もうダウンブローは必要ない!? 最近の“飛び系アイアン”にはルーキー政田夢乃のスイングがお手本になる理由

多くのツアープロのコーチとして活躍している石井忍氏が、“ここはスゴイ”と思った選手やプレーを独自の視点で分析します。今回注目したのは、「NEC軽井沢72ゴルフ」で2位タイに入った政田夢乃(まさだ・ゆめの)です。

NEC軽井沢72で最多バーディー賞の政田夢乃

 2000年生まれのいわゆる“プラチナ世代”の一人、政田夢乃という選手をご存じでしょうか。パリ五輪の女子ゴルフと同週に行われた国内女子ツアー「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」で終盤まで優勝争いを演じたプレーヤーです。

 昨年のプロテストに合格し、今シーズンからツアープロとしての歩みを始めている政田選手は、開幕当初はステップ・アップ・ツアーが主戦場でした。5月の「ツインフィールズレディーストーナメント」で4位タイに入ると、翌週の「リゾートトラストレディス」でレギュラーツアーに初参戦。主催者推薦という数少ないチャンスを生かして8位タイでフィニッシュしました。すると、ここからレギュラーツアーの出場機会が増えていきます。そして、8試合目の「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」で最終日に単独首位に立つ活躍を見せ、自己最高の2位で大会を終えました。

「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」で自己最高の2位タイに入った政田夢乃 写真:Getty Images

「NEC軽井沢72ゴルフトーナメント」で自己最高の2位タイに入った政田夢乃 写真:Getty Images

 154センチと小柄な政田選手は、ドライビングディスタンスは現在229.96ヤード。規定数に達していませんが、ランキングに当てはめると75位に相当する順位です。しかし、飛ばすタイプではないにもかかわらず、「NEC軽井沢72ゴルフ」では3日間で17個のバーディを奪取。最多バーディ賞を獲得しました。

 私はプロテストに合格した後から政田選手のスイングコーチを務めています。そばで見ていて感じるのは、“怖いもの知らず”の一面があること。フワっとした柔和な雰囲気がある彼女は、連続バーディーを奪っても浮き足立つことなく、無心でプレーをする印象です。そんなスタイルが同大会でのバーディー量産につながったのではないでしょうか。

 さて、政田選手はヘッドをシャローに入れ、手元を前に出さずにインパクトするのがスイングの特徴です。体の正面でボールをとらえるため、ハンドファーストがそれほどキツくありません。米女子ツアーならリリア・ヴ選手、国内女子ツアーなら小祝さくら選手も、こういったインパクトで球をとらえています。

低い位置からヘッドを入れるイメージを持つ

 ハンドファーストが理想形と思っている人は意外に思うかもしれません。しかし、最近のアイアンはロフトが立ってきているため、打ち込みすぎると球の高さを出すことができないケースがあります。政田選手のように緩やかなヘッド軌道でインパクトに向かった方がヘッドの性能を引き出せる場合もあるわけです。

「ダウンスイングでタメを作ろう」「ハンドファーストでボールをとらえよう」としてうまくいかない人は、低い位置からヘッドを入れるイメージを持つと、番手なりの球の高さが打ちやすくなるかもしれません。

 最後にオススメのドリルを紹介しましょう。ヘッドがティーに触れないように、ティーアップしたボールをクリーンに打ってみてください。ダウンブローがキツいとヘッドがティーに当たってしまうので、ボールを拾うイメージでインパクトに向かうといいでしょう。このインパクトの形は、特に今どきの飛び系アイアンと相性抜群。飛び系を使っているゴルファーはぜひ試してみてください。

政田 夢乃(まさだ・ゆめの)

2000年生まれ、北海道出身。同学年に古江彩佳や吉田優利らがいる中、ジュニア時代は「全国中学校ゴルフ選手権」、「全国高校ゴルフ選手権」で優勝するなど活躍。高校卒業後はプロを目指す若手女子選手が出場するネクストヒロインゴルフツアーに出場し、23年は4勝を挙げて年間女王を獲得した。5回目の挑戦となった同年のプロテストに合格し、今季はルーキーとしてツアーに参戦。レギュラーツアーの初戦となった「リゾートトラストレディス」では8位タイ、「NEC軽井沢72ゴルフ」では2位タイという成績を残している。なないろ生命所属。

【解説】石井 忍(いしい・しのぶ)

1974年生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て1998年プロ転向。その後、コーチとして手腕を発揮し、多くの男女ツアープロを指導。「エースゴルフクラブ」を主宰し、アマチュアにもレッスンを行う。

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