「このままでは絶対に勝てないと思った」 山下美夢有の勝負に対する執念が約1年ぶりのツアー12勝目を呼び込む

国内女子ツアー「富士通レディース」は、山下美夢有(やました・みゆう)が通算14アンダーで並んだ古江彩佳(ふるえ・あやか)とのプレーオフを制し、今季初優勝を挙げた。

悔しかった日本女子オープンの敗戦

◆国内女子プロゴルフ

富士通レディース 10月11~13日 東急セブンハンドレッドクラブ西コース(千葉県) 6697ヤード・パー72

 国内女子ツアー「富士通レディース」最終日、通算14アンダーで山下美夢有と古江彩佳のプレーオフに突入。2ホール目で山下がパー、古江がボギーとしたため、山下が今季ツアー初優勝、ツアー通算12勝目を飾った。

今季初勝利、通算12勝目を挙げた山下美夢有 写真:Getty Images

今季初勝利、通算12勝目を挙げた山下美夢有 写真:Getty Images

 最終18番パー4で13メートルのパーパットを捻じ込み、通算14アンダーでホールアウトした山下美夢有。この時点では古江彩佳と首位に並んでいたが、古江が17番パー3でバーディーを奪ったため1打ビハインドとなった。それでも山下はあきらめていなかった。練習グリーンで一心不乱にボールを転がし続け、プレーオフに備えた。

 すると、古江が18番で約2メートルのパーパットを外してボギーに。勝負は2人のプレーオフに持ち込まれた。舞台は2人の明暗を分けた18番だ。2ホール目、2オンに成功した山下に対し、古江の2打目はグリーン左手前のバンカーへ。ボールがアゴの近くにあったため、ピンよりも左サイドを狙うしかない状況だった。結局、3オンしたものの2パットのボギーで古江はホールアウト。パーセーブした山下が今季初優勝、ツアー通算12勝目を飾った。

 試合展開としては、古江が山下に3打差をつけられていたにもかかわらず逆転に成功した時点で、流れは古江にあった。ましてや今季の山下は首位を守り切れずに敗れた試合が3回ある。今回も嫌な予感がして当然だったが、勝利に対する飽くなき執念は失っていなかった。

「(首位でスタートしながら3位に終わった)日本女子オープンが終わった後は悔しいしかなく、このままでは絶対に勝てないと思ったので、どうにかショットが安定するように考えました」

 その一つが2年前に開催された試合の動画を観ることだ。山下の場合、基本的にスイングを大きく変えることはないだけに、スイングのテンポとリズムにはこだわりがある。ショットの調子がよかった2年前のスイングを観ることで、自分にとってベストなスイングリズムとテンポを模索した。さらに、先週は体調不良のため試合を棄権。体調をしっかり整える時間をつくったことで、ベストに近い状態で今大会に臨むことができた。

 今季は「全米女子プロゴルフ選手権」を含めると、2位が8回と勝ち切れずに苦しんだ山下。それでも、「勝てないとは思っていなかったですし、しっかり勝つという気持ちで取り組めていたと思います」と振り返る。表彰式でのスピーチではいろんな思いがこみ上げて涙ぐむ場面もあったが、約1年ぶりの優勝にホッとしたのは間違いない。

 今季は残り6試合だが、メルセデス・ランキングでも首位の竹田麗央との差が541.4ポイント差に縮まった。3年連続年間女王への可能性はまだ十分ある。さらに、12月には米女子ツアーの最終予選会も控えている。山下が本領発揮するのはこれからだ。

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