「子供には野球はあんまりやらせたくない」中田翔がはじめて明かした「子育て論」と「オヤジの本音」

中田翔が語る35歳の現在地「この歳でまだヤンチャやったらただのアホ」初めて明かすエアガン乱射騒動の後悔と第二の人生〉から続く

2008年に日本ハムに入団後、巨人、中日と渡り歩いてきた中田翔(35)。3度の打点王に輝くなど球界を代表する打者ながら、何かと球界を騒がせてきた中田は、女児2人、男児2人と合わせて4人の子供を持つ父親でもある。一見すると強面で、ふてぶてしい印象の中田が、ふだんあまり話すことのない子供や子育てについて話すときに見せた意外すぎる「父親の顔」とは…。(前後編の後編)

【写真】「本心では(自分の子どもには)野球はあまりやらせたくない」と語る中田翔選手

「2世で活躍してる選手、見たことないもん(笑)」

2023年、中日への移籍をきっかけに中田は名古屋市内にマイホームを購入した。球場ではドッシリと貫禄十分でぶっきらぼうな印象すらある中田だが、自宅では家族に料理をふるまうなど、ふだんはあまり見せない父親の顔をのぞかせる。

「全然料理しますよ! 子供たちに料理作って食べさせたりしてますよ。でかいホットプレート出して、一緒に作ったりとか結構しますね」

単身赴任ではなく、家族での引越しを選択するほど家族との時間を大事にしている中田には、最近子供に言われて嬉しかったことがあるという。

「5歳の長男が“野球をやりたい”“パパみたいになりたい”って言ってくれたんです。素直に嬉しかった。そんな風に俺を見てくれてたんだなって。

“パパがやってるから一緒に野球やりたい”ってね。俺と一緒にプロ野球でやるのは年齢的に不可能なんだけど(笑)。でも、まだ物心ついてない5歳児がそういう風に言ってくれたのが素直にうれしかったです」

子供の話をするとき、中田は目を細めて優しい表情を浮かべる。球場ではあまり見せない素顔に驚ろかされるが、もし実際に野球を始めるとなったら、どんな指導を子供にするのだろうか。

「ある程度技量がつくまでは“好きなようにやりなさい”って言うと思いますね。自分で考えて、磨くことで才能が左右されるわけで、初めの段階から俺らみたいな知識を持ってる人間がいじっちゃったら、変な成長をしてしまう子もいるんでね」

子供の野球について話すとき、いつになく熱を帯びて話す中田を見ていると、いつか中田2世が、甲子園やプロ野球で見られる日がくるかもしれないと期待してしまう。

「まぁ将来のことはわからないけど、2世で活躍してる選手、見たことないもん(笑)。教えたくなる気持ちもわかるけど。

俺も子供が素振りやキャッチボールをしてたら、細かく教えたくなるけど、今はグッと堪えてる。子供だから右で投げたり、左で投げたりしてるけど、 やっぱり、今は野球を好きになることが一番だって思いますよ」

「本心はね、野球はあんまりやらしたくない」

中田が「野球を好きになることが一番」と話すのには理由がある。

「他のプロスポーツも同じだと思うけど、野球に関していえばプロ野球選手は相当しんどい職業ですから。一年間戦い抜くってこともそうだし、プレッシャーももちろんある。

いつかそういうプロ野球界の厳しい側面も伝えていかなきゃいけない。でも、真剣にやると我が子が言うなら、俺も真剣に付き合っていきたいと思っています」

「野球をやりたい」「パパみたいになりたい」という子供が、このまますくすく育ち、もし「プロ野球選手になりたい」というようになったらどうするのだろうか。

「もちろん全面的にサポートするよ。俺が教えられる引き出しは全部教えてあげたい。我が子なんで当たり前の話なんですけどね。

まだ5歳なんで、まだまだ10年先とかの話だろうけど、今は本当に野球を好きになってほしいなって思います」

父の顔になって話していた中田だが、少し黙った後、こう話した。

「本心はね、野球はあんまりやらせたくないかな。自分がつらい経験もたくさんしているから、愛する我が子にそんなつらい思いをさせたくないなって。

他のスポーツもそうかもしれないけど、野球選手は本当に一年間詰め詰めで家族にもあまり会えない。子供の運動会にも、授業参観にも行けない。子供の行事には、ほとんど俺らは参加できないんですよ。

子供にとっての夏休みは俺らにとってシーズン真っ只中で、夏休みこそ働き時。球場に野球が好きな子供たちがたくさん見にきてくれるから。

一方で、自分の家族には寂しい思いをさせてしまっているなと思う。子供の友達は家族で旅行に出かけたりする中、俺はそれをさせてあげられないから、すごく申し訳ないなぁという気持ちがあるんです。

だから、根本的には俺と同じ野球の道を進むのは、“本当にしんどいぞ!”って伝えてあげたい。

……それでも本人がやると言ったら俺はとことん全力で応援しますよ」

これまで数々のプレッシャーに耐え、たくさんの声援を受けた一方で多くの罵声も浴びてきた中田翔。若手時代には不祥事を起こしたことも素行の悪さで目立ってしまったこともある。その度に野球へ情熱を向け、バットに気持ちを乗せてきた。

そんな中田が、プロ野球選手として16年目のシーズンを終えた。 インタビューの終わり間際に「(取材で)こんなに話したの初めてだよ(笑)」と照れながら部屋を後にする中田の背中にベテランの風格と親父の威厳を感じた。

中田翔●1989年4月22日。広島県広島市中区出身のプロ野球選手。右投右打。2008年に日本ハムファイターズに入団、2021年に読売ジャイアンツへ無償トレード移籍。2023年12月に中日ドラゴンズと正式契約し、入団会見を行った。

 取材・文/佐々木一城

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