「もう騙されるな。メイウェザーの戦いは不快で消化不良」大物マフィアの孫とのエキシ見所は試合途中の異例レフェリー“解雇”だけで会場は大ブーイング

 プロボクシングの無敗の元5階級制覇王者のフロイド・メイウェザー・ジュニア(47、米国)が24日(日本時間25日)、メキシコ・メキシコシティのアリーナCDMXでの2分×8ラウンドのエキシビションマッチで、大物マフィアの孫でUFC出場経験のあるジョン・ゴディ3世(31、米国)と再戦した。ダウンシーンのない“塩試合”に終わり、判定決着の無いルールのためドローとなった。採点すればメイウェザーの圧勝だったが、見所は試合途中にメイウェザーがレフェリーを“解雇”させた場面だけ。米メディアは「不快で消化不良」と厳しい見解を伝えた。

 2ラウンドにラビットパンチを注意されたレフェリーを“解雇”

 2万2000人で埋まった会場が騒然となったのは2ラウンドだ。メイウェザーがガードの上から腕を回すようにして打った右フックをパナマ人レフェリーのヘクター・アフが、後頭部を打撃するいわゆる反則の「ラピットパンチ」とみなし、それを注意した。するとメイウェザーは激怒。試合を中断させ「ここから移動しろ!」「黙れ!」と罵り、レフェリーの交代を要求したのだ。主催者はメイウェザーが試合を放棄してしまうことを恐れたのだろう。3ラウンドから、なんとメキシコ人レフェリーであるアルフレド・ウルズキエタに交代したのである。
 いくらエキシビションとはいえ、ボクサーがレフェリーを“途中解雇”するのは前代未聞の事件だ。確かに「ラビットパンチ」ではなかったが、このパナマ人レフェリーは、357試合も裁いているベテランで、井上尚弥(大橋)が昨年7月にWBC&WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトン(米国)に挑戦したビッグマッチのレフェリーを務めている。
 だが、寂しいことに、この再戦の見所はここだけだった。ガードを高く掲げて試合に入ったメイウェザーは、ジャブに左右のボディ、右ストレートとパンチを繰り出してスピードとテクニックで終始圧倒したもののダウンシーンや明確にダメージを与えるクリーンヒットを演出できなかった。約10キロの体重差のハンデが大きかったのか。それともゴッティがニューヨークのマフィア「バンビーノ一家」の大物ボスの孫だから判定で終わらせた方がいいと思ったのか。手数はあったが“軽いパンチ”に終始し、ノックアウトにつながる強打はしなかった。
 逆に危ないシーンも一切なかったが、ゴッティの右フックのパワーでバランスを崩す場面まで作ってしまう始末。互いに頭をつけあう接近戦の展開で膠着した6ラウンドには、ついに大ブーイングに包まれたが、クリンチをしながらメイウェザーは笑って舌を出した。8ラウンドにゴッティが、また頭を抑えて「ラビットパンチ」があったことをアピールするなど、最後まで何も起こらない“塩試合”のまま最終ラウンドのゴングが鳴った。昨年6月の第1戦目では、試合後に乱闘騒ぎを起こした2人は互いの健闘を称えて抱き合った。判定決着はないルールでドロー。
 ブーイングが収まらない中で、リング上のインタビューが始まり、メイウェザーが「クギのように奴はタフだった」と、ボクシングの経験が2試合しかないゴッティを称え、そのゴッティも、「彼は激しくオレを殴った。まだ(現役と変わらぬパンチを)持っている」と返した。
 だが、ほとんどの米メディアは厳しい評価を与えた。
 米フォーブスは、「予想通りの試合。メイウェザーは勝利への途中で経験の浅い相手を支配したが、平穏な2分間のラウンドが8つ続きノックダウンや凄い瞬間はなかった。彼のパンチはどれもゴッティを傷つけるようには見えず、一方のゴッティは最初の試合よりもさらに素人っぽく見えた」とバッサリ。

 

 USAトゥデイは「観客は不快感を表明した。ノックダウンはなく、うつろな目つきにもできなかったし、驚くこともなかった。メイウェザーは比較的簡単にゴッティを打つことができ、たくさんパンチをつなげたが揺さぶることはできなかった」と厳しく書き、TMZスポーツも「フロイドがレフェリーと対決したところが、この夜の最高のアクションだった。ノックダウンはなく、記憶に残るパンチの突風もなかった」と“塩試合”を叩いた。
 ボクシング専門サイトの「ボクシング・シーン」はさらに批判的だった。
「不快で、消化不良で完全に不満足だった。レフェリーの交代はメイウェザーのショーだった。騙されてはならない。メイウェザーの試合は、もはやメイウェザーの戦いではない」
 試合後のリングには、62歳になるメキシコの“レジェンド”フリオ・セサール・チャベスが上がり、メイウェザーにエキシビションでの対戦を申し入れた。
 だが、メイウェザーは、「彼は私が尊敬するレジェンドの一人であり、彼は私のために道を開いた」とリスペクトの言葉を残した上で、「彼はもう年をとっているし、彼とエキシビションを戦うことは、私にとっても良くないだろうね」とキッパリと拒否の姿勢を示した。
 メイウェザーは3つのエキシビションオファーが届いていることを明かした。 
 前出のボクシングシーンは、次の対戦の可能性は、総合格闘家、キックボクサー、ユーチューバーになることを皮肉を込めて示唆し、フォーブスは、「いずれにしろ、でかいファイトマネーが生まれる試合だろう」と予測した。
 これまで那須川天心朝倉未来と、RIZINのリングで2試合のメイウェザー戦を実現しているRIZINの榊原信行CEOは、メイウェザーから7月に元6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)と3ラウンドフルに戦い抜いた安保瑠輝也との対戦要求が届いていることを明かしている。

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