“究極のフェアウェイキープ合戦”となった日本OP 賛否のあったセッティングは世界の流れと逆行しているの?

約20センチというラフが選手達を苦しめて、ガマン比べな展開になった2024年の日本オープン。“究極のフェアウェイキープ合戦”となった今回のセッティングについて考えてみました。

日本OPのスコアを見て小学生の息子がビックリ

 男子ツアーの「日本オープンゴルフ選手権」最終日をCS放送で視聴していたところ、小学5年生の息子がテレビ画面を見た途端、ビックリした表情で質問しました。

「ねえ、父さん。この人たち、なんでこんなにスコアが悪いの?」

 息子が疑問を抱くのもムリはありません。CS放送は1番ホール生中継でした。決勝ラウンドはスコアの悪い選手から順番にスタートしていきます。その日最初にスタートしたのは3日目終了時点で通算20オーバーのエウヘニオ・チャカラ選手(スペイン)。2組目でスタートしたのは通算18オーバーの蛭田玲於選手と通算17オーバーの金岡奎吾選手でした。

話題になった「深いラフ」(写真は日本OP18番ホールのグリーン周り)

話題になった「深いラフ」(写真は日本OP18番ホールのグリーン周り)

 息子がこれまで見てきたプロゴルフトーナメントは、選手たちの多くがアンダーパーでプレーする試合展開でしたから、2ケタ以上のオーバーパーの選手たちがこんなにたくさん出場している試合を見たことがなかったのでしょう。

「驚くのもムリはないけど、この試合は男子のメジャートーナメントで、日本一の選手を決める大会。今年はラフが長くなりすぎて、いつも以上に難しくなってしまったけど、この人たちはみな、日本一を決める試合で予選を通過した選手です。だから、ヘタなわけじゃなく、それくらいコースが難しいということです」

 このように説明すると、息子は分かったような、分からないような、何だか不思議な面持ちで説明を聞いていました。その話を後日、知人としていたところ、次のような話題になりました。

「ボクらもトーナメント中継をよく見ますが、実は1年の流れがよく分かっていないんです。競馬だったら牡馬三冠が皐月賞、日本ダービー、菊花賞で、牝馬三冠が桜花賞、オークス、秋華賞だということを知っています」

「でも、トーナメント中継はそこまでの知識がないので、海外メジャーは何となく分かりますが、国内の試合は何がメジャーで何がメジャーじゃないかよく分からないまま毎週トーナメントを見ている感じです」

 競馬のレースに当てはめると、「日本オープンゴルフ選手権」は日本ダービーと同じ位置づけの試合だと思うのですが、ゴルフファンにそのことが伝わっていないのです。

日本人選手全員が勝ちたいと思う試合に作り直したほうがいい

 今年の「日本オープンゴルフ選手権」は主催者である日本ゴルフ協会(JGA)創立100周年記念大会でしたから、歴代優勝者の一人である松山英樹選手(2016年大会覇者)にも出場を打診しました。しかしながら「ベストパフォーマンスを発揮することが難しい」との判断で欠場しました。

 そもそも松山選手が2016年大会に出場したのも、親日家のアダム・スコット選手(オーストラリア)が「キミは日本のエースなんだから母国のナショナルオープンには出場したほうがいいよ」と誘ってくれたからです。

 スコット選手は今年の大会にも出場しましたが、初日5オーバー75、2日目6オーバー76、通算11オーバー78位タイで予選落ちを喫しました。ラフが長すぎて究極のフェアウェイキープ合戦となった日本のナショナルオープンをどのように感じたでしょうか。

 米国のナショナルオープンである「全米オープンゴルフ選手権」もタフなセッティングで知られていますが、「フェアウェイキープよりもラフから短い番手でグリーンを狙ったほうが有利」という持論を展開したブライソン・デシャンボー選手(米国)が2020年大会で有言実行を果たしました。そして2024年大会は2度目の栄冠を手にしました。

 今年のセッティングは世界のゴルフの潮流とは明らかに逆行していますし、予定していたセッティングに仕上げることができなかったのであれば、開催時期も含めてゼロベースでナショナルオープンの存在意義を見直すべきです。

 DPワールドツアー(欧州男子ツアー)が欧州、アフリカ、中東、アジアのナショナルオープンをめぐる旅として発展してきた流れを考えると、「日本オープンゴルフ選手権」はDPワールドツアーに仲間入りさせてもらうにはどうしたらいいかという発想で大会自体を再構築したほうがいいのではないかという気がしました。

ジャンルで探す