「独立リーグから直接メジャーも」「ウチはソフトバンクの3軍には勝ってる」独立球団オーナーと『ドラフトキング』作者が提言する日本アマ野球の可能性
プロ野球のスカウトの仕事ぶりと奮闘劇にスポットを当てた新機軸の野球漫画『ドラフトキング』。ストーブリーグが始まった今、本作の作者、クロマツテツロウ氏と独立リーグ球団のオーナーでもあるホリエモンこと堀江貴文氏の対談がYouTube「ホリエモンチャンネル」にて実現。野球界について好き勝手に語ってもらった。
独立リーグは遠征に8時間かかることも
堀江貴文(以下、堀江) 野球漫画っていろいろパターンが出尽くしているなかで、『ドラフトキング』がすごく新しいと思ったのは学生野球、社会人チーム、独立リーグ、クラブチームといったところと、NPBのつながりを描いてるところだと思うんです。実際にああいうことをやってる人たちっているんですね。
クロマツテツロウ(以下、クロマツ) めっちゃいます。大事な試合は直接見に行ったりされてると思いますが、今は現場に見に行かなくてもネットで映像が見られますし。ネットスカウトさんっていうのもいるので。
堀江 何ですか、それ?
クロマツ 趣味でアマチュア選手を追いかけて、動画をネットにあげたり、ブログを書く人です。彼らの情報がかなり信頼できるものになってきてて、それをプロのスカウトがけっこう見てるらしいんですよ。
堀江 やばいですね。
(作品を読み始めたとき)僕も独立リーグのチーム(九州アジアリーグに加盟する堀江がオーナーの北九州下関フェニックス)をつくるときだったから、めちゃくちゃシンクロしました。
クロマツ 今年、優勝されたみたいで。
堀江 ありがとうございます。やっと優勝できました。西岡(剛)さんが監督から総監督になって、選手兼任投手コーチとして選手からの信頼も厚かった松本直晃さん(元西武)という方が実質的に監督として仕切る形になったのが一番大きかったみたいですね。
クロマツ へー。
堀江 だけど独立リーグって金がなくて、遠征だと朝イチでみんなでバスに乗ってそのまま試合やって帰ってくるみたいな感じだから、体のケアみたいなものが難しいらしいんですよ。
クロマツ 移動時間は最長どのくらいあるんですか?
堀江 (フェニックスの選手が)みんなが住んでる北九州市から一番遠い宮崎までは高速つかって4時間とか。
クロマツ 往復8時間は疲れますよね。
堀江 そうそう。だからそこをケチらずに、前泊したりとかケアを入れたりとかで変わったんですよ。NPBでは当たり前ですけど、独立リーグではけっこうスゴイことですよ。
インドネシア人で構成される球団も参戦
クロマツ 独立リーグ、おもしろいっすよね。
堀江 一番最初に始まった独立リーグが四国(アイランドリーグplus)ですけど、まあまあ客入ってるんですね。四国リーグも設立が2005年だから、20年もやると定着してくるんだなって。
クロマツ 今回、BCリーグのプレーオフファイナルラウンドを観に行ったんですけど、けっこうお客さん入ってましたよ。応援(の声)もかなり大きくて、ちゃんと選手にファンがついてる感じがありました。
堀江 まじっすか。ということは、(各独立リーグの覇者が戦う)グランドチャンピオンシップはけっこう盛り上がりますね。
(※9月29日に決勝が行われ、ルートインBCリーグの信濃グランセローズが同リーグの開催県枠、栃木ゴールデンブレーブスを破って初優勝)
堀江 去年まではうちのリーグの熊本(火の国サラマンダーズ)が2連覇してんのかな。
クロマツ アイランドリーグが強いのかと思いきや、九州がすごく強いですよね。
堀江 そうなんですよ。だから(リーグ戦でも)けっこうレベルの高い試合をやってるんですよね。去年まで大分(B-リングス)は弱かったんですけど、今年めっちゃ強くなってる。
(戦力的には)熊本、北九州、ずっと差があって大分、宮崎って順番だったけど、今年はけっこう接戦で、うちのチームも(大分に)まあまあ負けてますからね。1年でこんな変わるんだと。
うちのチームも今年、ソフトバンクの3軍には2試合とも勝ってるから、NPBの2.5軍くらいの力はあると思うんですよ。がんばれば2軍で戦えるくらいの戦力はつくれるのかなって思いました。
クロマツ おー。
堀江 『ドラフトキング』にも出てきますけど、たまたまポジションがなくて1軍に上がれない2、3軍にいる選手の受け皿として、最近の独立リーグはまあまあ機能しているとすごく感じます。
クロマツ そう思いますね。
堀江 それと九州アジアリーグには今年から準加盟に入ってきた佐賀インドネシアドリームスってインドネシア人も多数所属してるチームもあって。
クロマツ えー! 知りませんでした。
堀江 インドネシアは東南アジアで今一番人口が多くて3億人に迫る勢い。その中には運動神経がいい子も絶対にいるんでその子たちを伸ばして、インドネシアの野球人口を増やしていこうって試みですね。
独立リーグからポスティングで直接メジャーの道も
堀江 独立リーグでも専用のベースボールパークをつくって、チアとか試合を盛り上げるエンタメ装置やネット配信を整備していけば、もっと客入るだろうなとも思ってるんですよ。
クロマツ 独立リーガーって(地元では)ほんまにめちゃくちゃモテるみたいなんで(笑)。そもそも日本人って野球自体がすごく好きだからおじさんたちも群がるし。
堀江 中小企業の社長がポケットマネーでユニフォームスポンサーになれちゃうから応援しやすい。一発、(大きい)スポンサーつけられれば、僕は変わると思いますよ。
クロマツ これからもっと変わるんじゃないですか。独立リーグからプロに行けるルートの信憑性がかなり強くなってきているので。
いずれメジャーがNPBを経由しないで独立リーグから直接ポスティングで投手を取りに来るときがくるんじゃないかって思ってるんです。
堀江 たしかにあるね。
クロマツ そうすればその20%が独立リーグのチームに入るから、市場規模はめちゃデカくなると思う。そうなったらおもしろいっすよね。僕はNPBファンだからあんまりこういうことは言いたくないですけど(笑)。
堀江 独立リーグもスポーツベッティングとかギャンブルを解禁して、その10%をライセンス収入でリーグに入れてくれれば、独立リーグのレベルがまた上がりますよ。それこそ社会人野球のトップクラスくらいまでは。
そうやって裾野を広げていかなくちゃいけないと思いますけど、『ドラフトキング』はそういう人たちのことが書いてあって。ほんとにおもしろいっす。
クロマツ ほんとですか。ありがとうございます。
堀江 今後、どういう展開に?
クロマツ 横浜ベイゴールズって架空の球団が優勝できたらいいなみたいな感じですかね。
堀江 (本家の)ベイスターズも強くなるといいですね。
クロマツ ベイスターズも自力があってほんまは強いはずなんですけどね。
堀江 やっぱ金ですか。ソフトバンクに比べると……ね。
クロマツ 尋常じゃないですからね。
堀江 ソフトバンク2軍の球場のタマホームスタジアムで我々もやらせてもらうんですけど、スゴイっすもん。
(タマホームスタジアムのある筑後市は)僕のド地元(八女市)で、田んぼと無人駅しかなかったところにいきなりすっげースタジアムができて、新幹線駅にも隣接してて。まったく様相が変わりました。
そんなの客も来るじゃないですか。ソフトバンクはちゃんと投資してますよ。それをリーグ全体でできればおもしろくなるから、NPBはまだまだ改革の余地があるなって思ってます。
※
《後編》後編ではクロマツ氏が聞き手に回り、あの球界再編騒動を振り返るとともに、NPBの旧態依然とした体質をホリエモンがぶった斬る!
構成/武松佑季
10/31 19:00
集英社オンライン