことが発覚して試合が中止となり、ベルトを剥奪されている。しかも、サンチェスを“秒殺”したリング上で「計量のミスなんか関係ない」と反省の素振りも見せていなかったのだから、大きな“お金”が動く井上の興行では、とても怖くて挑戦者には指名できないだろう。
 加えてカシメロは、今回の計量失格により、JBCルールに従い、日本国内の試合においては6か月間の出場停止処分となる。
 伊藤氏が強調するようにカシメロの一発は魅力で、強すぎて対戦相手選びに困るモンスターにとっては、ネリ戦に勝るとも劣らない“勝負論”のある対戦候補ではある。ただルールを守れないボクサーにチャンスが与えられるほどボクシングの世界は甘くない。井上尚弥は12月にWBO&IBFのランキング1位で指名挑戦者のサム・グッドマン(豪州)と防衛戦を行う予定となっている。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

ジャンルで探す