異常数値だ!「出場選手の10%が胃腸炎発症」やはりパリ五輪の“汚れた”セーヌ川はやばかった…東京五輪では3%以下の発症率

 パリ五輪では、トライアスロン、マラソンスイミング競技が実施されたセーヌ川の水質悪化が問題となり、レース後に体調不良を訴える選手が続出したが、このほど、米国五輪委員会の医療の最高責任者であるジョナサン・フィノフ博士が出場全選手の約10%の選手に胃腸炎が発症していたという衝撃データを発表した。米医療専門サイト「MedPage Today」に語ったもの。リオ、東京五輪でのトライアスロン、マラソンスイミングに出場した選手の発症率は約1%から3%だったという。28日から開幕するパラリンピックのトライアスロン競技でもセーヌ川が使用される予定で懸念の声が広がっている。

 米国五輪委員会の医療最高責任者が米医療専門サイトに語る

 やはりセーヌ川はやばかった。米国五輪委員会の医療の最高責任者であるフィノフ博士が、パリ五輪米医療専門サイト「MedPage Today」に明かしたところによると、今大会でセーヌ川で実施されたトライアスロンの男女個人、混合リレー、マラソンスイミング男女に出場した全選手の約10%が胃腸炎を発症したという。IOC(国際五輪委員会)の負傷・疾病監視データを元に弾きだしたもの。対するリオ五輪、東京五輪での同競技での胃腸炎の発症者は、約1%から3%に留まっていた。
 フィノフ博士は、「(リオ、東京五輪のトライアスロンは)パリ五輪の都市の川の淡水とは、大きく異なる塩水で行われていたため比較するのは難しい」としたが「パリでの感染率は以前よりも大幅に高い」と断言したという。
 東京五輪のトライアスロンのスイムはお台場の海水で実施されていた。
今大会は運営サイドが、連日、水質検査を実施した。基準値をクリアできなかったため公開練習が中止となり、トライアスロンの男女個人は1日順延となった。だが、7月31日にレースは強行され、1.5キロのスイムはセーヌ川を使って行われ、レース後にカナダの男子代表のタイラー・ミスローチャックが、10回も嘔吐。その様子がテレビの生中継で映し出されて世界に衝撃を与えた。レース後には体調不良を訴える選手が続出。ベルギーの女子代表のクレア・ミシェルは、ウイルス性感染症の下痢と嘔吐が続き、チームはセーヌ川の汚染水が選手に与える影響を考慮して8月5日の混合リレーを辞退。またその混合リレー後には、ポルトガルの男女の2選手が胃腸感染症を発症したことが発表された。
 ベルギー男子代表のマルテン・バンリールは「もし選手の健康が優先されていたら、この大会はとっくの昔に別の場所に移されていただろう。私たちは人形劇の中の操り人形に過ぎない」と皮肉を込めてセーヌ川を選んだ大会サイドを批判した。
そして東京五輪の金メダリストで、世界シリーズの総合優勝や、世界新記録を樹立したこともあるノルウェースポーツ界のスターであるクリスティアン・ブルンメンフェルトも、帰国後、地元メディアに「運営サイドは水の状態を制御できなかった。ただのギャンブルだった。そんな場所でアスリートのためのイベントを行うのは、ある意味、無礼なこと」と非難の声をあげた。

 

 パリ市は14億ユーロ(約2430億円)もの巨額を投入し、下水流入防止の巨大地下浄化施設を建設するなど、長らく遊泳禁止だったセーヌ川の水質浄化プロジェクトに取り組んだ。来年にはセーヌ川にビーチを作り、遊泳を解禁するという計画があるが、アスリートにとっては、健康が懸念される事態となった。
 フィノフ博士によると、米国のトライアスロンの男女の代表チームはPCR検査を実施して、病気の原因となった病原体を特定し、抗生物質を使用するかどうかを決定したという。抗生物質を投与された選手もいれば、そうでない選手もいたが、治療方法は、「症状の重症度と、別の競技会があるかどうかが関係した」という。
同博士は、特定の病原体についての詳細は述べなかったが、「少なくとも1つは、汚れた都市の川で一般的に考えられる病原体だ」と断言した。また一部の五輪チームは、予防的に抗生物質を服用させたという。
 米国チームは「様々な病原体への予防としては、万全でなく逆にリスクもある。細菌叢を変えるだけで、光線過敏症、胃腸の不快感、苦痛を引き起こす可能性がある」との理由で予防的な服用は行わなかったそうだ。米国チームでの「胃腸炎の問題は最小限だった」という。
 28日から開幕するパラリンピックでは、またトライアスロン競技がセーヌ川で実施される予定となっている。胃腸炎なども含めて健康被害への懸念が残ったままだ。

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