「引退も考える中でもう一度ボクシングをしたいと思った」元2階級王者の京口紘人が韓国での“疑惑の判定”で敗れた相手と再戦…審判構成は韓国3人→日本人、タイ、比国に変更

 プロボクシングの「TREASURE BOXING PROMOTION7」(10月13日・横浜武道館)の記者会見が9日、都内の代官山で行われ、セミファイナルのフライ級10回戦で対戦する元世界2階級制覇王者で現IBF世界フライ級11位の京口紘人(30、ワタナベ)とWBA世界同級4位のビンス・パラス(25、フィリピン)がそれぞれ意気込みを語った。今年5月に韓国で行われたバラス戦で議論を呼ぶ0-3判定で敗れた京口は一度は引退を示唆したが、再起を決意。6カ月ぶりの度目再戦となる。10月13日には2年前にライトフライ級の統一戦で敗れた寺地拳四朗(32、三迫)が2DAYS“7大世界戦”の中で、WBC世界フライ級王座決定戦に挑むなど、熱くなってきたフライ級戦線に名乗りをあげるつもりだ。

 

 因縁の再戦が決まった。
 京口はプロモーターの元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪氏に感謝を述べ、この試合への決意をこう伝えた。
「韓国では納得のいかない負けだった。引退も考える中で、もう1度、戦いたい気持ちを伊藤代表が尊重してくれて、マッチメークしていただいた。ここをクリアして、もう1度、京口は世界で戦えるな、というパフォーマンスで勝ちたい」
 0-3判定で敗れた5月の韓国でのバラス戦の採点は物議を醸した。ジャッジは3人とも開催地の韓国人で2人が4ポイント、1人が2ポイント差をつけていた。判定を聞いた途端に京口はジェスチャーで判定に不服の意を示した。
 SNSでは「疑惑の判定」「不可解な判定」「いや判定通りに京口が負けていた」などの賛否が飛び交った。JBCも看過できない問題だと捉えて、ジャッジ3人が、映像をもう一度見直して“模擬採点”を行ったほどだった。結果は逆で京口の勝利となっていたが、「手数とパワーで京口が劣っていた。攻勢という点では相手にポイントが流れてもおかしくなかった」との見方もあった。
 パラスは京口がIBF世界ミニマム級王者時代の2018年のV2戦で対戦して3-0判定勝利している相手。勝って当然の相手に、不可解とはいえ判定で敗れたショックもあり、京口は試合直後に自らのYouTubeで「現役でもう一度はない」と引退を示唆していた。だが、再起へと気持ちが切り替わった。
「もう一度戦いたいというより、もう一度ボクシングをしたいという気持ちが出た。やるからには世界を目指す。だったら何をするか。ビンス(パラス)との再戦が一番のモチベーションだった。、失ったものを取り戻すことをテーマに厳しいトレーニングに取り組んでいる」
 家族との時間を過ごし、心を許す「会いたい人」と話をする中で、当然、この韓国のパラス戦の話題が出て「このまま辞めたら後悔するだろうな」という気持ちが心の大部分を占めるようになったという。
 映像は何度も見直した。すでに修正ポイントは明確になっている。
「ビンスのいい部分を出させずに自分のいい部分を出すことをテーマに挑んだが、相手のアグレッシブさを出させてしまった。映像を見直して、そこは修正しないとダメだと思った」
 相手の手数とパワーを上回ること。つまり気持ちで負けないことだ。
 一方のオンラインで会見に参加したパラスは、10月13日が、偶然にも26歳の誕生日であることを明かし、返り討ちを誓った。

 

 

 プロモーターの伊藤氏も、次はSNSで物議を醸すことのない完全決着を願い、今回は「より公平性を期するために」と日本、タイ、フィリピンの3か国のジャッジ構成で、この試合を採点する予定だという。 
 ただ京口のゴールはこのパラスへのリベンジではない。
 2年前に統一戦で敗れた寺地拳四朗がWBC&WBA世界フライ級スーパーのベルトを返上し、奇しくも同じく10月13日に有明アリーナで、WBC世界フライ級王座決定戦に出場する。相手は、同級2位のクルスファー・ロサーレス(ニカラグア)。6年前に計量オーバーでヘロヘロの比嘉大吾に9回、棄権によるTKO勝利した長身のファイターだ。
「(拳四朗は)いずれ階級を上げると思っていた。その時が来たんだろうなと思った。僕が再戦をとりこぼさず、絡んでいけば、もう一度、戦うときがくるかもしれないが、先は見ていない。この試合にかけている」
 実は、水面下で、京口がWBA世界同級王者のユーリ阿久井(倉敷守安)に挑戦する話も進んでいたが、京口がつまずいたため白紙になった。だが、世界のフライ級戦線が熱くなっていることは確か。
 帝拳がプロモートし、拳四朗とも激闘を演じたアンソニー・オラスクアガ(米国)もWBO世界同級王者となり、彼も7大世界戦に組み込まれて10月14日にジョナサン・ゴンサレス(プエルトリコ)と防衛戦を行う。京口がこの階級のベルトへの有力挑戦者候補として浮上する可能性は十分にある。また5月6日に東京ドームでユーリ阿久井に敗れた、桑原拓(大橋)と京口の挑戦者決定戦計画もある。
 いずれにしろ3階級制覇を狙う京口が再びタイトル戦線に浮上するには、パラスとのリベンジ戦に誰にも文句を付けられないような内容で勝たねばならない。

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