7大世界戦の次は前代未聞の“統一戦祭り”…目玉は防衛成功を条件に井上拓真vs中谷潤人のビッグマッチ…那須川天心の地域タイトル統一戦も計画

 日本のプロボクシング史を塗り替える2日連続の7大世界戦(13、14日・有明アリーナ)の第1日目の世界戦4試合の前日計量が12日、都内で行われ、出場8選手が一発でクリアした。今回の7大世界戦の結果を受け、来年に計画されているのが“統一戦祭り”だ。ダブル、トリプルの統一戦が組まれる予定で、その目玉となるのが今回の2日間興行で、それぞれメインを張るWBA世界バンタム級王者の井上拓真(28、大橋)とWBC世界同級王者の中谷潤人(26、M,T)の統一戦だ。また2日目にWBOアジアパシフィックバンタム級王座戦に挑む那須川天心(26、帝拳)が王者になれば、OPBF東洋太平塔同級王者の栗原慶太(31、一力)との地域タイトルの統一戦もセットされる計画だという。

 

拳四朗は2階級制覇に挑む(写真・山口裕朗)

 いよいよ日本どころか世界でも異例の2日連続の7大世界戦のゴングが鳴る。 
 2003年12月に米国のアトランティックシティで、当時の大物プロモーターのドンキング氏が、WBC&WBA&IBF世界ミドル級王者のバーナード・ホプキンス(米国)の防衛戦をメインにした8大世界戦を1日で開催したことがあるが、2日で7つの世界戦は前代未聞のビッグイベントだ。
 この日は、DAY1の4つの世界戦の計量が行われ、WBO世界ライトフライ級王座決定戦で、岩田翔吉(帝拳)と対戦するハイロ・ノリエガ(スペイン)と、WBC世界フライ級王座決定戦で、元WBC&WBAスーパー世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗(BMB)と対戦する元WBC世界フライ級王者のクリストファー・ロサレス(ニカラグア)の2人が予備計量でオーバーしていたが、サウナに入るなどして落として、正規計量では全員が一発でパスした。
 第1試合で先陣を切る岩田が「ビッグイベントの1発目なので、しっかりと日本人の自分が勝利して、良いスタートを切れるようにしたい」と言えば、WBA世界フライ級王者のユーリ阿久井政悟(倉敷守安)は、娘の運動会が無事に終わったことを笑顔で報告して「コツコツしたボクシングを見せたい。自信はあります」と笑顔を見せた。
 フライ級での2階級制覇に挑戦する拳四朗は、ライトフライ級時代は絶食だった前日に白いご飯を食べることができたそうで「もう計量終わったんかなと思って食べていました。計量が終わった感動はなくなったけど、それくらい順調」と転級効果を口にした。
 メインのWBA世界バンタム級タイトルマッチのフェイスオフでは、王者の井上拓真に挑戦者の堤聖也(角海老宝石)が「次がオレが勝つからな」と声をかけてニヤリ。12年前のインターハイの準決勝で2人は対戦して井上拓真が勝利している。
「オレは何も言わなかった。しっかりと結果でわからせてやろうかなと。相手は打ち合いだとか、自分の距離にしたいと思うだろうが、離れてもくっついても自分のペースでやるだけ。何もできなかったと言わせる試合展開にする」
 井上拓真はそう豪語した。計量には珍しく兄のスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(大橋)も付き添い「心強い。明日はセコンドにもついてくれる」と言う。
 明日の2日目にはWBCバンタム級王者の中谷、WBO世界スーパーフライ級王者の田中恒成(畑中)、中谷のジムメイトのWBO世界フライ級王者のアンソニー・オラスクアガ(米国)が、それぞれ防衛戦を行い、ボクシング転向5戦目の天心が初のタイトル戦となるWBOアジアパシフィックバンタム級王座決定戦に挑む。
 だが、この7大世界戦も次なるビッグマッチへ向けての序章に過ぎない。
 重要関係者が「今回の7大世界戦は言うならば準決勝。次はオール統一戦のビッグ興行になる」と明かした。

 

 

 来年の2月か3月に今回の7大世界戦の結果を受けて、今度はダブル、トリプルの統一戦を開催するビッグプランが進行しているのだ。これもまた7大世界戦を上回る前代未聞の“統一戦祭り”だ。
 興行の目玉は、それぞれが今回の防衛に成功することを条件に、WBA王者の井上vsWBC王者の中谷の日本人同志の統一戦となる。拓真は、11日の公式会見で改めて「目標は統一戦。中谷選手とやりたい」と熱望。中谷もここまで「やりたいのは井上拓真選手」とラブコールを送り続けてきたビッグカードだ。
 そしてフライ級は、WBA王者のユーリ、WBO王者のオラスクアガがそれぞれ防衛に成功し、拳四朗がWBCのタイトルを手に入れれば、拳四朗vsユーリ、あるいは、拳四朗vsオラスクアガのいずれかのカードがマッチメイクされるだろう。拳四朗とオラスクアガの一戦は、昨年4月にライトフライ級で実現しており、激闘の末、拳四朗が9回TKOで勝利。オラスクアガは「私の戦歴にひとつだけ黒星がついている。その相手と再戦ができればいい。この試合に勝たねば道は開けないが」と、拳四朗との再戦を熱望している。
 またWBOのベルトを持つ田中のスーパーフライ級は、元4階級制覇王者の井岡一翔(志成)からWBAのベルトを奪ってIBFとの統一王者となったフェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)と、最強の呼び声が高いWBCのジェシー“パム”ロドリゲス(米国)の2人の王者がいる。バムはファイトマネーが急騰しておりマッチメイクが難しいそうだが、帝拳がプロモーションしているチャンピオン。もし田中vsバムの統一戦が実現すれば世界的な話題にもなる。
 そして、この“統一戦祭り”に番外編で華を添えるのが天心だ。今回は初の地域タイトルへの挑戦。勝てば、世界挑戦切符が手に入ることになるが、帝拳サイドは世界挑戦は、まだ時期早尚と考えていて、元K-1王者でWBO世界バンタム級王者の武居由樹(大橋)から挑戦者に指名された天心自身も「まだまだ強くなるので。ちょっと待って下さい」と返している。
 そこで、“統一戦祭り”には、地域タイトルの統一戦という番外の枠で加わる計画だ。相手はOPBF東洋太平洋王者の栗原。28戦19勝(16KO)8敗1分けのハードパンチャーだ。当初、栗原への挑戦が水面下で模索されていたが、栗原が7月に行われた前戦で苦戦し、ダメージを負ったため、WBOアジアパシフィックのタイトルへ方向転換したという背景もあった。天心も「本当は日本人の王者へ対戦した方がファンもわかりやすい。ただ前戦でダメージがあったみたいで、そういう相手とやるとまた色々と言われる」という話をしていた。
 井上vs中谷のビッグマッチをメインに複数の統一戦が組まれるイベントが実現すれば、また世界に類を見ない日本ボクシング界の大胆なチャレンジとなる。

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